ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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白神山地

202件の記事があります。

2013年08月14日夏の自然体験会「川ガキ集まれ!」

白神山地 野原七恵

8月1日に白神山地世界遺産センター藤里館で毎年恒例になりました、藤琴川に親しむ子どもたちの集い「川ガキ集まれ!」を開催しました。

地元藤里町の子や、藤里町との交流事業で来ている埼玉県川口市の子たちが参加してくれました。
また、今年は白神山地が遺産登録20年ということもあり、秋田県の各地からの参加のほか、帰省を利用して遠く大阪から参加してくれた子もいました。

当日はあいにくの天気で、朝からパラパラと雨が降ったり止んだりしていましたが、せっかくなら生き物観察くらいさせてあげたい!という思いで開催しました。

開会式では齋藤自然アドバイザーからのお話がありました。



川に入るときに注意事項のほか、藤琴川は白神山地を源流とし、アユや多くの生き物が住んでおり、白神山地の恵みをたくさんいただいているという話を聞きました。

みんなで体操をしてから遺産センターの目の前にある藤琴川へ移動。
まずは、小さい用水路でアユのつかみ取り体験をしました。



なかなか難しいようで数人で協力して追い込んでいました。
捕まえることができた子は大喜びで、他の子たちにコツを教えてあげていました。
捕まえたアユは塩焼きにしてもらい、昼食と一緒に美味しくいただきました!

その後、藤琴川の水量の少ない場所へ移動し、生き物観察を行いました。



お父さんたちも一緒に川に入り、捕まえた生き物の名前を教えてくれたりしていました。
けっこう冷たい水でしたが、子どもたちは元気で水に入ったり、石をひっくり返して川虫を探したりしていました。

皆で頑張った結果、トビゲラやヤゴといった昆虫、ヤマメやカジカといった魚、カジカガエルなど多くの種類の生き物を観察することができました。
一緒の水槽に入れていたため、ヤゴがオタマジャクシや他の川虫を食べようとしていたのは、小さい子どもたちには少し衝撃的なようでした。

観察会を通して、実際にこのような多くの生き物たちが生息している川を体験したことで、白神山地からくる川の豊かさや、生き物同士の繋がりを感じてもらえたのではないでしょうか。
参加してくれた子どもや、一緒に生き物観察をしてくださったお父さんお母さんたちも楽しんでくれたようでした。
「ぜひ、また来年も参加したい!」という声をいただき、私たちもとても嬉しかったです。

夏の観察会は終わってしまいましたが、藤里館では現在、「アクティブ・レンジャー写真展“いきもの”」を開催中です。
今年度は、写真展と一緒に「白神山地世界遺産20周年パネル展」も開催しています!
白神山地の概要やお勧めスポットのパネル、白神山地の生き物たちや景色を紹介しています。
写真やパネルを通して白神山地のことを知っていただければと思っています。
夏休みを利用して、白神山地にいらっしゃる際には、ぜひお立ち寄りください。

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2013年04月25日ミニ白神、ブナ林の巡視

白神山地 谷口 哲郎

サクラの開花が待ち遠しい今日この頃の津軽地方です。
さて、今回は白神山地の北側に位置する鰺ヶ沢町の「ミニ白神」に巡視に出向きました。
ミニ白神HP:” http://www.town.ajigasawa.lg.jp/page/shisetu/minishirakami/index.html

「ミニ白神」は、鰺ヶ沢駅から車で30分ほど離れた黒森地区にあり、ブナ林は、もとは藩政時代の水源かん養保安林として、田んぼの水を確保するために禁伐林として地元の人々に大切に守られてきました。明治以降土地は国、生えている木は地域住民が管理という「官地民木」の全国的にも珍しい形態で今日まで保護されてきました。
 現在においても、およそ52haのブナ林は人の手が加えられておらず、樹齢200年を超えるブナも見受けられ、白神山地核心地域同様の森林景観を保っています。 (HPより一部引用)

今回は、4月20日に山開きが行われたばかりの「ミニ白神」の情報をお知らせします。


ミニ白神のブナ林 photo 2013.4.23
ミニ白神も山開きこそしましたが、まだまだ雪深い状況です。もっとも深いところで2m程度あるそうですが、着実に春を迎えていました。今回は野原アクティブレンジャーがイベントで使用する写真を撮影するために、白神山地で多く見られる「ウダイカンバ」という樹木を探しながらミニ白神の外回りコースを歩きました。外回りコースは、雪が無い時期には1周1時間半~2時間で回れる散策コースで、ブナやサワグルミ、ミズナラの巨木の森を歩くことがきます。


左:ブナ巨木の森、中:春が訪れた根開き、右:根開きの中の妖精 photo 2013.4.23
根開きしたところを注意深く観察していると、小さな植物が花をつけていました。スプリング・エフェメラルの代表種キクザキイチゲです。落葉広葉樹の森では、地表面に日光が直接差し込む時期は、新緑前の短い期間です。雪解けが進み、いち早く地表面が現れるブナの根元では、一足早く春が訪れます。


左上:イタヤカエデの芽吹き、左下:雪解け水の中のミズバショウ、右上・右下:ホオの芽吹き photo 2013.4.23
また、ブナ林内では様々な変化が見られました。
1週間前までは、冬芽の中でじっと耐えていた小さな葉が、芽鱗を押し広げながら外の世界に出てきていました。皆さん、芽吹いたばかりの葉が赤いことをご存じでしたか?ちょっと意外に感じませんか?
ちょっとした窪地には、周りの斜面から雪解けによる流水がたまり、サトイモの仲間でおなじみのミズバショウが、白い帆を広げているように見えました。ミズバショウの白い部分は仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれ、一見花のように見えますが、仏炎苞は葉が変形したもので、中央にある黄色い円柱状の部分が花序(かじょ)と呼ばれ、多数の小さな花の集まりになります。


小高い丘から見たミニ白神のブナ林 photo 2013.4.23
巡視の際、注意深くあたりを見回し、時には細かく観察し、調べることもあります。
今回の巡視では、ブナ林の中の植物だけで無く、動物の足跡や採餌の跡、鳴き声、野鳥のさえずりなど多くの野生動物が活動し始めたことを把握することができました。ミニ白神周辺でも、ツキノワグマの活動が報告されています。
本格的な春の訪れも、そう遠くないようです。

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2013年04月15日春の訪れ~暗門ブナ林の今~

白神山地 谷口 哲郎

皆さんの周りには「春」はやってきていますか?
春を実感する「瞬間」はどのようなタイミングですか?
白神山地がある津軽地方は、日本でも有数の豪雪地帯です。
今年度、西目屋村内でも2mを超える積雪がふり、至る所で被害を出しました。
4月に入り、雪は気温や降雨により解け、西目屋村にも春が訪れています。
雪に関する話は、日常の話題の中でも頻繁に上がり、
津軽地方の人にとって、雪解け時期の話はとても明るい話題だそうです。

私達にとっても、この雪解けの季節は大変興味深い時期です。
先日、白神山地の玄関口の一つである西目屋村の暗門の滝入り口周辺まで、巡視に出向きましたので、雪解け時期に移ろうブナ林の模様をお伝えします。

○雪の状況
里では、雪解けが進んでいますが、まだまだ2m近くの積雪があり、雪深さを実感しました。雪は締まっていたため、スノーシューが無くても歩ける程度で、巡視には最適のコンディションでした。普段見えている沢の多くはまだ雪に覆われ、全容は見えませんでしたが、一部見えている箇所では、雪解けの水が沢を下って、暗門川に流れていました。水量も多く普段より白く濁り、水温も低い状況でした。


左:雪解けのブナ林 右:まだ雪の多い沢筋 photo 2013.4.12

○冬芽の「芽吹き」と、「1番」
雪の上を歩くと色々な物が目にとまります。その中でも目につくのは、樹木の冬芽ではないでしょうか?木の種類によって様々な形をしている冬芽ですが、雪解けのこの時期には、色々な木々の冬芽が、「待っていました。」と言わんばかりに、芽を膨らませています。


左上:ブナ冬芽 右上: チドリノキの冬芽 左下:ウワミズザクラの冬芽 右下:マンサクの花部 photo 2013.4.12

植物の種類によっては、葉より先に花の芽を膨らませるものもいます。
下の写真は、ブナの花芽ですが、葉の芽より丸みを帯びています。
また、先端部から、雌花と雄花が今にでも飛び出してきそうな感じです。
この状態を「萌芽」といい。新しい葉や花の芽吹きをいいます。
ブナ林の中でも「萌芽」の「1番」を争うように、ブナやマンサク、ウワミズザクラが競っています。


ブナの花芽 photo 2013.4.12

○この時期のブナ林の楽しみ方
雪解けのこの時期のブナ林は大変にぎやかです。冬に南の方に旅立っていた野鳥が、雪解けの白神に戻って来ます。特に雄が、求愛や縄張りを示すためにおこなう「さえずり」の練習をしています。また、樹木の葉が茂っていないので、比較的簡単に野鳥を観察することもできます。静かに耳を澄まして、しばらく声の聞こえる方を眺めていてください。枝と枝の間を飛び回る鳥達が見えるはずです。そして鳥達が、何をしているかじっくり観察することができます。


ゴジュウカラ(?) photo 2013.4.12

雪解け時期のブナ林は一日として同じ風景がなく、日々変わり続けています。1日ブナ林にいても「春探し」で楽しめます。もうしばらく暗門への道路は閉鎖されていますが、身近な場所で春を感じて頂き、家族や友達で「春の喜び」を共有してみては如何でしょうか?

※岩崎西目屋弘前線(西目屋村川原平~西目屋村暗門) 4月25日(木)午前9時開通(予定)

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2013年04月02日十二湖山開き

白神山地 野原七恵

4月に入って西目屋村も春らしくなってきたように感じます。
窓の外にはまだ雪が見えますが、世界遺産センター周辺の雪壁もだいぶ低くなってきました。

4月1日には十二湖の道路の冬期閉鎖が解除されました。
十二湖は日本海沿いの深浦町にあるため、比較的雪も少ない場所です。
そのため、冬期閉鎖も12月1日からと他の場所より遅く、解除も4月1日と早いため、白神山地周辺の中では長い期間入ることのできる場所になります。

3月26日に巡視に行ってきたので、そのときの様子を紹介します。



11月の日記で紅葉の様子を紹介した十二湖の鶏頭場の池です。
まだ池の半分は凍っていて奥に見える崩山も雪をかぶっていました。

秋の様子はこちらの日記をご覧ください。
http://c-tohoku.env.go.jp/blog/2012/11/1690.html




十二湖の青池の近くの「ブナ自然林」です。
まだ雪はありますが、ブナの根元近くから徐々に雪が溶けてきていました。
広葉樹は今の時期は葉が無いため、木の枝についた常緑のヤドリギの緑の葉っぱが目立って見えました。

ヤドリギは鳥によって種が運ばれ、他の木に寄生する植物です。
雪の上にも鳥たちの食べカスなのか所々に枝や実が落ちていました。



この写真ではあまり青くないですが、十二湖の中で最も有名な青池です。
まだまだ冬らしい曇った空だったため、濃い紺色をしていました。
徐々に日差しが入るようになれば鮮やかな青色が楽しめるようになります。

十二湖周辺では春になると様々な花が咲くのでこれからの季節に散策してみるのもオススメです。
4月も中頃を過ぎるとカタクリの群生を見ることができ、とてもキレイですので、ぜひお越しください。

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2013年03月08日冬の雪山。生き物はどうして冬を過ごす?―西目屋小4年生総合学習―

白神山地 谷口 哲郎

西目屋小では、2009年より4学年の総合学習において、白神山地についての学習に取り組んでいます。私たち遺産センターの職員は講師として、日頃から白神山地の自然を通して得られた知識や経験を活かして、学習に協力しています。前回は10月に岩木川の源流の大川をリバートレッキングし、遺産地域との境界線まで歩きました。今回は、人里から少し離れた深山にスノートレッキングに出かけ、冬のいきものの過ごし方を学びました。今回は、その際の模様をお伝えします。

●「スノーシューの装着」
スノーシューは、別名「西洋かんじき」と呼ばれ、特に新雪の上を歩くのに適した道具です。スノーシュー初体験の子も多いため、先生・スタッフに教わりながら装着していきます。装着後は、ストックをもって雪山に出発です。


スノートレッキングに出発 photo 2013.2.26

当日は、非常に天気も良く、3℃近くまで気温が上がりました。東京や西日本の皆さんからすれば、3℃なんて寒いと思われるかも知れませんが、西目屋村周辺ではこの時期氷点下が普通なので、この日は本当に活動に適した日でした。


●「白神にたくさんの雪がふるのは?」「白神の森と町のつながり」
 今回の活動場所は、西目屋村の川原平地区にある広泰寺とその周辺にある弘大白神自然観察園を歩きました。まず、最初に授業をするための机といすを協力して作りました。1人の男の子がスコップで雪のブロックを掘り出し、もう一人がブロックを外に出し椅子を作ります。とても慣れた姿にさすが「雪国育ち」と声を掛けたくなります。


雪の教室での授業風景 photo 2013.2.26

今回のテーマの一つに「雪」を挙げていました。「なぜ、白神にたくさんの雪が降るの?」「雪はよいもの?わるいもの?」「白神と街のつながり」一見ばらばらのキーワードですが、全て雪が関わっています。少し難しいお話でしたが、子どもたちは、質問や感想が口々に出ており、頭のなかにいろいろ思いを巡らせていたようでした。

●本日のメインテーマ「冬のいきものの過ごし方!」
人間は冬になると、厚手の服を身につけ、ストーブで部屋を暖かくし、冬を過ごします。さて「山のいきものは、どうやって冬を過ごしているのでしょう?」子ども達には「動物班」と「植物班」にわかれて、雪山のいきものの痕跡や春を迎える準備について調べました。


自然観察を通して、いきものの冬の過ごし方を考える photo 2013.2.26

今回のフィールド調査では、ウサギやリスの足跡、サルの食痕、キツツキの仲間が木をつついた跡、ミズナラやカエデ、クリ、ホオノキなどの冬芽を見ることが出来ました。動物班の子ども達は、一生懸命に足跡を追って、生き物の生活を考えていました。一方植物班は、樹皮に付着したコケ類を素手で触り、何もないところより暖かい事や、冬芽の中にもう小さな葉がある事を発見しました。


いろんな発見の連続で楽しいスノートレッキング photo 2013.2.26

普段歩けないところも、スノーシューと雪のおかげでゆっくり観察することが出来ました。天候に恵まれた一日で、子ども達もいろいろな体験が出来たようです。このあと子ども達は、夏と今回の体験をまとめたポスターを作成します。どんな風にまとめられるか楽しみです。

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2013年02月22日白神山地世界自然遺産は20歳!―遺産登録20周年。―

白神山地 谷口 哲郎

先日、雪が舞う中、遺産登録20周年を記念した「白神山地世界遺産登録20周年キックオフフォーラム」と白神山地のエコツーリズムの発展を狙った「環白神地域フォーラム~暮らしとつながり・活用を考える~」が弘前市において開催されました。今回は、その際の模様を報告させていただきます。

●「環白神地域フォーラム~暮らしとつながり・活用を考える~」ついて
環白神地域フォーラムは、白神山地に隣接する西目屋村・鰺ヶ沢町・深浦町・藤里町・八峰町、さらに連携市町村である弘前市・能代市・三種町を含めた計8市町村からなる環白神エコツーリズム推進協議会が主体となり、平成22年度から毎年、会場を青森県・秋田県で交互に移しながら、開催しています。


環白神地域フォーラム photo 2013.2.16

今回は、協議会を構成する市町村で白神山地と関わりのある活動をされている団体代表や個人の方が、活動報告や今後の展望について発表されました。ガイドグループや宿泊事業者、ボランティア団体、食品製造業など普段から白神山地を意識されながらお仕事をされている多業種の方が、白神への思いや期待、今後の取り組みについて述べられました。
特に山側の地域と海側の地域での意識の違いや、豆腐作りを通した白神の恵みを伝える活動などが取り上げられ、地域間で良い刺激になったかと思われます。

●「白神山地世界遺産登録20周年キックオフフォーラム」ついて
 皆さん。白神山地と屋久島が世界自然遺産に登録されたのが何年かご存じですか?
今から20年前の1993年12月、第17回世界遺産委員会(コロンビア)において白神山地と屋久島が、世界遺産地域一覧表に登録されることが正式決定されました。今年は、遺産登録20周年にあたり、白神山地と屋久島では、様々なイベントが催される予定です。
白神山地においても様々な取り組みが予定されていますが、今回は、青森県側のイベントに先駆けてキックオフフォーラムを開催されました。


白神山地世界遺産登録20周年キックオフフォーラム photo 2013.2.16

開会の挨拶として青森県副知事が挨拶されたあと、学識経験者によるパネルディスカッションが行われました。パネラーとして、国際自然保護連合日本委員会の吉田正人会長、白神マタギ舎ガイドの牧田肇弘前大学名誉教授、弘前大学白神自然環境研究所の佐々木長市所長が参加されました。吉田会長は、ユネスコが認められた白神山地の価値について振り返られ、ユネスコエコパークなど新たな試みが提案されました。牧田名誉教授からは調査やガイドとして白神山地に携われた経験をもとに、白神の山文化や持続可能な暮らしについてお話いただきました。佐々木所長からは白神自然環境研究所の取り組みの紹介や今後の展望について話されました。パネルディスカッションを通して、白神の価値を再認識することができ、ユネスコエコパークや移行帯の設置という建設的な議論に向かうことができ、これから10年後の白神山地の姿が明るいものになりそうだと感じました。

最後に特別講演として、登山家の野口健さんから、白神との出会いやヒマラヤになくて白神にあるものについて、マタギの知恵や文化的な利用と保護規制のあり方など、海外での体験も踏まえたユーモラスに富んだ話を伺うことができました。


特別講演:野口健「世界から見た白神山地の価値と魅力」 photo 2013.2.16

今回の2つのフォーラムをはじめとして、青森・秋田にまたがる白神山地の魅力を知ってもらう白神山地20周年の記念イベントが始まります。この機会に白神山地の価値や魅力を知ってもらえたら幸いです。

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2013年02月15日雪の白神山地-大沢林道と白神自然観察園-

白神山地 谷口 哲郎

昔から津軽地方では、旧暦の1月1日(2013年2月10日)をすぎれば雪も落ち着くと言われています。
今日は、再来週に西目屋小の子ども達と雪山体験に出向くので、その為の下見もかねて、久しぶりに西目屋村の大沢林道と白神自然観察園を訪れました。
前述しましたが、旧暦の1月1日(旧正月)をすぎると気候が安定し、野外での活動がしやすくなります。しかし、まだまだ現地では2m程の積雪があります。

大沢林道の風景(上:大沢林道 下:ミズナラ林) photo 2013.2.13
こちらは大沢林道の今です。私たちが歩く前にスノーシューとスキーで歩かれている方もいらっしゃるようでしたが、あたりは雪に閉ざされた世界でした。周りのクリやサワグルミ、ミズナラの木には、葉っぱではなく、雪が帯状に積もっていました。

白神自然観察園の風景(上:杉の参道 下:白神自然観察園) photo 2013.2.13
大林道の隣にある杉林の中を抜けると、弘前大学の白神研究の前線基地である白神自然観察園があります。こちらもまだまだ雪の中ですね。さてこちらも私たちが歩く前に、お客さんがいらっしゃっていたようです。

白神自然観察園の周りで見られたフィールドサイン(図鑑で調べてみてください。) photo 2013.2.13
さて、みなさんは、写真の痕跡が「だれ」のものだかわかりますか?雪山は、春や夏と比べて、寒かったり、冷たかったりと自然体験をする上で非常に注意する必要があります。しかし、雪があることで普段見ることが出来ない動物たちの生活を垣間見ることが出来ます。私たちも巡視の際には、このようなフィールドサインを探しながら歩いています。
今度の西目屋小の子ども達とも、野生動物のフィールドサインを探しながら、雪山での活動を行う予定です。

間隙をついて見えた青空 photo 2013.2.13

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2013年02月14日白神山地巡視員会議と管理計画説明会

白神山地 野原七恵

2月2日(土)に秋田県で、2月3日(日)に青森県で白神山地世界遺産地域巡視員会議が行われました。
巡視員会議は年に2回行われており、今回はそれぞれ白神山地の入り口となる藤里町と西目屋村で開催されました。



白神山地世界遺産地域の巡視活動は、白神の山に詳しい地域の方々を中心に行われており、違法な行為や自然の状態を日々パトロールしています。
巡視員会議は、白神山地の巡視員と、地域連絡会議(白神山地に関わる関係省庁や自治体によって構成)の参加メンバーで行います。
今回は、平成24年度のシーズンの巡視状況とその結果などについて情報共有しました。

環境省からは、事業報告や入山者数のモニタリング調査の結果などをお伝えしました。
入山者数調査の結果については世界遺産センターのHPでも公開しています。
http://c-tohoku.env.go.jp/nature/shirakami/topics/20130130a.html


また、午後には「白神山地世界遺産地域管理計画」の改定内容についての説明会を行いました。
昨年の1月に行った地域意見交換会や、科学委員会での検討を踏まえて管理計画(案)が作成されたため、改定の内容や先月から始まったパブリックコメント(意見公募)の手続きについて説明しました。

(昨年の意見交換会については谷口ARが紹介している日記をご覧ください)
http://c-tohoku.env.go.jp/blog/2012/02/1595.html



地域連絡会議のメンバーが前に出て、事務局の環境省よりスライドや資料を使って説明しました。
多くの巡視員さんやガイドさんなどの白神山地に関係している方や、地元の方が聞きにきてくれました。



質疑応答では様々な質問があり、多くの方が白神山地を保全していくための管理計画に関心を持っていてくれていることが分かりました。

管理計画の改定内容についてはHPでも紹介しており、広く意見を公募しています。
意見は2月25日まで募集していますので、関心のある方はこちらをご覧下さい。
http://c-tohoku.env.go.jp/to_2013/0125a.html

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2012年12月21日冬の白神山地巡視【暗門】

白神山地 野原七恵

12月19日に暗門まで巡視に行ってきました。
私にとっては2度目の冬の白神山地ですが、雪が積もってからの暗門に行ったのは今回が初めてです。

暗門へのアクセスする県道は11月末で閉鎖となり、除雪がされていないということもありますが、雪崩がとても多い場所でもあり、なかなか行くことができません。
12月頭の爆弾低気圧によるどか雪以降は、雪が落ち着いていたことや、暗門まで一度除雪がはいったこともあり、今回は巡視に行くことができました。

今回は途中の除雪がされている所まで車で入り、残りはラッセルして向かいました。


白神ライン(県道28号線)の橋の上から見た大川です。
普段は車で素通りしてしまう所ですが、歩いてみるとなかなか素敵な景色が楽しめました。

今回の目的地の暗門まで2時間くらいかけてたどり着き、緩衝地域の境界に設置している標柱で積雪を見てみると1mくらいありました。
ここからはスノーシューやカンジキを履き、暗門の滝歩道・ブナ林散策歩道の入り口にある水場で湧き水を飲んでから引き返しました。


左の11月22日の白神ライン閉鎖直前の写真と比較してみると、【入口】の文字の辺りまで雪が積もっているのがよく分かりました。
この標柱は、白神ラインが開通しているシーズンにはチェーンソーアートの(実物よりでっかい)クマゲラさんに留まってもらっています。

道中ではニホンザルにも出合いました。
白神ラインを車で走っていてもたまに群れを見かけますが、近寄るとエンジン音ですぐに逃げられてしまいます。
歩いているとそこまで警戒もされず近くで観察することもできました。


まだ若い(4~5歳くらい)オスの離れザルでした。
残念ながら写真を撮ろうとするとそっぽを向かれてしまい、横顔の写真になってしまいました。

雪が積もっていると普段は会えない動物たちの足跡などの発見もあり、とても面白いです。
なかなか冬の白神山地には入れないですが、今シーズンは冬場も巡視に力を入れて雪の時期の白神山地も紹介していけたらと考えています。

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2012年12月11日考えてみよう!私たちの白神山地-西目屋中学校総合学習-

白神山地 谷口 哲郎

西目屋中学校は、白神山地の青森県側の玄関口の1つである西目屋村にある全校生徒約30名の中学校です。この西目屋中学校では、1年生の総合学習の時間を利用し、「白神学習」と称した年間複数回の白神山地に関わる授業に取り組んでいます。遺産センターでは3年前からこの授業に協力しており、今回は90分の授業時間をいただき、ワークショップを行いました。生徒がもつ「白神山地のイメージ」を書き出し、「世界自然遺産」や「白神山地のもつ価値」、「白神山地の価値を維持していく方法」について全員で考え、最後に白神山地と自分の将来の姿と、白神山地とどう関わって生活していくかをまとめました。


授業のふりかえり

まずは、この1年間の授業と3年前の小学校4年生の総合学習をMovieで振り返りました。最初は、当時のあどけない姿に歓声が上がっていましたが、次第にどのような活動をしたのか口々に話がこぼれてきました。


「白神山地:青」と「西目屋村:赤」のイメージマップ作成(マインドマップ)

次に、動画やキーワードから「白神山地」と「西目屋村」に関するイメージを全員で出し合いました。それぞれ60個近いイメージやキーワードが出てきました。中には「カモシカ」や「ヤマネ」、「ブナ」など野生動植物の名前や「工藤さん」や「マタギ」など古くから山と関わって生きてきた方々のキーワードも見受けられました。一方で、「クマゲラ」や「アオモリマンテマ」、「世界自然遺産」など予想していたキーワードが出ていませんでした。


「白神山地」と「西目屋村」の共通イメージを探れ!!

 さらに、出てきたキーワードを「利用」と「保全」、「良いイメージ」と「悪いイメージ」のカテゴリーに分け、共通の項目について注目しました。
 中学1年生には難しい作業となりましたが、友達と相談しながら自分の中のイメージを示していきました。結果として、「白神山地」に対して悪いイメージは少なく、「寒い」や「危険」などのイメージが少し出ただけでした。一方で良いイメージについては「ブナ」「イヌワシ」、「生物多様性」など野生動植物に関しては「保全」というイメージが多く、「雪」や「マタギ」、「工藤さん」など現在資源として利用されているものに関しては「利用」というイメージに分類されました。また、「山菜」や「キノコ」、「山の恵み」に関しては「保護」と「利用」に広く分布しており、持続可能な山文化が根ざしている白神らしいイメージになったと思います。


「世界遺産」ってなんだろう?「白神山地」の「価値」を探れ!!

次に、イメージが出てこなかった「世界自然遺産」について学習しました。まず生徒に「世界遺産」について各々のイメージを聞きました。なかなか書きづらい設問だったにも関わらず、「次世代に伝えていくもの」や「守らなければならないもの」、「美しい」、「綺麗」、「広い」という回答がでており、守るべきものだと捉えていることが伺えました。回答後は福地保護官から世界遺産に関するレクチャーを受け、また設問に答えてもらいました。
続いて「白神山地が世界遺産に登録された価値(理由)」について各々のイメージを聞きました。この設問には多くの生徒が「ブナの原生林」や「広い原生林」などブナ林に関して記述しました。福地保護官からは世界遺産になった経緯や、白神の生態系と多様性、同じく世界遺産登録を目指している前々任地の「やんばるの森」ついて解説しました。特に「やんばるの森」については大変興味深かったようです。
 最後に「遺産の価値を守るためにはどうしたら良いのか?」と問いかけてみました。「ゴミを捨てない」や「厳重なルールを作り、守る」、「木を切らない」などの意見がありましたが、「人の手を加えず共存の道を考える」や「木や土などを観察(モニタリング)する」といった驚かされる意見もでてきました。最後に保護官から環境省として白神山地に関わる取り組みを紹介していただき「実際にこんな事をやっているんだ」ということを知ってもらいました。


将来の「ビジョン」を作成!「あなたは○○年後、白神山地とどう関わって生活していますか?」

最後に授業の締めくくりとして、「自分の将来」と「白神山地の将来」について考えてもらいました。答えはありませんが、自分が今後、高校生・大学生・社会人となっていくに当たって、どのように白神山地と関わっていくのか考えてもらいました。中学1年生には難しい内容かも知れませんが、将来の白神山地を背負っていくかも彼らです。しっかり考えてもらいたいものです。今回は宿題となりましたので、機会があればこの場でお伝えしたいと思います。

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