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アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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三陸復興国立公園 大船渡

60件の記事があります。

2021年07月27日歌う砂浜 環境のバロメーター

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

みなさんこんにちは、大船渡自然保護官事務所の坂本です。

ギラギラと真夏の太陽が連日まぶしい三陸です。とはいえ最高気温は30℃超えることは稀ですし、夕方になると冷たい海風が火照った世界を優しくクールダウンしてくれるので、三陸の夏は本当に過ごしやすいとかみしめています。

夏と言えば夏休み、海、ビーチ、海水浴ですよね。

三陸海岸管内の海水浴場では昨年に引き続き泣く泣く海開きを見送った場所も何カ所かあります。しかし震災後復興を遂げ、今年初めて海開きをしたという海水浴場もあり、地元ではとても大きな話題となっています。震災から10年、家族連れや子どもたちのはしゃぐ声で賑わう浜辺の光景を感慨深く見つめています。

さて、ビーチつながりで今回の日記では気仙沼市の鳴き砂の浜をご紹介します。

(ご紹介する2カ所はいずれも海水浴場ではありません。)

日本全国には30カ所余りもの鳴き砂の浜があるとのことです。鳴き砂は環境汚染に敏感に反応するため健全な自然環境が保たれているバロメータであると言われています。そんな鳴き砂の浜が宮城県気仙沼市に2カ所あります。気仙沼大島の「十八鳴浜・くぐなりはま」と唐桑町の「九九鳴き浜・くくなきはま」です。いずれの浜もみちのく潮風トレイルルートから歩いて片道15分ほどで到達できます。

『十八鳴浜』くぐなりはま  三陸復興国立公園・国指定文化財(天然記念物)

「クックッ」と鳴く⇒9+9=18⇒十八鳴浜 が名前の由来と言われています。

明治27年に日本で初めての鳴き砂の浜として学会誌に報告された浜です。震災直後はごっそり砂浜がなくなり、砂浜と陸地の境目も崩れ落ち見るも悲しい姿だったそうです。しかし数年で徐々に砂浜が戻ってくる様子を確認し、地域の声「ありのままで、そのままで」があったのであえて復旧工事を行いませんでした。自然の力だけでここまで砂浜が復活したのです。

砂浜から陸地方向を写すとこうです。崩れ落ちた箇所はそのまま、もともとあった階段を横の林に伸ばし、砂浜までの下り道が震災後設置されました。痛々しくはありますが、あえて手を加えられていない自然が残る貴重な砂浜でもあります。

『九九鳴き浜』くくなきはま  国指定文化財(天然記念物)

こちらの浜名称は音からそのまま、クックッと鳴く⇒99と鳴く⇒九九鳴き浜 だそうです。

九九鳴き浜は震災直後、他の海岸地域と同様地盤沈下が起きました。各地で多くの砂浜が消滅しましたが、九九鳴き浜に残された現象は他とは違い、背後の草地・林まで砂が大量に入り込み、流れていくことがなかったのです。その後地盤は隆起したそうで、今では幅広い砂浜が広がっています。

この写真は2005年の九九鳴き浜を上の写真と同じ方向で写したものです。写真右側の緑地が現在はすっかり消え去っているのがおわかりいただけますでしょうか。大勢の人たちが写っていますが、この自慢の浜をきれいに保とうと地元のみなさんで毎年丁寧に清掃活動が行われています。そのおかげもあって今でも浜の砂たちは美しく歌えるのですね。

"美しく歌う"といいましたが、「鳴き砂」は英語で"singing sand"などと表現されるようで、なんだかとても楽しくなりますね。鳴かせるにはいくつかコツがあります。まず場所ですが、草や漂流物などがない場所で、なるべく人が歩いていない所を選びます。そして鳴かせ方ですが、靴裏で強めに踏み込む・砂地と平行にすり足のように歩いてみることです。調子がいいときは片足で砂をなでるだけでキュッキュッと鳴きますよ。鳴き砂は乾いているときに良く鳴きます。晴れが続く夏は鳴かせるには絶好の季節なのです。

海の恵み・環境についても考えながら、鳴き砂の浜を歌いながら歩いてみませんか。

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2021年07月12日梅雨寒(つゆざむ)の日に

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

この日の執務室内の気温22度、外は20度を下回っていました。常時窓を開けているので半袖でいるには少し肌寒い、シトシト降り続ける雨、まさに梅雨寒。今週中には梅雨明けかと言われていますので三陸の今年の梅雨は短かったです。

"アリスの不思議な国"に迷い込んだような色合い、露をまとうガクアジサイ

そんな日ではありましたが、碁石海岸の植物調査へ傘を差しながら繰り出しました。

「植物調査」といいましたが、碁石海岸では園地内の植物について、環境省パークボランティアと碁石海岸インフォメーションスタッフで1年間とおして1~2回/月のペースで観察&記録するという試みを今年度行っています。植物の名前調べはもちろん、開花時期や見られるエリアも記録するので碁石海岸来訪者へのご案内に役立ちますし、今後の環境変化など調査する際のベースが作れると思っています。三陸復興国立公園の指定植物一覧とのすり合わせも行い、園内にある指定植物の把握もこの機会にしたいと思います。

思わぬ珍客に出会えることも!こちらは「キツネノハナガサ」。

儚くて美しいきのこです。雨に打たれてもう萎れかけでしたが、

開いている時間が数時間という幻の存在だそうです。

ちょっとの刺激で倒れてしまうので息を止め、触らぬようそっと観察しました。


こうして撮りためた記録は、載せる種類を精査し、碁石海岸植物ハンドブックのような冊子にできたらいいねと皆で盛り上がっています。4月からこれまで行った調査6回、チェックした植物は150を超えました。盛夏~秋に最盛期を迎える植物もたくさん控えているので、一年間でどれだけの植物と出会えるか楽しみです。

下の画像はこれまでの記録の一部です。葉⇒つぼみ⇒開花⇒結実と一連が見られるので、葉っぱだけだと分からないものは、花が咲くであろう1ヶ月後に答えあわせのクイズのようです。

雨の日の観察もいいものです。雨だからこそ見えるものがあります。帰り道ではでんでんむしとばったり会うこともできました。車道に出てきていたので葉っぱに乗ってもらい、茂みの中へご案内しました。

雨の日の話題を書きましたが、昨今の土砂災害や大雨・浸水など被害に遭われた方々へ心よりお見舞い申し上げます。

降雨の程度や前線の発生場所などについては人類誰もコントロールできるわけもなく、うける地面側がどんな状態であるか知っておくことがせめて自分にできることでしょうか。

巡視をしていて「土石流危険箇所」の看板があり、そのまわりや麓が住宅地という場所があったりします。自分自身がどのような土地に住まいを構えているか、地域のハザードマップやまわりの環境を確認し、家族全員で把握し備えなくてはと強く思います。

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2021年07月02日虫の目で観察してみました

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

みなさんこんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

梅雨入りした三陸も天気予報は先の先まで傘マークが付いています。そんな中たまの晴れ間があるとカメラ

片手に公園へ足が勝手に向いてしまいます。

この日は虫の目(マクロレンズ)を相棒に碁石園地を巡回しました。夏へ向けて色とりどりの花が咲く道中、出会った植物たちの一部分にズームアップして撮影してみました。

ここで突然ですがクイズです!何の植物かお考えください。

 ★第一問★

どこの道ばたでも見つけられるお馴染みの植物です。

★第二問★

鼻炎だった私は子どもの頃この葉っぱを鼻に詰められました。

★第三問★

これもお馴染み、無毒ですが見た目に反して食べても美味しくありません。

★第四問★

夏に蔓延る紫色のあの子、こんなに涼しげなお花つけてたの?

★第五問★

こんな可愛いトラだったらお世話してみたいですね。

★第六問★

ベル型の花からフリフリリンリンって覚えていた人がいました。

★第七問★

海岸域岩場でよく見られる植物。ビロードのような葉っぱが特徴です。

★第八問★

花の部分を真上から撮影。本公園の指定植物のひとつです。

★第九問★

こちらも本公園の貴重な指定植物。花びらの色が名前の由来です。

いかがでしたでしょうか?

身近な植物でもこのような視点で見てみると新しい発見があります。自然とのふれあいイベントでネタとして使えそうです。みなさんも虫になった気持ちで植物観察してみてはいかがでしょうか。今まで気がつかなかったことを発見できるかも知れませんよ。

↓以下で答え合わせをどうぞ。↓

☆第一問☆

『ムラサキツメクサ』

アカツメクサとも呼びますね。この花の白花もたまに見かけますが、それは「シロバナアカツメクサ」だそうです。なんだか複雑ですね。

エストロゲンとイソフラボンを含み、女性に嬉しい薬効もあるためハーブとして多用されています。小花をじっくり見てみると繊細で美しく、びっくりしました。

☆第二問☆

『ドクダミ』

日本三大民間薬のひとつ、万能選手です。独特の匂いがその効能の高さを表しているのでしょうか。加熱すると匂いが和らぐそうで、天ぷらにして食べても美味しいそうですよ。ドクダミは実を付けず地下茎で増えます。なぜこんなにきれいな花(のように見える)を咲かせるのでしょう。

☆第三問☆

『ヘビイチゴ』

小さい頃食べられるかどうか実を割ってみた方いらっしゃいますか?真っ赤で美味しそうに見えるのに中身はフカフカで水分なし。ヘビも食べないそうですよ。緑の地面に赤い実がちりばめられている様子はとてもかわいらしいですよね。

☆第四問☆

『ウツボグサ』

名の由来は、花穂につく小花の形が弓矢を入れて背中に背負った道具である靫(うつぼ)に似ていることに由来するとのこと。この植物も薬効があり、漢方薬にも使われているそうです。ひとつひとつの小花があんなに美しいとは近づいて観察してみて初めて分かりました。

☆第五問☆

『オカトラノオ』

小さな星形の白花が房状に集合しています。この花が夏の訪れを知らせてくれます。群生している箇所では花房が同じ方向を向いていることに気がつきます。太陽の方向でしょうか?「○○トラノオ」っていろいろありますよね。ウミ、ヌマ、イワなど。空気清浄効果で人気のサンスベリアも別名「トラノオ」。虎のしっぽをよく見たことがないのでピンときません。

☆第六問☆

『ツリガネニンジン』

こちらも初夏を知らせる花です。ちいさなベル型の花が可愛いですね。名前の由来は花の形が釣鐘、根が朝鮮人参に似るというところからだそうですが、この植物も本公園の指定植物のため引っこ抜いて根の形を確認できていません。

☆第七問☆

『ラセイタソウ』

三陸をはじめ海の岩場や崖地ではよく見られる植物です。シワシワで分厚い葉っぱは一見作り物かと思うほど印象的です。花は地味で目立ちません、葉っぱが主役の植物です。見つけたら是非葉を触ってみてくださいね。

☆第八問☆

『ノハナショウブ』

花菖蒲の原種です。紫色の花弁に黄色い筋が入ってド派手な印象です。黄色い筋は蜜へ導く印なのだそう。この植物の受粉システムは非常に興味深いです。碁石海岸ではニッコウキスゲが終わるとこの花にバトンタッチ、場所によって一面のノハナショウブを楽しむことができます。

☆第九問☆

『カキラン』

小さな花でも面構えはしっかり蘭です。花の色が柿の実の色に似ているからこの名が付けられたそうです。オレンジで目立ちそうに思うのですが、上から眺めると緑がかった色で見つけにくいです。碁石海岸でも数が多くはないので大切に見守っていかなくてはならない植物です。

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2021年06月23日光る汗、溢れる笑顔~みちのく潮風トレイルルート整備~

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

例年より1週間以上遅れて北東北の三陸も梅雨入りしたとのこと。

天気予報は先の先まで傘マークが続いています。

梅雨入り前にみちのく潮風トレイルのルート整備を行ったので

その様子をダイジェストでお送りします。

季節を感じられる一枚も添えました。

キラキラまぶしい太陽が懐かしい、、でも汗でビショビショでした。

みんなで力を合わせて作業をするので自然と一体感が生まれます。

汗と笑顔があふれるみちのく潮風トレイル整備活動です。

今年の春夏のハイカーウェーブは梅雨入り前に過ぎ去っていきました。

withコロナの時代、策を講じてどんどん大きな波になることを期待しています。

【2021/5/24 鍬台峠(釜石市・大船渡市)】

管内ルートでは近年人気が高まっている鍬台峠(くわだいとうげ)。

古の三陸浜街道が美しく残っている峠です。

草刈り整備箇所は峠を登り切った先、せっせと登ること1.5時間。

地元有志・環境省パークボランティア・南下中ハイカーと7名で整備です。

【2021/6/10 綾里崎(大船渡市)】

太平洋に突き出た綾里半島を縦断、

ぐるっと一周16㎞歩いても南北距離はほとんど進まない

陸中南部の特色リアスのギザギザをたっぷり体感できるルートです。

半島のほとんどが国立公園に指定されていて、

指定植物にもなっているマルバダケブキの群生が楽しめます。

管理者である市の職員さん・パークボランティア・

みちのく潮風トレイル整備ボランティア・北上中ハイカーとの

総勢12名での大規模草刈り活動となりました。

【2021/6/17a.m. 大船渡市内】

羅生峠(らせいとうげ)と綾里峠(りょうりとうげ)のアクセス路整備です。

街道や登山道まで導く道が塞がってはせっかくのトレイルも泣きます。

大船渡市職員さんとパークボランティアと4名で小回りを利かせながら行いました。

【2021/6/17p.m. 筋山(大槌町)】

リアスシーニックラインというドライブウェイをルートにしています。

舗装路ではありますが太平洋の様々な表情を木々の間から

眺めなつつのんびりハイクできるルートです。

一区間、100mもない距離ですが、整備が必要な箇所があります。

ササや幼木が多いので手鎌で刈るのは一苦労。

パークボランティアと私の3名で上からと下からで攻めました。

管理者や私たちの活動に興味を持って整備に協力してくださる地元の方、ちょうど通りかかったハイカーさんたちが増えてきた印象です。とてもうれしいことです。近くに住む地元の皆さんがみちのく潮風トレイルを

大切に思い、整備活動に参加したくなるように働きかけをしていきたいと思います。

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2021年06月11日初夏の首崎(こうべざき)へ

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

まだ梅雨入り宣言の聞こえない北東北です。皆さんの地域では梅雨入りしましたか?

今年もこの時期、三陸復興国立公園で指定植物になっているマルバダケブキや海浜植物をはじめとする自然環境調査を目的に大船渡市首崎へ行ってきました。この日はあいにく鈍色の空で、気温は高くじめっとする気候でしたが、岬先端では心地よい潮風が湿気を払ってくれました。

鬼の首が流れ着いたことから名付けられたと伝えられている、そんな首崎ですが、大船渡事務所管内では特に自然性が高い地区ということで、この自然環境の保全がミッションとなります。太平洋に突き出た先端部は、雄大な外洋、海食崖、連なる半島などの絶好の展望台となっています。

今年のマルバダケブキの咲き具合はどうでしょうか、楽しみに入口に立ちます。

入口にさっそく咲いているではありませんか。期待が膨らみます。

時期としては今週が見頃でしょうか。一面黄色の絨毯のようでした。

今年のマルバダケブキはニホンジカによる葉の食害が目立ちました。この辺は例年ですとマルバダケブキは食べられる対象ではないのですが、シカ界の食糧難なのか好みの変化なのでしょうか。勢いよく育つと花茎が1メートルほどにもなるこの花ですが、背の高いものが少ないなという印象でした。

さて首埼灯台のある岬先端へと歩みを進めます。先端に向かって馬の背の部分を歩いて行くわけですが、南側斜面はボロボロと激しく崩れています。あと数年で通っている上の歩道も崩れてしまいそうです。

灯台の建つ高台から南側を振り返ってみました。

過去3年の記録写真です。19年に海側の斜面が大きく崩れ落ちているのが見て取れます。この年は15号、19号と大きな被害をもたらした台風がやってきました。その後は大きな変化は見られないようですが、観察・記録を続けていこうと思います。