アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]
国立公園おいしい楽しみ方
2022年01月17日今が旬のカキの画からこんにちは、大船渡自然保護官事務所より坂本です。
今しか味わえない美味しい時期の美味しいカキをお届けしたいと、年末からカキ漁師さんたちは大忙しです。
先日のトンガ沖で発生した海底火山噴火の影響で津波警報が発令された岩手県ですが、この時の波で漁具や養殖筏に被害が及んだというお話も聞きました。警報・注意報が解除されてから点検や作業など、自然相手の仕事、海の男たちは本当にたくましいです。
上の写真を見て「わぁ美味しそう!」と思った方いますか?実はこのカキは食べ頃まであと2~3週間といったところで、まだ全体的に透きとおっていて成熟する前なのです。
↓食べ頃のカキはこんな感じです。↓
ぽてっとした部分がしっかりと濁ったクリーム色になります。水分の多い時期の早いカキは火を入れると水分が抜けて小さく縮んでしまいますが、ここまで白くなっているとあまり身縮み起こしません。これを知っているとカキの目利きができますね。
三陸復興国立公園は、自然の恵みと脅威、人と自然との共生により育まれてきた暮らしと文化が感じられる国立公園です。崖や岩礁が織りなす海岸風景はもちろんですが、その地で暮らす人々が自然と共存する姿や産業風景も大切な要素になっています。リアス海岸となっている公園南部の湾内には、カキ、ホタテなどの養殖筏やワカメなどの養殖ブイが多数浮かぶ風景が印象的です。
〔夕日に染まるカキ筏 陸前高田市広田湾〕
〔ブイが並ぶ日の出を待つ大船渡湾〕
養殖風景を眺めていると海に浮かぶ施設が様々あることに気がつきます。代表的な2種をご紹介します。
【筏(いかだ)式養殖】
木や竹などで筏を組んで海に浮かべ、筏からロープに貝を付けて海に沈めているものです。主にカキやホタテが育てられています。下の写真の筏はカキの養殖棚ですが、水面から浮き上がっているものと水面にぴったり付いているものとあるのが分かりますか?
この筏の下にはロープで垂れ下がっているカキが付いています。カキは大きく育ってどんどん重くなります。水面にぴったり付いている=重みで沈んでいるということです。沈んでいる筏の下には大きなカキがたわわにぶら下がって収穫されるのを待っている状態です。浮いている筏は収穫後のものか、沈めて間もないか(多くは沈めて2年で出荷)ということです。
〔気仙沼大島瀬戸〕
【延縄(はえなわ)式養殖】
水面に浮かぶ丸い玉、これはブイと呼ばれています。海にアンカーを下ろして直線にロープを張る方法です。主にワカメ、コンブ、ホヤが育てられています。
貝や海藻の養殖は特に餌を与えるでもなく、海の栄養だけで育てる、ほぼ天然の状態に限りなく近いのです。
ブイの下にはフサフサゆらゆら海藻の林が広がっていると想像するとおもしろいですね。
〔大船渡湾〕
2種類の方法をどのように使い分けているかですが、筏式は水深の深いところでも設置可能で生産効率性も高い方法として普及してきましたが、高波やうねりなどで壊れやすいという難点があります。一方延縄式はシンプルな構造で耐久性が高く潮流れもいいとのこと。その漁場の環境で最適な養殖施設が置かれているのですね。一概には言えないのですが、筏がある場所は波が穏やか、延縄だと波が荒いのかな、そんな目線で眺めることができます。
筏式で主にカキ・ホタテと前述しましたが、実は延縄式でもカキ・ホタテは育てられています。その場合はブイの大きさ(形)が見分けるポイントだったり、一直線に見えるロープの下は実は複数列・複数段になっていたりと、とてもとても奥が深く、いまだに私も勉強中でございます。
三陸の海を眺めた時にちょっとした豆知識としてご活用いただけたら嬉しいです。美味しい国立公園、三陸復興国立公園へ是非お越しください。