東北地域のアイコン

東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

鳥獣保護区 三貫島(釜石市)へ上陸

2019年03月08日
大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

先週、国指定三貫島(さんがんじま)鳥獣保護区の調査へ行ってきましたのでその様子をご紹介します。

三貫島は、釜石市箱崎半島の南東に浮かぶ島。

国指定の鳥獣保護区であるのと同時に、島全域が三陸復興国立公園特別保護地区であり、

オオミズナギドリ及びヒメクロウミツバメ繁殖地として国の天然記念物にも指定されています。

また、3種のウミツバメ類「コシジロウミツバメ」「ヒメクロウミツバメ」「クロコシジロウミツバメ」が

同所的に繁殖する場所としては国内唯一だそうです。

この貴重な島は上陸に許可が必要で、誰もが立入れる場所ではありません。

三貫島へはもちろん船で向かいます。

外洋に位置するため、島に近づいて波を確認してから上陸できるかどうかが決まるのですが、

実際、何度、船で沖まで出たのに波が高く上陸できず泣く泣く帰港したことか・・・

この日は過去最高じゃないかと言われるほどのグッドコンディションで上陸できました!

鳥しか住んでいない島、言ってみればほ乳類のいない島です。不思議な、幻想的な空間です。

今回のミッションのひとつは、オオミズナギドリがこの時期に飛来しているかどうか。

オオミズナギドリは夏の繁殖期に合わせて初春に飛来します。

三貫島での調査上、3月上旬の飛来記録があるそうで、2月末に行った今回飛来が確認できれば

調査上最速記録となります。

オオミズナギドリは地面に横穴を掘って巣とします。

左の写真のように、前シーズンの巣穴は使われない期間があるため、落ち葉でふさがれています。

今回、真ん中の写真のように落ち葉がどかされ、使われているらしい巣穴がいくつか見られました。

そして決定的なのは右側の写真。オオミズナギドリの羽と骨。

かわいそうですが、捕食されてからそんなに時間が経っていないものです。

以上より、三貫島では2月末に飛来を確認できたということで、記録を塗り替えたことになります。

オオミズナギドリの面白い生態を少し。

左の写真はタブノキの幹ですが、なにやら刃物で傷つけたような筋が沢山見えますね。

これはオオミズナギドリの引っ掻き跡です。

地表から飛び立つのが苦手な彼らは、高い木に登って飛び降りながら羽ばたくことをするそうです。

木を登るときに爪を立てて走るため、このような引っ掻き跡がつくんですね。

シーズンにはこのジャンプ台に何百羽と順番待ちの行列ができるとか。

そして右側の写真は海に向かって下がっている緩やかな斜面。

オオミズナギドリが地面を走って加速をつけ、パラグライダーのように飛び立つ、飛行場です。

早朝に沖へ飛び立ち食事に行って夕方まで帰ってこない彼ら、昼間の調査で見ることはなかなかないのですが、順番待ちをしている姿、にぎやかでかわいいでしょうね。

調査の大変さも少しご紹介します。

藪をかき分け進んだり(写真左)、ほぼ垂直の岩場を登ったり(写真真ん中)、足場のもろい急斜面を這ったり(写真右)。周囲4kmの小さな島ですが、様々な顔を持っています。

最後に。

右側の写真赤丸部分が上陸部です。

上陸したところに救命胴衣を置いてきたのですが、肉眼で確認できないほど高いところまで

這い上ったんですね。登ったはいいがあそこまで降りるのか~とちょっとがっかりした瞬間でした。