アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]
みちのく潮風トレイル 三陸浜街道
2020年11月20日皆さんこんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。
三陸復興国立公園においてコンテンツのひとつ「みちのく潮風トレイル」。
このアクティブレンジャー日記で知ってくださった方もいらっしゃいますよね。
総距離1,025㎞で、今のところ日本一長いトレイルとなっています。
全線開通は2019年6月、これまであちこちのメディアで取り上げられて
聞いたことあるよ 少し歩いてみたよ という方も増えてきていたら嬉しいです。
みちのく潮風トレイルのイメージ、まずは「海」ですよね。
そして「震災を語り継ぐ道」。
三陸の絶景海岸風景を歩ける道でもあり
自然の厳しさと優しさとの共存を考える道でもあります。
今日ご紹介したいのはあまりイメージにないであろう「歴史道」。
ほとんど海の見えない山の中を歩くルートも実はあるんです。
岩手県南部はご存じの通りリアス海岸が有名ですね。
そのリアスから住民たちは多くの恩恵を受けているわけですが
ものを運ぶ・人が行き来することに関してはハンデでしかありません。
海に突き出す半島ぐるっと周回
=>高低差少ないが距離がぐーんと伸びる
半島根元を最短距離で峠越え
=>距離は短いが高低差がひどい
道というものは必要とされて作られ、使われ続けるから残るのですが
三陸浜街道は時を経て現在の国道45号線へと進化しています。
そんな中でもうっすら残っていた初代の三陸浜街道に
みちのく潮風トレイルを通しています。
なぜこんな峠道を通しているのか、海が見えないのに潮風トレイルなのか
結局は三陸の海・地形があるからこその道で
先人たちが切り開いた苦労を想像しながら進む
重要な区間でもあると思っています。
前置きが長くなりましたが、そんな歴史道のひとつ
岩手県釜石市に通る"石塚峠(いしつかとうげ)"の巡視をしてきたので
どのような巡視をしているのかご覧ください。
石塚峠は岩手県釜石市の尾崎半島の根元を縦断する峠です。
巡視で行うことは
①路体の確認
歩くルートの状態を確認します。
崩れや分岐、通行するのに障害になる倒木や落石はないかなどです。
手を加えすぎない処置までにします。
昨年の台風19号の爪痕がまだ色濃く残っていました。
復旧作業や迂回路などの情報も関係各所とすり合わせをします。
②標識・目印の確認
設置済みの標識やテープが役目を果たしているかのチェックをし、
必要であれば更新作業を行います。
木の杭は野生動物にかじられたり、草刈り機で傷ついたり
テープにおいては日光や雨で劣化するのでこまめな付け替えが必要です。
迷いやすかったという声を聞いた場合はテープの位置なども考え更新します。
③ ①②で得た情報を関係各所と共有し、ハイカーへ情報発信
秋冬は写真のようにすっきりとした地面ですが、
春夏は道が消えてしまうほど草が元気よく生えてくるので
巡視に草刈り整備が加わります。
また実際に歩きに来たハイカーからの声を聞き、
次の巡視に生かせるよう普段から情報を整理することもしています。
最後に石塚峠に残る街道の面影を。
"石塚の七里塚"
一里ごとに置いたはずの塚なのになぜ『七』里塚か?
そんな謎も現地の案内看板で解決しますよ。
この七里塚は当時(1800年代)の原型をほぼ保っていると計算されているそうです。
歴史好きな方は是非岩手県南部を楽しみにいらしていただきたいと思います。
様々な道をつないでいるみちのく潮風トレイルは楽しみ方も色々ですね。