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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

12年

2023年03月14日
大船渡 坂本麻由子
3月11日の海
今年の3月11日の海を見つめる
こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。
 
あの日から12年、十三回忌の節目を迎えました。
今年の3月11日は土曜日ということで、被災地各地に追悼のため多くの人が訪れ祈りをささげていました。
地震発生の時刻2時46分に手を合わせ黙祷
「自然と人の共生を示す象徴の道」となることを目指しているみちのく潮風トレイル。
多くのハイカーが東北に寄り添うため足を運んでいます。
歩くことによってあの日を、これまでを、そこに生きる人たちを思う。
様々な課題がまだある中、ハード面の復興事業は大分進んできました。
防災について家族と、大切な人と語り合ってほしいこの時期なので、
ルートを歩いて出会う震災前と違う風景、『防潮堤』について今回は書きたいと思います。
 
津波や高潮などの被害を軽減するための防潮堤ですが、時には街と海を分断する存在と言われることもあります。
みちのく潮風トレイルを歩いていると、防潮堤や海の見え方の違いを北から南まで見て比べて考えることができます。
大船渡自然保護官事務所の管内のいくつかの防潮堤をご紹介しましょう。

大谷海岸/宮城県気仙沼市

震災前は海水浴場として賑わっていた大谷海岸。
大切な砂浜を守るため、国道から海が見えるようにと熱心な市民活動があり、防潮堤の位置を当所計画から陸側に後退させ、その防潮堤と同じ高さに国道45号と、道の駅をはじめとする街づくりがなされました。
堤防高は海抜9.8mで、工法も工夫され、砂浜から陸側を眺めたときに圧迫感が感じられないようになっています。
セットバックした防潮堤の上に国道が敷かれた
防潮堤の高さに国道と街づくりがされた

田中浜/宮城県気仙沼大島

気仙沼大島の住民にとって、ここ田中浜と隣の小田の浜は心のよりどころで、コンクリートで覆われてしまうことは避けなければなりませんでした。
当初提案されたのは海抜11.8mのコンクリート防潮堤だったそうです。
島民の猛反対があり、何度何度も話し合いを重ね、防災林の造成の中で海抜11.8mの「防災の丘」を整備することで防潮堤の役割をさせることと計画が変更になりました。
元々あった防潮堤には地盤沈下で沈んだ分1mを足し、背後の丘斜面には樹木を植栽し、コンクリートが目立たない、緑の防潮堤を目指しました。
砂浜の奥に見える防災の丘
砂浜の奥に1m足された防潮堤と苗木が植えられた防災の丘

小々汐海岸線/宮城県気仙沼市

昨年春に開通した気仙沼のベイブリッジ「気仙沼湾横断橋」の真下付近にこの防潮堤はあります。
地盤沈下した分上に足された防潮堤ですが、よく見ると建設当時のこどもたちが描いたと思われるかわいらしい壁画が残っています。
半分埋もれてしまっていますが、すぐ脇を歩いていると防潮堤から声が聞こえてくるようです。
真新しい気仙沼湾横断橋と半分壁画の防潮堤

夢海公園/岩手県大船渡市

殺風景なコンクリートの壁が大きなキャンバスになりました。
三陸の海を想像させる様々な青色のタイルアートが3月11日から展示されています。
防潮堤の管理上、タイルをずっと貼っておくことはできないため、今回の展示は5月26日までだそうです。
是非間近でご覧ください。
(詳しくは“三陸ブルーラインプロジェクト”をサーチしてみてください。)
 
タイルアートで彩られた防潮堤
青色のタイルで彩られた防潮堤
三陸はもう春の足音がはっきり聞こえています。
歩くには絶好の季節となりましたので、三陸に寄り添いに
みちのく潮風トレイルを歩きにおいでください。
お待ちしております。
みちのく潮風トレイルのルート沿いに咲くフクジュソウ
みちのく潮風トレイルルート沿いに咲くフクジュソウ