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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

みちのく潮風トレイルを歩きに行こう!岩手釜石大船渡編

2022年03月22日
大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

春の香りがしてきて、どこかに行きたい!とウキウキしてきますね。

歩く旅の道「みちのく潮風トレイル(MCT)」はいかがですか?

 MCTは、青森県八戸市から福島県相馬市まで続く1000㎞を超える歩くための道です。1000㎞と聞くと「ちょっと厳しい・・・」と思われるかもしれませんね。しかしその歩き方は多様で、自分好みにアレンジ自在です。全線歩ききる必要はありませんし、週末にふらっと駅周辺だけ、牡蠣が食べたいからあの港を目指して、など気軽にお出かけ材料にしていただきたいと思います。

 そんなちょこちょこつまみ食いトレイル(区切って歩く=セクションハイク)には車と鉄道が強い味方になります。MCTの通る三陸沿岸は自動車道(三陸沿岸道路)と三陸鉄道、JRと相性ばっちりなので地図とにらめっこしながら計画も楽しんでくださいね。

 今、快適にドライブできる『復興道路』として繋がれた三陸沿岸道路は地域間の物流への貢献ばかりでなく、医療支援や地域産業、観光への振興に期待されています。この三陸沿岸道路は、三陸沿岸の大動脈国道45号に沿っていますがその元となっているのが『三陸浜街道』です。こう呼ばれるようになったのは明治以降ですが、江戸時代から海産物の移送や海運の主要港を結ぶ脇街道として経済や文化の発展に寄与してきました。物資をできるだけ早く運ぶためにリアス海岸特有のギザギザの海岸線をなぞらず最短距離で結び、現在の国道45号にほぼ重なり敷き替わっているわけですが、当時のまま残されている部分があります。道路を敷けず下にトンネルを通した『峠道』です。半島の根元を貫くには難所の峠が立ちはだかりました。

 MCT岩手県南部ではこうして残っているいくつかの峠道をルートにしています。今回はその中から釜石市と大船渡市にまたがる『三陸浜街道鍬台峠』をご紹介します。

 三陸鉄道唐丹駅スタート、三陸駅ゴールの歩行距離約20㎞。鍬台峠には、当時の技術を集結して組まれた石垣や側溝、石畳の名残や一里塚など、先人たちの息づかいが感じられるような道や、まるで絵本の中に迷い込んだかのような世界の美林帯があります。標高430mに広がる自然や古の風景はたくさんのハイカーを魅了してきました。新緑の春、ツツジやクリンソウが咲き乱れる初夏は特にオススメですよ。

鍬台峠から南下し下り立つ地は奇跡の集落吉浜です。かつての度重なる大津波の経験を元に政策を打ち、東日本大震災での被害を回避した集落です。そしてその先の羅生峠を越えると次の集落、越喜来が待っています。ここにはハイカーはもちろん、旅人や地域住民など誰にでも開放している優しい場所、震災伝承施設『潮目』があります。ここを訪れ、地元の方の思いを聞いてみてください。これまで立ち寄った旅人の写真やメッセージも見られますよ。

人が紡いできた歴史・道が感じられるこのコース、海岸風景だけではないMCTの変化球を堪能できます。歴史や人、そしてその思いに触れることこそがMCTを楽しむ秘訣かもしれません。

今回のご紹介コース(オレンジ色の線)を地図で示すと以下のようになります。

三陸沿岸道路(黄緑色の線)と三陸鉄道(黒線(破線はトンネル))と国道45号(ピンク色の線)が並走しているのが分かりますね。