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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

林野火災その後

2022年12月15日
大船渡 坂本麻由子
みなさん、こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。
 
2017年春に岩手県釜石市尾崎半島で起きた林野火災から5年が過ぎました。
(当時の現地の様子をレポートした日記はこちら
延焼した部分の多くは三陸復興国立公園に指定されているエリアで、その後の自然環境がどう変化していくのか経過も含め観察・記録してきました。
燃えた林で空を見上げる
林地再生復興事業が昨年度末に完了したのですが、それまでの道のりは険しく一筋縄ではいきませんでした。
復旧作業が始まったのは火災発生した年の晩秋からで、3年計画で2020年度の完了を見込んでいました。しかし2019年の台風19号で被災、植栽地や作業道、シカ防護ネット柵などの被害が深刻で、その復旧にも相当な時間が必要となりました。
計画を延長し、2022年度にやっと事業が完了し地元の皆さんを始め、関係者たちはホッと胸をなで下ろしているところです。
 
この尾崎半島には東北自然歩道として「リアス海岸尾崎半島のみち」があります。
釜石湾を抱く南側の半島で、日本武尊を祀った尾崎神社奥の院や尾崎明神本宮などの歴史に加え太平洋に突き出た半島部分を歩きリアス海岸と雄大な太平洋の希有な風景美を楽しむことができました。
復旧が完了した半島は作業道が張りめぐらされ、何度も行っていた私でも当時の道の記憶を呼び起こすのが難しいほど風景が変わってしまっていました。
工事による立ち入り禁止は解けましたが、東北自然歩道を「楽しむ」にはまだ時間がかかりそうです。
道迷いも起こりうるので、管理担当者である釜石市商工観光課へお問い合わせの上お出かけになるようお願い致します。
 
先日担当課と一緒に視察してきましたので、少しですが現地の今の様子をご覧ください。

 
自然歩道入り口は5年も人の出入りがなかったのですっかり薮と化していました。
茨だらけで痛い痛い。
伸びきった草木をかき分けて進む
藪漕ぎで進む
こちらは台風の被害で、歩道を分断する水の流れた跡が大きく口を開けていました。
台風の被害で道が寸断
燃えた木々は葉を一つも付けることなく立ち続け足下に届くようになった日差しにより草が繁茂しています。
どこを通っていいかわからない。
燃えた木の林はやけに明るい
伐採や運搬のために整備された作業道が張りめぐらされています。
砂利道で、周囲はしっかりとシカ防護ネット柵で囲まれていました。
張りめぐらされた作業道
火の手がまわった斜面の木々は枯れ、伐採され、見晴らしが良くなりました。
美しい景色もどこか切なく感じます。
見晴らしが良くなった
モミの原生林があったはずの場所からも太平洋が一望できました。
尾崎半島は温暖地性のこのモミと、太平洋沿岸では珍しいブナが混生している珍しい場所でした。
モミの原生林跡地
以前は暗い林の中に厳かに祀られていた奥の院。
日の光に照らされている様子は初めて見ました。
奥の院
火の手がまわらなかった先端部の自然歩道は変わらず生きています。
落ち葉を踏めるのが嬉しくなります。
先端部の自然歩道は健在
標高40~50メートルにあるブナは今でも健在でした。
たくさん実が落ちていていましたよ。哺乳類たちは食べに来ているのでしょうか。
ブナの実がたくさん
三陸の象徴ともいえる山林の中から見える青い海、守っていかなくてはなりません。
青い海を見下ろす
焼けてしまった半島ですが、その後どうなるか気になりますよね。
尾崎半島では緑の半島に戻るよう、復旧植栽が大規模に行われました。その作業には市内外のボランティアが約370人も携わったそうです。
また被災木は釜石鵜住居復興スタジアムの座席や他公共施設の床板、食器などに活用されたりもしています。
 
様々な災害がある中で、この尾崎半島の林野火災は、地域の自然をどう守ってどう活用していくか、非常に考えさせられるいい機会になりました。