ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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秋田

1036件の記事があります。

2011年03月22日それぞれに、それぞれの

秋田 足利 直哉


 3羽の【カンムリカイツブリ】がそれぞれに、それぞれの、思いでそれぞれのポーズをとっていました。左から、首を前方に伸ばして低姿勢で進むこのポーズは先日(2011/3/16の記事)お伝えしました。右に2羽写っています。手前のポーズは初めてお伝えします。首から体全体を伸ばして前に倒れるようにして水面を歩いています。この時は水中から突然現れてこのポーズで数歩進みました。奥にいるのがやはり先日(2011/3/17の記事)お伝えした羽を半開き状態にしたポーズを正面から見たものです。
 共通しているのは求愛の一行動であろうこと。私にはその意味合いは解りませんがそれぞれが、それぞれに最適なポーズを示しているものと思います。コミカルに見えますが彼らにとっては懸命な行動なんだと思います。みんな報われると良いですね!!






『それぞれに、それぞれの』





 震災から11日目。被災地では多くの方々がそれぞれの思いを胸に、懸命に生きています!!皆さんがそれぞれに思っていること、伝えたいことがあろうかと思います。
 今日は、私たちアクティブレンジャーの仲間である宮古自然保護官事務所の高屋敷ARからメッセージを預かっていますのでそれを代書させていただきます。

<はじまり>

 『みなさん、こんにちは。宮古自然保護官事務所の高屋敷です。みなさんにこうしてメッセージをおくることができ、うれしく思います。
 3月11日、大きな地震のすぐあとに、黒い波が街をのみこみました。今は現実の事として受け入れられていないのか、冷静でいられています。まるで自分の事ではないようです。
 私の生まれた街は津波にのまれ壊滅です。みんなが着の身着のまま逃げました。家を失った人達は今、避難所生活を送っています。ガソリン、灯油も不足している状況で、電気、水道も復旧しなくて大変ですが、みんなが助けあって生活しています。
 みなさんから、温かいメッセージや、物資を頂きすごく励まされています。ホントにありがとうございます。
 私は元気です。家族や友達、知り合いを失った人、不明者を探している人も沢山いるなか、私が現地で出来る事を一生懸命やろうと思います。
 誰もが経験したことのない、この大規模な災害の経験をしたことを重く受け止めています。
 少し落ち着いたらまた日記を更新したいと思います。

<おわり>


 アクティブレンジャーとして・・・気丈にもこのようなメッセージが綴られていますがきっと本音は、もっと別のものかなと思います。
 高屋敷ARも避難所生活を強いられています。不便もあるでしょう。大変なこともあるはずです。皆さんそれぞれがそれぞれに抱いている思いがあるはずです。訴えたいことがあるはずです。

 私たちも被災地へ、多くの被災者や支援している方々を後方から支援し続けなければなりません!!まだまだ伝わっていない思いがあるかも知れません。届いていない声があるかも知れません。
 私たちは今、必要なことや出来ることを実践しつつ、どうにかして、こうした思いや声をもっともっと汲み上げられないものでしょうか?

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2011年03月18日地に足付けて!

秋田 足利 直哉


 ちょっと変わった水掻きのあるこの足。こうしてじっくり観察できる距離にいるとその質感まで解ってきて新たな発見がありますね。こんなウロコ状になっているんですね。跗蹠の黄色い斑点もくっきり見えます。
 これは【オオバン】の足です。体のバランスから見ても鳥の足は大きく立派な印象を受けます。水辺の鳥ですがこうして地に足付けてしっかりと立つ姿はなかなか凛々しいんです。




『地に足付けて』




 昨日の日記でも「自分たちに出来ることがハッキリしてきた・・」と書きました。その中でもっとも手軽に、しかも確実で大きな効果があると思われるのは節電です。既に多くの方々に実施していただいていることと思います。環境省では普段から節電への意識を持って業務を遂行していますが、更にしっかりと地に足付けてより一層の節電に努めているところです。
 今日の秋田は雪が積もって冬に逆戻りしていますが暖房を入れずに過ごしています。こうした方々は随分といらっしゃるようです。体調とも相談しながら頑張っていきましょう!!
『蓮舫節電啓発等担当大臣からの節電のお願い』


 先ほど、秋田県庁に行って僅かながら支援物資を届けてきました。私個人で提供できるものには限りがありますが・・・県庁の正面玄関前には多くの支援物資が届いていました。一人一人の小さな支援も集まれば強力な力になることを証明しているようです。


 県民の皆さんが持ち込んだ支援物資の数々。


 それを県職員の方々が仕分けして箱詰めして被災地へ送る用意をしていました。
 現在多くの物資が届けられているそうですが、仕分けに割ける人員も限られているので、『物資のリスト』があると大変助かるそうです。品物(衣類であれば男性用・女性用・子供用等も明記)、サイズ、数などが解れば仕分けがやりやすそうでした。作業が効率的に行えればそれだけ速く物資を届けられますからね!!

 個人で行える支援物資の提供について調べてみました。東北6県でみるとどうやら秋田県だけが受け付けているようです。青森・岩手・宮城・山形・福島の5県は『被災地の受け入れ体勢が整わない・・』などの理由で『現在のところご遠慮させていただいております』との事です。
 ※お住まいの地域の情報はこちらから
『被災地支援に関する各都道府県ホームページ』


 でも、企業・団体からの提供は受け付けています。皆様の廻りにも支援物資を受け付けている企業・団体もあるかも知れません。確実、正確な情報収集の上、受け入れ先を探してみるのも良いかもしれません。


 今日で地震発生から1週間となります。今も救助を待つ方々がいらっしゃいます。1秒でも早く、また一人でも多くの方々の生還を心から願っています。
 そして被災地への支援は、スピード感も非常に大切ですが、持続力も必要になります。被災地では被災された方々、その支援にあたる方々共に懸命な努力を続けていらっしゃいます。更にそれを支援する為にも、しっかりと地に足付けて、出来ることを着実に行っていくことが求められています。
 

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2011年03月17日見たことのない光景

秋田 足利 直哉


 この【カンムリカイツブリ】は何をしているのでしょうか?こんな姿勢は見たことがありません。よく見ると同じポーズをしている【カンムリカイツブリ】が何羽かいます。なので彼らにとってはお決まりのポーズなのかも知れません。
 言えることは求愛行動の中の一姿勢であるということ。ここで繰り広げられている光景は見たことのないもので、これが何なのか?目が釘付けになりました。
 皆さんにはこの【カンムリカイツブリ】が何をしているように見えますか?





『見たことのない光景』




 私の中にはいくつかの大きな地震の記憶があります。日本海中部地震では学校がガタガタと大きな音を立てて長時間揺れ続けた記憶が残り・・・近いところでも様々な地震が思い浮かびます。十勝沖地震、中越地震、岩手・宮城内陸地震などなど挙げたらきりがありません。
 でも今この時ほど、多くの余震に不安を感じ、普通にしていても何だか揺れているような感覚に陥ったりといった事は記憶にありません。気象庁のホームページなどで余震の情報をみると秋田県内陸部や秋田沖を震源とする余震も何度か発生しているようです。余震に対する警戒を怠ってはいけません。
 余震の頻度や強さも被災地ではその不安を大きくさせていることと思います。今回の地震では必ずしも深刻な被害を受けていない秋田市にいてもこうですから、被災地の方々の心中を察する事が出来るのですが実際には私なんかの想像をはるかに超えた不安の中にあることと思います。


 震災、津波等の映像が繰り返し流れていましたが、とても直視できるものではありませんでした。記憶をどう辿っても見たことのない光景がテレビを通じて次々と映し出されています。それは今も続いています。この災害以外のところでも考えられないような事が起きているようです。未曾有の事態から数日たっても未だに見たことのない光景が次々とこの国の何処かで起きているのです。


 でも、希望を持てる様な光景もいくつか目にすることが出来るようになってきました。思わず涙がこぼれる様な光景も見られました。これからはこうした人の逞しさ、強さ、優しさに溢れた光景がたくさん見られることを願ってやみません。



 徐々に救援の輪が拡大し、自分たちにも出来ることがハッキリしてきました。各地で様々な形の支援が行われています。参考までに秋田県が呼びかけている取り組みを載せておきます。

秋田県の公式ホームページより

岩手県への救援物資の支援について
義援金の受付先について
ボランティアの受付について


 残念なことに一部で、不正確な情報や、ウソの情報、詐欺まがいの情報などが発信されているようです。情報は信頼できるものを収集していただきますようにお願いいたします。

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2011年03月16日何が起こるんだろう?

秋田 足利 直哉


 首を伸ばして姿勢を低くして泳ぐ【カンムリカイツブリ】。西部承水路では繁殖期を迎えた【カンムリカイツブリ】達のこんな姿勢があちらこちらで見られるはずです。
 この姿勢の【カンムリカイツブリ】を目で追うと、この後に異性とのシンクロダンスが始まったり、ライバル達を威嚇するなど何かが起こります。この時はペアとのシンクロダンスが始まっていました。




『何が起こるんだろう?』




 地震直後から秋田市内の都市機能は麻痺していました。電気、電話が使えません。携帯も繋がりにくい状態です。火災も発生していたそうです。道路の陥没、水道管の破裂などあちこちから被害が報告されていました。

 テレビでは三陸沖の太平洋地域を震源として地震が発生したと伝えています。仲間のアクティブレンジャーのうちこの地域で活動しているのは宮古自然保護官事務所の高屋敷ARと仙台視線保護官事務所の鎌田ARの2名。特に高屋敷ARの担当するのは陸中海岸国立公園ですから何処へ出かけていても海岸付近で仕事をしているのは間違いありません。事務所も海を見渡せるような場所に建っています。直ぐに携帯メールを送ると幸いにも返信があって無事を確認することが出来ました。(※鎌田ARについては自身がこの日記で当時の様子を報告しています。)

 しかしそのメールには・・『・・津波が来ました。事務所の下は、波にのまれて壊滅しました。のまれる瞬間を見て怖かったです。・・・』とありました。テレビでも各地に津波が押し寄せたことを伝えていました。太平洋岸の各地でとんでもないことが起きている事は直ぐに解りました。震源地から離れている秋田市でさえ停電しています(現在は復旧しています)。被災地でも停電しているであろう事は容易に想像できます。皆さんはこうして発せられている情報を得ることが出来ているだろうか?不安が募りました・・・。

 

 今も地震と津波の影響が各地の様々なところで同時多発的に起きています。この先も予断を許しません。被災しなかった地域でも大きな影響が出ているようです。でも起こらなくても良いのではないか?と思うような影響も出ているように感じます。今この状況を的確に捉え、冷静な判断の下に行動することが求められているように思います。



 今日もまた、的確な情報収集に役立つサイトを掲載します。


震災に関する情報が集約されている首相官邸のホームページです。
『平成23年東北太平洋沖地震への対応』

地震に関する情報はこちら。
『気象庁ホームページ/地震情報』

気象庁による『東北地方太平洋沖地震 関連資料』はこちら。
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震関連ポータルサイト

東北地方の計画停電に関する情報はこちら。
『東北電力ホームページ』

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2011年03月15日これからどうなっていくんだろう?

秋田 足利 直哉


 これは数ヶ月前から大潟村の南の池や周辺の水辺でよく見られていた光景です。
 近年【カワウ】を目にする機会が増えています。羽数の増加、生息場所の拡大などが原因だと思います。
 大潟村周辺では潟で漁をして生活の糧を得ている方々がいらっしゃいます。そうした方々からこの先、【カワウ】による漁業被害を懸念する声が上がっているそうです。私としても今後どうなっていくのか?注視していこうと思っているところです。




 『これからどうなっていくんだろう?』




 3月11日午後・・・・。
 ちょっと遅めに事務所を出て、大潟草原鳥獣保護区へ調査へ出かけ、現地で野鳥の生息調査・現行の鳥インフルエンザ警戒レベルに即した巡視等を行い、それが一段落したため、管理棟に行って来館者などの対応にあたっていました。
 突然、揺れを感じました!はじめ・・小さな揺れだったものが徐々に大きくなり、まともに立っていることが出来ません。もうすぐ終わるだろうと思っていた揺れは終わるどころか益々激しくなっていきます。窓の外では雷鳴がなり、空が暗くなってきました。大きな揺れと相まって恐怖を感じます。咄嗟にペレットストーブを消火しました。
 この大きな揺れの最中から停電。窓の外は吹雪。嫌な予感と恐怖が相まって冷静でいられない自分をどうにか抑えて、携帯のワンセグテレビで情報を得ようとしました。既に各局地震関連の報道をしていますがいずれも尋常レベルではない巨大な地震であったことを伝えています。

 直ぐに自分の身の安全を伝えようと試みましたが事務所の電話が通じません。保護官の携帯にかけても繋がりません。その後も余震は続いていました。幸い、大潟草原鳥獣保護区と管理棟には被害は無く、私も行動が可能でしたから先ずは事務所に戻ろう車を走らせました。途中、田んぼで採餌するガン達を横目に見ながら冷静になるように努めますが不安は拭えませんでした。


 停電は秋田県内全域にわたるものであったようでした。帰りの道中も信号が作動していなく、主な交差点ではちょっとしたパニック状態!どうにか事務所に帰着すると保護官も無事で事務所も被害はないようでちょっと安心しました。その後、得られる情報はとても安心できるようなものではなく、仲間の安否が気になって仕方がありませんでした・・・・・・・・


 まだまだ書いてしまいそうです・・・。長々と私事を書いてしまい失礼いたしました。


 

 今後のためにも『正確な情報』が必要です。被災地では今回の震災に関する情報も不足しているようです。皆様におかれましては是非とも正確な情報を発信・収集していただきますようお願いいたします。以下に信頼性の高い情報を発信をしているHPを掲載します。

震災に関する情報が集約されている首相官邸のホームページです。
『平成23年東北太平洋沖地震への対応』

環境省ではホームページ上で情報を発信しています。
『平成23年東北地方太平洋沖地震への対応について』

内閣府ではホームページ上で情報を発信しております。
『内閣府防災情報のページ』


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2011年03月10日ミサゴ 西部承水路を餌場に

秋田 足利 直哉

 昨日に引き続き今朝も地震がありました。余震が頻発している模様です。
 昨日から私の廻りでも地震の話題でもちきりですが、どうやらビルの中で働いている人ほど強い揺れを感じていたようです。
 私は地震発生当時、5階の事務所にいましたがやや慌ててしまいました。野外にいた人は地震とは気付いたけどそれほど大きな揺れは感じなかったそうです。
 こうした感覚の違いは今回の地震の特徴となった『長周期地震動』と呼ばれる揺れが引き起こしていたようです。




 はい。先日この日記で氷の上で魚を食べるオジロワシを紹介したばかりですが・・・寒いながらも確実にやってきている春はその氷を溶かし、水辺を復活させました。それでも朝晩冷え込んだ日にはまだまだ気温が氷点下の時もありますから日替わりで氷がはったり、溶けて水面が広がったり目まぐるしく環境が変わっています。


 そんな日が続いていますが、ある晴れた日には西部承水路の上で久しぶりに【ミサゴ】のホバリングを見ました。


 昨年は水路が氷で閉ざされる日が少なかったので【ミサゴ】の観察機会もほとんど途切れなかったのですが今期の冬は積雪と寒さで水路の表面は長く氷で閉ざされていましたから【ミサゴ】の観察も随分間隔が開いて久しぶりでした。
 昨年同時期に【ミサゴ】を取り上げた記事はこちら


 昨日一昨日2日続けて取り上げた【カンムリカイツブリ】も水面が現れて水路に棲む魚を捕ることが出来るようになったのでやって来たものと思われます。
 西部承水路は概ね水深は浅く1mに充たない場所も多いそうです。そんな場所ですから潜水して魚を捕る野鳥も、上空からダイビングしてくる野鳥も獲物となる魚を捕らえやすいのかも知れません。
 潜水して魚を捕らえる野鳥にとって、西部承水路を見渡しても彼らの潜水能力の限界を超える深さの場所はないのではないでしょうか?
 【ミサゴ】にとっても上空から獲物を見つけてダイブしても深く逃げ込まれて獲物を逃す心配は他の場所に比べて少ないので、絶好の餌場なのかも知れません。

 昨シーズンは西部承水路で魚を捕らえてそれを運んで飛んでいく【ミサゴ】をよく見かけました。水路の西側に位置する男鹿市ではいくつかの【ミサゴ】の営巣地も確認できています。


 今期も西部承水路は漁場として【ミサゴ】命を繋ぎ、新しい【ミサゴ】の命を育んでいくことになるでしょう。


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2011年03月09日カンムリカイツブリ 非繁殖羽で求愛

秋田 足利 直哉

 今日昼前、事務所の入っているビルが激しく揺れました。こういう時の時間って長く感じられるものですが地震の揺れも随分と長く続いた気がします。その後の余震も続いて・・・ずっと体が揺れてる感覚。なんだか気分が悪いくらいです。




 はい。
 ちょっとやりにくいですが・・・昨日の日記で【カンムリカイツブリ】を取り上げて、既に繁殖羽に換羽していてペアで過ごしているものもいることを報告して繁殖に向けた観察を積み重ねていきたいと言いましたが、早速今日その「・・・」を埋めるかも知れない観察からお伝えしようかと思います。


 おおよそ、野鳥達の羽衣が非繁殖羽から鮮やかな繁殖羽に換羽して準備が整い、オス♂がその鮮やかな外見と鳴き声やダンスなど様々な方法でアピールして、メス♀がそれを受け入れるとペアが成立して・・・といった流れで繁殖が行われていくのだと思いますが、先日観察した【カンムリカイツブリ】はその流れを無視(??)していました。引き続きご覧下さい。



 



 この前に色々と見応えのあるシーンがあったのですが・・・2羽の【カンムリカイツブリ】がいつもの体勢とは明らかに異なる体勢で接近していきました。
 昨年もこの様な場面を観察できていたので直ぐにピンと来ました!!これは【カンムリカイツブリ】の求愛ダンスです。


 2羽の【カンムリカイツブリ】が至近距離で、向かい合って、顔の廻りにある装飾羽を目一杯に広げて、首を振り、嘴を空高く掲げ熱烈な求愛ダンスを繰り広げます。私が見ていても、廻りに他の野鳥がいても、他の【カンムリカイツブリ】がいても彼らにはお互い以外は目に入っていないかのようです。


 ちょっと時期が早いような気もしますが・・・此処まで書いた感じでは今年も此処で【カンムリカイツブリ】達が繁殖をするという喜びもありほんわかした気持ちになる観察なんですが・・・・タイトルにもあるように向かって右の個体の羽衣がいわゆる冬羽と言われる「非繁殖羽」のままなんです。


 ここでいくつかの疑問が生まれます。
①非繁殖羽の個体はオス♂なのか?メス♀なのか?
>一般的な見地から、より体の大きな個体がオス♂だとすると非繁殖羽の個体の方がやや大きいように見えます。でも小柄なオス♂と大柄なメス♀のペアであればサイズが逆転している可能性もあります。
②【カンムリカイツブリ】は繁殖羽への換羽をもって繁殖行動が引き起こされるのではないのか?
>非繁殖羽個体がオス♂かメス♀かで少々答えが変わってきそうですが。オス♂であるならば、求愛するには必ずしも繁殖羽でのアピールを必要としない事になりますし、メス♀であるならば求愛される側は羽衣がどうであれ対象となりうる事になります。
③【カンムリカイツブリ】がパートナーを選ぶ条件に羽衣の鮮やかさは含まれないのか?
>この観察を見る限り、少なくとも必須条件ではなさそうです。

 この他にも不思議に思えることがありますが、目の前で繰り広げられている光景こそが真実です。


 ちなみに、非繁殖羽の個体も求愛アピールはしています。


 その証拠に・・・顔の周囲の羽を目一杯に広げてアピールしています。私的には、繁殖羽に比べて見劣りすると思いますがこのペアにとってはそんな見た目はどうでも良いことなのかもしれません。



 出来ることなら、この【カンムリカイツブリ】のペアに『お互いの何処に惹かれましたか?』という質問をしてみたい^^。果たしてどんな答えが返ってくるのでしょうか??



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2011年03月08日カンムリカイツブリ 繁殖羽へ

秋田 足利 直哉

 今、事務所の窓には暖かな日差しが照りつけています。1時間ほど前には吹雪で近くの秋田市役所が見えないほどでした。今日の秋田市内は天気が急激に変わる不安定な一日です。
 これから春に向けて三寒四温を繰り返すのでしょうね。体調管理には気をつけていきましょう。



 はい。そんな季節の変わり目、野鳥達の姿にも季節のそれをを感じることが出来ます。
 

 西部承水路では全面に厚くはられていた氷がとけていつもの水辺が広がり景色が一変しています。そんな状況を待ちわびていたかのように多くの水鳥達が戻ってきました。
 あちらこちらでカモの群れが観られ、サギたちの姿も増えてきたように感じます。そんな中、一際存在感を放っているのが【カンムリカイツブリ】です。
 

 先日見た【カンムリカイツブリ】は既に繁殖羽に換羽していました。(細かく見るとまだ換羽の途中の個体が多いのかも知れませんけど。)彼らにとってはもう冬は終了したんでしょうね。


 この様な状態を『夏羽』と表現したりもしますが、いくらなんでも季節の先取りしすぎでしょう(笑)?彼らはこれから此処でパートナーを見つけて繁殖活動を始めるであろうと思われます。なのでこの状態は『繁殖羽』と言った方がより相応しいと思います。


 繁殖にはパートナーが不可欠ですが、この個体は既に見つけているようで、2羽で仲良く行動している様子が観察できました。


 西部承水路に【カンムリカイツブリ】が戻ってきてから未だ日が浅いはずですが何時の間にカップルが成立していたのでしょうか?カモたちのように越冬先でパートナーを見つけて繁殖地である西部承水路に一緒にやって来たのでしょうか?


 いずれにしろ、今期もこの西部承水路で【カンムリカイツブリ】の繁殖が行われそうです。今後の観察が楽しみになってきました。【カンムリカイツブリ】は見た目も可愛らしいですが、その行動も観察のしがいがありますからね~^^




 ちなみにこの日、観察できた20羽の【カンムリカイツブリ】の内、繁殖羽に換羽している個体が10羽、非繁殖羽状態の個体が10羽と完全に半々でした。近くの河口で過ごしていた【カンムリカイツブリ】の中には2月20日過ぎには繁殖羽に換羽している個体がいました。
 それらを合わせると、【カンムリカイツブリ】は越冬中の2月下旬頃から換羽が始まり、3月上旬には繁殖地へと移動して・・・と言うことが解りました。勿論時間の幅がありますから一概には言えませんが今後も観察を続けて「・・・」の部分を埋めていけたらと思っています。

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2011年03月07日目印は折損

秋田 足利 直哉

 豊富な知見をお持ちの釧路自然環境事務所の方より『写真、確かにオジロワシですので、・・・オオワシではもっと黒っぽく見えます。』とご指摘を頂きまして【オオワシ】としていたものを【オジロワシ】に修正しています。入念なチェックをしたつもりでしたが、私の不勉強により不正確な情報を発してしまいましたことをお詫び申し上げます。


 今日は大潟でフキノトウを見ました。この先の天気予報が雪だったり、寒の戻りがあったりとまだまだ「冬」だと思っていましたが、暦の上では昨日、啓蟄でしたし、確実に「春」がやって来ているようです。




 はい。「春」は”別れ”と”出会い”の季節。それは自然界でも一緒!今、大潟を賑わしている冬の野鳥達は徐々に北へと旅立っていっています。少しずつ”別れ”が積み重なっていきます。

 今日取り上げる【オジロワシ】もそんな野鳥のうちの一羽です。既に確認できなくなって久しいので既に何処か北の地で過ごしているかも知れません。もう知らないうちにお別れしてしまったのかな~。


 先日、この日記で「予期せぬ鳥」として取り上げた【オジロワシ】の幼鳥です。今でも氷の上で大きな魚を食べる光景が瞼の裏に焼き付いています。


 その【オジロワシ】の幼鳥には個体識別できる特長があります。「風切羽の折損箇所」です。


 羽の折損箇所によって個体識別をする方法は現在、各種調査でも用いられている方法だそうです。そこでこの【オジロワシ】幼鳥でも風切羽の折損部分を明らかにして、もしかしたら他の観察者によって観察・記録されて移動経路が解ったりしたら嬉しいな~と思ったので取り上げてみました。


 翼を広げてカラスたちの執拗な嫌がらせ(?)に抵抗したときの画像です。向かって右の(オジロワシの左)翼は初列風切りの外側から6番目の羽の先端が無くなっています。そして向かって左の(オジロワシの右)翼の初列風切りの一番外側の羽が千切れて短くなっています。

 これと同じ特長が下の写真でも見られます。上の写真が2月下旬の撮影。下の写真が2月上旬に撮影した写真です。


 私が大潟でこの【オジロワシ】幼鳥を初めて確認したのは2月2日でした。以来度々観察できていて最後に観察したのは2月28日でした。
 私の観察だけでもおよそ1ヶ月間大潟で過ごしていたことが解ります。もしかしたらそれ以前、あるいはそれ以降にも、どなたか観察している人がいるかも知れません。また既に北海道など北の地域へ移動しているのかも知れません。
 もしこれと同じような折損箇所がある【オジロワシ】の幼鳥を観察したら、その個体は私が見た個体である可能性が極めて高いと思われます。



 もし、この様な【オジロワシ】幼鳥を観察された方がいらっしゃいましたら、ご面倒でも秋田自然保護官事務所(018-867-8588)までご連絡いただけませんか?私もこの【オジロワシ】が何処に行っているのか気になりますし、あなたが見ている【オジロワシ】が秋田の大潟村で過ごしていた個体だと解ったらなんかちょっと嬉しくないですか?



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2011年03月04日田んぼだけじゃない

秋田 足利 直哉

 2日、秋田から離れていく車中、どんどん春めいていく景色を楽しみながら目的地へと向い・・・3日、今度は一気に真冬に逆戻りしたような秋田に戻ってきました。この「寒の戻り」はあまりにも激しく、寒さが応えます。



 はい。ということで3日ぶりの日記です。
 どうやら宮城県内でのガンの越冬は、ほぼ終了のようです。ガンの本隊は今、秋田県内にいます。大潟村やその周辺では広範囲に分散しているにも関わらず見応え充分な規模の群れがあちらこちらで見られています。宮城県などで越冬していた【マガン】達も新潟県などで越冬していた【ヒシクイ】達も一緒になって過ごしているのです。1年のうち僅か数週間だけの超贅沢な光景です。

 今日はガン達が過ごしている環境のうち、「田んぼ」以外で過ごしている群れにスポットを当ててみました。


 先ずは『牧草地』です。直線で1㎞を越える道路の先には大きなガンの群れが観られます。主体は【ヒシクイ】で中でも【亜種オオヒシクイ】が多いようです。
 周りの冬枯れの光景の中にあってこの牧草地は緑が見られ、それが残雪と青ぞたと相まってガン達の姿を浮かび上がらせ、何とも言えない美しさです。と言いながら写真はコンデジでのモノなので少々解りづらいかも知れませんが・・



 もう一つは『大豆畑』です。どういう事情かは分かりませんがこの大豆畑は刈り取られずに残ったままで今期の積雪にも負けず茎が立ったままになっています。その中に【マガン】の群れがいました。
 伏せたまま過ごしている個体が多かったので気付くのが遅れて接近してしまいました。ここで【マガン】達が採餌をしていたのか?休憩をしていたのか?見ることが出来ませんでした。
 でもどうにか・・・警戒を解いてくれるまで待とうかと思ったのですが・・・


 やっぱり距離が近すぎたようです。撮影したのも良くなかったのかも知れません・・・。



 この他にも承水路で過ごす【ヒシクイ】等も見られます。
 水面や氷上の塒から餌を食べるために出かけていく先は田んぼだけに限ったことではありません。青い牧草を食む為に牧草地へ行き、畑の作物の取りこぼし(?)を食べるために畑へ行き、水辺の植物を食べるために水路に残ったり移動したりする群れがいるようです。


 ただし!!今日紹介した牧草地と畑で過ごすガン達の観察には注意が必要です。田んぼよりも見通しの利く平坦な牧草地では遙か遠くにいても私たちの存在に気付くと警戒します。1枚目の写真のように【マガン】なのか?【ヒシクイ】なのか?確かめるのも厳しい距離でも警戒されています。もしかしたらガンであることすら気がつかない方もあるかも知れません。逆に作物の茎の残っている畑ではブラインド効果が高くて離れた場所からはガンの存在を認識できないまま接近してしまいがちです(←私がそうでした・・)。

 此処にいるガン達は間もなく海を渡って北海道などへと移動していきます。今はその為に体力をつけなければなりません!!食事の邪魔は彼らの命を脅かすことにも繋がります。それを踏まえて・・観察する場合には温かいご配慮をお願いいたします。

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