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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

十八鳴浜の被害状況を確認してきました

2016年11月17日
大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

先日、気仙沼市大島の北東部に位置する『十八鳴浜』(くぐなりはま)へ現地調査へ行ってきました。

十八鳴浜は国の天然記念物にも指定されている、鳴砂の美しい砂浜です。

鳴砂は、砂が汚れてしまうとならなくなるので、

自然の姿をできるだけそのままにと、周囲から人の手はあまり加えられていません。

 

この十八鳴浜、今年の台風の被害で、以前環境省で整備した土留工が崩れてしまいました。

このため、気仙沼市や気仙沼大島観光協会の皆さんと一緒に、

どのような補修ができるか現場を確認しながら検討してきました。

東日本大震災の際にも砂浜がほとんどなくなるほど波にさらわれ、えぐられていた山肌ですが、

さらに台風で被害箇所は拡大し、写真のように砂浜との高低差は人の背丈以上になっていました。

 

「この素晴らしい砂浜を、はるばる見に来てくれた人に

安全に楽しんでもらえるよう、できるだけ自然に近い形で補修してほしい」

これが同行した皆さんからの声でした。

ポイントは「できるだけ自然に近い形で」という部分。

震災後、鳴砂はさらわれてほとんど無くなったはずなのに

今、しっかり鳴砂の砂浜は存在しています。

自然と砂は戻ってきたそうです。

 

「震災や台風の結果、今あるこの自然の姿は

何もいじる必要も無いし、隠す必要も無い。

ありのままでいいんですよ、自然は。」

とても印象に残った言葉でした。

 

人工的な海岸線に見慣れていた昨今、

十八鳴浜はありのままの海岸を見られる数少ない浜です。

訪れた人が安全に、自然に近い形で見学できるよう、

補修工事を工夫しなければなりません。

同行させていただいた方々の熱い思いに触れることのできた調査でした。

その調査の帰り道の1枚です。

美しい夕焼けが防潮堤の切れ目から見えます。

少し切なくなりましたが、自然と生きていくということを

いろいろな方面から考えさせられた1日でした。