アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]
東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、十和田八幡平、三陸復興、磐梯朝日国立公園があります。
かえってきた干潟*広田湾小友浦
2022年05月31日
大船渡
東北地方環境事務所
こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。
気がつけば5月末日、新年度明けて2ヶ月経ったわけですね。バタバタと駆け抜けて行ってしまいました。
植物や生物が待ってましたと動き出すシーンを記録したいとかけずり回る私たちにとって、春はいくら時間があっても足りません。
唐突ですが、『重要湿地』 聞いたことありますか?
生物多様性の観点から重要度の高い湿地のことを呼びますが、湿地の減少や劣化に対する関心の高まり、ラムサール条約における湿地の定義の広がりなどを受けて、ラムサール条約登録に向けた礎とすることや生物多様性の観点から重要な湿地を保全することを目的に、環境省は「日本の重要湿地500」を平成13年に選定しました。(詳しくはコチラをご覧ください)
近年の多様な変化によりその選定を見直し、2016年に改訂したわけですが、改訂するにあたって細かな実態調査や有識者・地域住民の意見を伺うなど現地で様々な下調べが行われました。そういう動きが定期的に継続されることは、地域住民の理解や重要性の認知などが拡がることに繋がりますよね。調査やモニタリング段階でも地域住民がその湿地に触れ合う行事などができれば保全や利用という面へ良い効果に繋がることと思います。
2016年に新たに追加された小友浦(おともうら)が陸前高田市の広田湾にあります。
見直し後、岩手県で指定された湿地は11箇所ですが、三陸復興国立公園の範囲内三陸海岸沿岸には3箇所あります。そのうちの1箇所の小友浦は大昔は豊かな干潟だったそうですが、1950年代後半に食糧増産のため干拓され、農地となっていました。2011年の東日本大震災で堤防が壊れ、農地だった陸地がさらわれて現れた水たまり。一旦消えてしまった干潟が現れたことから"奇跡の干潟"などと呼ばれたこともありました。しかしながら辺り一面復興工事一色、小友浦も例外ではありませんでした。地域住民や専門家たちによる「かつての干潟を取り戻したい」という思いや環境への意識の高まりなど、干潟再生への道は紆余曲折を経てなんとか進めてこられました。まるっきり自然のありのままの干潟とは行きませんでしたが、生物が戻ってきているのは確かです、これからも見守っていかなければと思います。
先日、陸前高田市から連絡を受け、干潟の再生状況と今後の展望などをご説明いただきながら現在生息している生き物たちの観察をしてきました。
砂地にたくさんの小さな穴が。これはアナジャコの巣穴だそうです。
透き通った身体で見えにくいですがアナジャコの幼体でしょうか?
他にもヤドカリ(なかなか出てきてくれませんでした)、二枚貝、小魚たちを発見できました。
泥にまみれて大量の二枚貝やマガキの死殻がたまっている場所もありました。
現在関係者以外立入禁止とされている小友浦ですが、市担当者によると一般開放する時期も遠くないだろうとのこと。地域の人に触れてもらうことが存在する意味があるわけです。大切な干潟、生態系を学びながらこどもから大人まで楽しめる場所になるといいですね。