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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

悠久の時を感じるスポットへ~気仙沼編~

2022年09月08日
大船渡
こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本麻由子です。
 
南北250㎞にも渡る三陸復興国立公園は太平洋と断崖、リアス地形や岩礁などが魅せる海岸美やその自然と共存する人々の営み、風土が見所です。
この三陸の地形がどうやってできあがったのか、それを紐解く鍵が沿岸部の地形や岩石に刻まれています。
景色を見て「わぁ、きれい」で終わってはもったいない。
足下に注目すると、また違った三陸復興国立公園を楽しめますよ。
 
今日は気仙沼市の公園内より、4カ所ほどご紹介します。

〔岩井崎(いわいざき)〕
青い空と青い海と潮吹岩
もともとは地獄崎と呼ばれていたそうですが、これほどの景勝にふさわしい名をと江戸時代に祝崎と改め、その後今の岩井崎という地名になりました。
古生代ペルム紀中期(2億8900万年前 - 2億4700万年前)に形成された石灰岩地帯で、波や雨水によって侵食されたごつごつとした岩場が続き、波の高い日には吹き潮を見る事ができます。
一部地殻変動の熱で大理石に変質している場所があり、その大理石地帯でペルム紀のフズリナや四射サンゴ、ウミユリなどの化石が観察できます。
岩の色の違い
岩の色の違いわかりますか?
〔御伊勢浜(おいせはま)〕
御伊勢浜と御伊勢崎
砂浜部分が御伊勢浜、奥の岬が御伊勢崎
岩井崎より少し南下すると御伊勢浜・御伊勢崎です。震災で大きな被害を受け、復興工事や治浜事業がつい数年前まで行われていました。環境省の「快水浴場百選」にも指定されていますが、今年の夏に12年ぶりの海開きができました。
ここで見られるのが堆積岩の黒色泥岩です。岩井崎から西に向かって時代が新しくなるものの化石が極端に少なくなっているとのこと。
これは約2億5400万年(古生代ペルム紀後期)の海底が長い時間無酸素であったことを示すそうです。
黒い磯
結晶が見られない堆積岩で黒い磯ですね
〔大沢(おおさわ)海岸〕
層がはっきりと見て取れます
地質学の世界では、「大沢層」としてとても有名な場所です。大船渡自然保護官事務所には毎年研究者たちから現地での注意事項などについて問い合わせがあります。
大沢層は今から約2億5000万年前(中生代前期三畳紀)の地層で、黒色なので酸素量が少ない環境、地球環境の大きな変動期に堆積したといわれています。しかし、ここではアンモナイトや魚竜の化石が見つかることから、海面近くは生物が生息できる環境だったと考えられるそうです。
大沢層の一部
大沢層は別名暗青色粘板岩層
〔登米沢(とよまざわ)海岸〕
新しい層が連なる
新しい層がむきだしです
南隣にある小泉海岸とともにいい波が寄せ、サーフィンスポットとしてにわかに人気の静かな浜です。
ここでは今まで見てきた岩石の地層とは違うものが壁になっています。
新生代の新第三紀(2400万年前~259万年前)鮮新世の堆積物とその間に挟まれた火山灰(330万年前から320万年前の凝灰岩)から成っているそうです。
堆積物の層は少し触れただけでもグラっと構成している石ころが動くほど柔らかい層です。
火山灰層は上にある木々の枝などで見えにくくなっていますが、目線を上にやるとはっきりと白いラインとなって見えます。
この断崖を守るためか、違う質の岩石が波消用に敷き詰められていました。
登米沢断崖
登米沢断崖 波や雨風に浸食された壁が連なります
地層の説明
下部の厚い層が堆積物、見えにくいですが青丸部分が火山灰層です
いかがでしたでしょうか。
気仙沼市は宮城県で一番古い古生代ペルム紀から新生代までの地層がほぼ連続して見られる貴重な場所で、その道の方には夢中になってしまうエリアだそうです。
私も地学を少しかじっていましたので興味があり、地層を見ているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。
三陸復興国立公園内には三陸ジオパークのジオサイトに指定されている箇所がたくさんあり、今回ご紹介した場所もいくつか指定されています。(日記内の各箇所の説明でも三陸ジオパークのオフィシャルwebサイトを参考にさせていただきました。)自然を理解するためには切っても切れない仲のジオパーク、国立公園と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
 
ご紹介した場所はすべて国立公園に指定されている場所です。土石・化石の採取は禁止されていますので、観察と写真撮影でお楽しみください。もちろん公園以外の場所でも勝手な自然物の採取や私有地などへの無断侵入はしないようにお願いします。