ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

RSS

三陸復興国立公園 大船渡

82件の記事があります。

2021年08月24日蛇ヶ崎(じゃがさき)と広田崎(ひろたざき)

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

今日は三陸復興国立公園岩手県南部陸前高田市より、来訪客が少ない穴場2カ所をご紹介します。

どちらも観光客がごった返すような場所ではなく、どちらかと言えば「ひっそり」とした公園です。

台風や大津波で遊歩道や手すりが崩れ、最低限の修繕を施した現在の姿ですが、手つかずで残していきたい自然を感じ、波打ち際まで近づくことができる場所で生きものや植物観察をしたり、ゴツゴツとした広い岩場で星空や夕日の自分のベストアングルを探したり。大人が行くと「童心に戻れる」といった表現がぴったりな場所です。

先日パークボランティア活動で公園看板のリフレッシュも行ったので併せてご覧ください。

【蛇ヶ崎(じゃがさき)】

 その名から察するに容易な大蛇伝説が言い伝えられている蛇ヶ崎。広田半島の東端に位置し、箱根山(標高446.8m)から南東へ伸びる尾根が海まで突き出た岬で、その端には大小の島々が浮かんでいます。波の侵食作用を受けて海食崖となったり、島と陸、島と島の間に狭い水道があったり、大きな海食洞や潮吹穴など典型的な海食地形を見ることができます。 中世には、三方を海に囲まれているという立地を活かし、「蛇ケ崎城」として使用されていたそうで、遺跡としても重要で、国の天然記念物にも指定されています。

 岩々に囲まれている静かな入り江には磯場が育ち、豊富な海藻や生きものたちが生息しているので、親子で磯の観察などオススメですよ。

 先日私が蛇ヶ崎磯観察で見つけた三陸らしい生きものをご覧ください。ハリネズミみたいな不思議な生きもの。何だか分かりますか?

使い古したモップに見えなくもないですが、、、これは「エラコ」という生きものです(この辺では「えらぐ」と訛ります)。チューブ状の殻の中にふさふさの毛を生やしたミミズのような生きものが入っていて、よく釣れる釣り餌として市場に出回っています。養殖海産物(ホヤやホタテなど)によく付くので、漁師さんにとっては厄介者ですが、こうやって岩場で生きている姿を見られるのはなかなか貴重です。(素手で触るとかゆくなるので注意!)

【広田崎(ひろたざき)】

 広田半島の南端にある岩礁の岬です。雄大な海原と点々と浮かぶ島々、荒波にもまれた巨石など絵画のような壮大な風景が広がります。先端から望める青松島と椿島は、古くからウミネコの繁殖地で、詩人土井晩翠が『千萬の鴎とぶなり白波の寄せて砕くるあらいその上』という詩を残しています。晩翠が感動したたくさんのウミネコたちが乱舞する情景は今でも見ることができます。青松島は県の名勝・天然記念物。椿島は国の天然記念物に指定されています。(上の写真右上奥の小さな灯台が建っている丸い島が椿島、その手前の木が茂った2つの島とまわりの岩礁群をあわせて青松島とされています。)

 広田崎は半島最南端ということで太平洋沿岸では貴重な夕日のビュースポットです。海に沈む夕日はどうやっても見ることはできませんが、空と海が近づき茜色に染まる時間は一瞬で尊いのです。

ご紹介した2カ所、いかがでしたでしょうか。興味を持って来てくれる方々に「しっかりご案内しなくては」とパークボランティアのお二方と園地入口の看板を塗装し直し、遠くからでも見えるように整えました。

岩手県沿岸南部にお越しの際は是非お立ち寄りください。

 

ページ先頭へ↑

2021年08月06日お宝マップができるまで2021①~陸前高田市広田小学校~

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

さわやかな夏の三陸海岸のはずが、ここ最近は連日猛暑続きです。夏休みの子どもたちも涼を求めて水遊びを楽しみ、二学期が始まる頃には真っ黒こげパン色の肌を自慢し合うのでしょうね。

さて、昨年度に引き続き岩手県の陸前高田市立広田小学校では"みちのく潮風トレイル広田半島マップ"を6年生が作成しています。(昨年度完成報告時の日記

〈2020年度版の広田半島マップ〉

6年生の総合学習で岩手県立大学島田先生監修のもと「地域を知る」がテーマの授業にみちのく潮風トレイルを取り入れ、私も講師で授業に参加しています。昨年度先輩たちが作ったマップが地域の人たちにも歩きに来たハイカーにもとても好評ですが、その評判を後輩たちも耳にしていて、「自分たちのマップを作るぞ!」と意気込んでいます。彼らは今夏休みですが、このマップの材料となる調べ物や現地確認を宿題として取り組んでいるはずです。暑くて外の調査は大変だけど、2学期になってみんなから提出される結果を楽しみにしているところです。みんながこれまで取り組んできた授業の様子を1学期のまとめとして今回の日記でご紹介しようと思います。

第一回目の授業は6月15日。

島田先生からこれから一年間かけて取り組むマップ作りについての説明と、私から三陸復興国立公園・みちのく潮風トレイルについての説明をしました。広田半島は国立公園に指定されている景勝地が点在し、さらにぐるっと一周トレイルルートが通ってるというこの授業にぴったりな土地です。みんなが当たり前に眺めているこの景色や文化はとても貴重で、大切にしていかなくてはならないものですよという話をしました。今年の6年生はどんな雰囲気かなぁとドキドキしながら話し始めましたが、とても元気で真剣に話を聞いてくれるみんなでホッとしました。

〈日本の国立公園について資料を興味津々に開くみんな〉

〈広田半島の地図に国立公園の範囲を色で塗ってみよう〉

 

第二回目の授業は6月28日。

みちのく潮風トレイルを実際に体験しようということで、国立公園且つトレイルルートである黒崎仙峡遊歩道をみんなで歩いてきました。この遊歩道を歩いたことがある生徒は20人中たったの2人でした。毎日通う小学校の目と鼻の先なのですが・・・。自然の中を色々教わりながら発見の連続で歩けてみんなだけでなく先生までも楽しんでいたのが印象的でした。ただ歩くだけより、情報を知れるともっと楽しめるよね。歩きに来るハイカーに向けて作るマップのヒントになったかな?

〈歩きながら見つけてビンゴを完成させていきます〉

〈トレイルの標識発見!迷わないようにてっぺんに矢印が書いてある!〉

 

第三回目の授業は7月14日。

昨年度取り組んでみて、次はもっとみんながマップを使う人について想像できるようにしたいと考え、「ロングトレイルとは」「歩く旅とは」について少し話してみました。「補給をしながら歩き続けること」「ハイカーは衣食住を背負って歩いていること」そんなことを実際のハイカーがもつ装備の写真を見せたりしながら説明したのですが、「そのパッキングってやってみたい!」「ハイカーっておもしろい!」と興味を引き出せたようでした。その説明をしたあと、この回はスペシャルゲストとの対面(Web)を用意しました。実際にみちのく潮風トレイルを歩いたことがあって、世界のトレイルをよく知る、本物のハイカーとふれ合ってほしかったのです。このご時世、遠くから人を呼ぶことはなかなか難しいですが、リモート対面ならいとも簡単にふれあいが可能に・・・便利な世の中ですね。

スペシャルゲストは私たちもみちのく潮風トレイル開通前から大変お世話になっている長谷川晋氏(一社トレイルブレイズハイキング研究所所長)です。世界のトレイルの話から始まり、6年生のみんなに長谷川さんが伝えたいことを熱弁してもらいました。生徒たちにはとても刺激的だったのではないでしょうか。最後は長谷川さんにみんなからの質問タイムで盛り上がりました。

〈人生初の"ハイカーとの対面"+"リモート対面"でみんな少し緊張気味〉

〈たっぷり話を聞いてちょっと疲れたね、みんなで伸びしよう!!〉

〈市観光物産協会の多勢さんから完成したマップがどう使われるか教えてもらいました〉

〈最後に全員で記念写真!みんなで再会を約束し笑顔でお別れです。〉

一学期はこのように3回授業をしました。材料集めを夏休みまでに済ませ、2学期はいよいよマップに落とし込んでいく作業が始まります。完成予定は来年の2月。みんなの目線で見つけた地域のお宝は何でしょうね。今からどんな地図ができあがるのか楽しみでなりません。2学期のまとめとしてこの日記でも途中経過ご報告しますのでお見逃しなく!

昨年度完成したマップはデータでダウンロードできるようになっています。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。⇒みちのく潮風トレイル広田半島ルートマップ(2020年度 広田小学校6年生版)

ページ先頭へ↑

2021年07月27日歌う砂浜 環境のバロメーター

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

みなさんこんにちは、大船渡自然保護官事務所の坂本です。

ギラギラと真夏の太陽が連日まぶしい三陸です。とはいえ最高気温は30℃超えることは稀ですし、夕方になると冷たい海風が火照った世界を優しくクールダウンしてくれるので、三陸の夏は本当に過ごしやすいとかみしめています。

夏と言えば夏休み、海、ビーチ、海水浴ですよね。

三陸海岸管内の海水浴場では昨年に引き続き泣く泣く海開きを見送った場所も何カ所かあります。しかし震災後復興を遂げ、今年初めて海開きをしたという海水浴場もあり、地元ではとても大きな話題となっています。震災から10年、家族連れや子どもたちのはしゃぐ声で賑わう浜辺の光景を感慨深く見つめています。

さて、ビーチつながりで今回の日記では気仙沼市の鳴き砂の浜をご紹介します。

(ご紹介する2カ所はいずれも海水浴場ではありません。)

日本全国には30カ所余りもの鳴き砂の浜があるとのことです。鳴き砂は環境汚染に敏感に反応するため健全な自然環境が保たれているバロメータであると言われています。そんな鳴き砂の浜が宮城県気仙沼市に2カ所あります。気仙沼大島の「十八鳴浜・くぐなりはま」と唐桑町の「九九鳴き浜・くくなきはま」です。いずれの浜もみちのく潮風トレイルルートから歩いて片道15分ほどで到達できます。

『十八鳴浜』くぐなりはま  三陸復興国立公園・国指定文化財(天然記念物)

「クックッ」と鳴く⇒9+9=18⇒十八鳴浜 が名前の由来と言われています。

明治27年に日本で初めての鳴き砂の浜として学会誌に報告された浜です。震災直後はごっそり砂浜がなくなり、砂浜と陸地の境目も崩れ落ち見るも悲しい姿だったそうです。しかし数年で徐々に砂浜が戻ってくる様子を確認し、地域の声「ありのままで、そのままで」があったのであえて復旧工事を行いませんでした。自然の力だけでここまで砂浜が復活したのです。

砂浜から陸地方向を写すとこうです。崩れ落ちた箇所はそのまま、もともとあった階段を横の林に伸ばし、砂浜までの下り道が震災後設置されました。痛々しくはありますが、あえて手を加えられていない自然が残る貴重な砂浜でもあります。

『九九鳴き浜』くくなきはま  国指定文化財(天然記念物)

こちらの浜名称は音からそのまま、クックッと鳴く⇒99と鳴く⇒九九鳴き浜 だそうです。

九九鳴き浜は震災直後、他の海岸地域と同様地盤沈下が起きました。各地で多くの砂浜が消滅しましたが、九九鳴き浜に残された現象は他とは違い、背後の草地・林まで砂が大量に入り込み、流れていくことがなかったのです。その後地盤は隆起したそうで、今では幅広い砂浜が広がっています。

この写真は2005年の九九鳴き浜を上の写真と同じ方向で写したものです。写真右側の緑地が現在はすっかり消え去っているのがおわかりいただけますでしょうか。大勢の人たちが写っていますが、この自慢の浜をきれいに保とうと地元のみなさんで毎年丁寧に清掃活動が行われています。そのおかげもあって今でも浜の砂たちは美しく歌えるのですね。

"美しく歌う"といいましたが、「鳴き砂」は英語で"singing sand"などと表現されるようで、なんだかとても楽しくなりますね。鳴かせるにはいくつかコツがあります。まず場所ですが、草や漂流物などがない場所で、なるべく人が歩いていない所を選びます。そして鳴かせ方ですが、靴裏で強めに踏み込む・砂地と平行にすり足のように歩いてみることです。調子がいいときは片足で砂をなでるだけでキュッキュッと鳴きますよ。鳴き砂は乾いているときに良く鳴きます。晴れが続く夏は鳴かせるには絶好の季節なのです。

海の恵み・環境についても考えながら、鳴き砂の浜を歌いながら歩いてみませんか。

ページ先頭へ↑

2021年07月12日梅雨寒(つゆざむ)の日に

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

この日の執務室内の気温22度、外は20度を下回っていました。常時窓を開けているので半袖でいるには少し肌寒い、シトシト降り続ける雨、まさに梅雨寒。今週中には梅雨明けかと言われていますので三陸の今年の梅雨は短かったです。

"アリスの不思議な国"に迷い込んだような色合い、露をまとうガクアジサイ

そんな日ではありましたが、碁石海岸の植物調査へ傘を差しながら繰り出しました。

「植物調査」といいましたが、碁石海岸では園地内の植物について、環境省パークボランティアと碁石海岸インフォメーションスタッフで1年間とおして1~2回/月のペースで観察&記録するという試みを今年度行っています。植物の名前調べはもちろん、開花時期や見られるエリアも記録するので碁石海岸来訪者へのご案内に役立ちますし、今後の環境変化など調査する際のベースが作れると思っています。三陸復興国立公園の指定植物一覧とのすり合わせも行い、園内にある指定植物の把握もこの機会にしたいと思います。

思わぬ珍客に出会えることも!こちらは「キツネノハナガサ」。

儚くて美しいきのこです。雨に打たれてもう萎れかけでしたが、

開いている時間が数時間という幻の存在だそうです。

ちょっとの刺激で倒れてしまうので息を止め、触らぬようそっと観察しました。


こうして撮りためた記録は、載せる種類を精査し、碁石海岸植物ハンドブックのような冊子にできたらいいねと皆で盛り上がっています。4月からこれまで行った調査6回、チェックした植物は150を超えました。盛夏~秋に最盛期を迎える植物もたくさん控えているので、一年間でどれだけの植物と出会えるか楽しみです。

下の画像はこれまでの記録の一部です。葉⇒つぼみ⇒開花⇒結実と一連が見られるので、葉っぱだけだと分からないものは、花が咲くであろう1ヶ月後に答えあわせのクイズのようです。

雨の日の観察もいいものです。雨だからこそ見えるものがあります。帰り道ではでんでんむしとばったり会うこともできました。車道に出てきていたので葉っぱに乗ってもらい、茂みの中へご案内しました。

雨の日の話題を書きましたが、昨今の土砂災害や大雨・浸水など被害に遭われた方々へ心よりお見舞い申し上げます。

降雨の程度や前線の発生場所などについては人類誰もコントロールできるわけもなく、うける地面側がどんな状態であるか知っておくことがせめて自分にできることでしょうか。

巡視をしていて「土石流危険箇所」の看板があり、そのまわりや麓が住宅地という場所があったりします。自分自身がどのような土地に住まいを構えているか、地域のハザードマップやまわりの環境を確認し、家族全員で把握し備えなくてはと強く思います。

ページ先頭へ↑

2021年07月02日虫の目で観察してみました

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

みなさんこんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

梅雨入りした三陸も天気予報は先の先まで傘マークが付いています。そんな中たまの晴れ間があるとカメラ

片手に公園へ足が勝手に向いてしまいます。

この日は虫の目(マクロレンズ)を相棒に碁石園地を巡回しました。夏へ向けて色とりどりの花が咲く道中、出会った植物たちの一部分にズームアップして撮影してみました。

ここで突然ですがクイズです!何の植物かお考えください。

 ★第一問★

どこの道ばたでも見つけられるお馴染みの植物です。

★第二問★

鼻炎だった私は子どもの頃この葉っぱを鼻に詰められました。

★第三問★

これもお馴染み、無毒ですが見た目に反して食べても美味しくありません。

★第四問★

夏に蔓延る紫色のあの子、こんなに涼しげなお花つけてたの?

★第五問★

こんな可愛いトラだったらお世話してみたいですね。

★第六問★

ベル型の花からフリフリリンリンって覚えていた人がいました。

★第七問★

海岸域岩場でよく見られる植物。ビロードのような葉っぱが特徴です。

★第八問★

花の部分を真上から撮影。本公園の指定植物のひとつです。

★第九問★

こちらも本公園の貴重な指定植物。花びらの色が名前の由来です。

いかがでしたでしょうか?

身近な植物でもこのような視点で見てみると新しい発見があります。自然とのふれあいイベントでネタとして使えそうです。みなさんも虫になった気持ちで植物観察してみてはいかがでしょうか。今まで気がつかなかったことを発見できるかも知れませんよ。

↓以下で答え合わせをどうぞ。↓

☆第一問☆

『ムラサキツメクサ』

アカツメクサとも呼びますね。この花の白花もたまに見かけますが、それは「シロバナアカツメクサ」だそうです。なんだか複雑ですね。

エストロゲンとイソフラボンを含み、女性に嬉しい薬効もあるためハーブとして多用されています。小花をじっくり見てみると繊細で美しく、びっくりしました。

☆第二問☆

『ドクダミ』

日本三大民間薬のひとつ、万能選手です。独特の匂いがその効能の高さを表しているのでしょうか。加熱すると匂いが和らぐそうで、天ぷらにして食べても美味しいそうですよ。ドクダミは実を付けず地下茎で増えます。なぜこんなにきれいな花(のように見える)を咲かせるのでしょう。

☆第三問☆

『ヘビイチゴ』

小さい頃食べられるかどうか実を割ってみた方いらっしゃいますか?真っ赤で美味しそうに見えるのに中身はフカフカで水分なし。ヘビも食べないそうですよ。緑の地面に赤い実がちりばめられている様子はとてもかわいらしいですよね。

☆第四問☆

『ウツボグサ』

名の由来は、花穂につく小花の形が弓矢を入れて背中に背負った道具である靫(うつぼ)に似ていることに由来するとのこと。この植物も薬効があり、漢方薬にも使われているそうです。ひとつひとつの小花があんなに美しいとは近づいて観察してみて初めて分かりました。

☆第五問☆

『オカトラノオ』

小さな星形の白花が房状に集合しています。この花が夏の訪れを知らせてくれます。群生している箇所では花房が同じ方向を向いていることに気がつきます。太陽の方向でしょうか?「○○トラノオ」っていろいろありますよね。ウミ、ヌマ、イワなど。空気清浄効果で人気のサンスベリアも別名「トラノオ」。虎のしっぽをよく見たことがないのでピンときません。

☆第六問☆

『ツリガネニンジン』

こちらも初夏を知らせる花です。ちいさなベル型の花が可愛いですね。名前の由来は花の形が釣鐘、根が朝鮮人参に似るというところからだそうですが、この植物も本公園の指定植物のため引っこ抜いて根の形を確認できていません。

☆第七問☆

『ラセイタソウ』

三陸をはじめ海の岩場や崖地ではよく見られる植物です。シワシワで分厚い葉っぱは一見作り物かと思うほど印象的です。花は地味で目立ちません、葉っぱが主役の植物です。見つけたら是非葉を触ってみてくださいね。

☆第八問☆

『ノハナショウブ』

花菖蒲の原種です。紫色の花弁に黄色い筋が入ってド派手な印象です。黄色い筋は蜜へ導く印なのだそう。この植物の受粉システムは非常に興味深いです。碁石海岸ではニッコウキスゲが終わるとこの花にバトンタッチ、場所によって一面のノハナショウブを楽しむことができます。

☆第九問☆

『カキラン』

小さな花でも面構えはしっかり蘭です。花の色が柿の実の色に似ているからこの名が付けられたそうです。オレンジで目立ちそうに思うのですが、上から眺めると緑がかった色で見つけにくいです。碁石海岸でも数が多くはないので大切に見守っていかなくてはならない植物です。

ページ先頭へ↑

2021年06月23日光る汗、溢れる笑顔~みちのく潮風トレイルルート整備~

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

例年より1週間以上遅れて北東北の三陸も梅雨入りしたとのこと。

天気予報は先の先まで傘マークが続いています。

梅雨入り前にみちのく潮風トレイルのルート整備を行ったので

その様子をダイジェストでお送りします。

季節を感じられる一枚も添えました。

キラキラまぶしい太陽が懐かしい、、でも汗でビショビショでした。

みんなで力を合わせて作業をするので自然と一体感が生まれます。

汗と笑顔があふれるみちのく潮風トレイル整備活動です。

今年の春夏のハイカーウェーブは梅雨入り前に過ぎ去っていきました。

withコロナの時代、策を講じてどんどん大きな波になることを期待しています。

【2021/5/24 鍬台峠(釜石市・大船渡市)】

管内ルートでは近年人気が高まっている鍬台峠(くわだいとうげ)。

古の三陸浜街道が美しく残っている峠です。

草刈り整備箇所は峠を登り切った先、せっせと登ること1.5時間。

地元有志・環境省パークボランティア・南下中ハイカーと7名で整備です。

【2021/6/10 綾里崎(大船渡市)】

太平洋に突き出た綾里半島を縦断、

ぐるっと一周16㎞歩いても南北距離はほとんど進まない

陸中南部の特色リアスのギザギザをたっぷり体感できるルートです。

半島のほとんどが国立公園に指定されていて、

指定植物にもなっているマルバダケブキの群生が楽しめます。

管理者である市の職員さん・パークボランティア・

みちのく潮風トレイル整備ボランティア・北上中ハイカーとの

総勢12名での大規模草刈り活動となりました。

【2021/6/17a.m. 大船渡市内】

羅生峠(らせいとうげ)と綾里峠(りょうりとうげ)のアクセス路整備です。

街道や登山道まで導く道が塞がってはせっかくのトレイルも泣きます。

大船渡市職員さんとパークボランティアと4名で小回りを利かせながら行いました。

【2021/6/17p.m. 筋山(大槌町)】

リアスシーニックラインというドライブウェイをルートにしています。

舗装路ではありますが太平洋の様々な表情を木々の間から

眺めなつつのんびりハイクできるルートです。

一区間、100mもない距離ですが、整備が必要な箇所があります。

ササや幼木が多いので手鎌で刈るのは一苦労。

パークボランティアと私の3名で上からと下からで攻めました。

管理者や私たちの活動に興味を持って整備に協力してくださる地元の方、ちょうど通りかかったハイカーさんたちが増えてきた印象です。とてもうれしいことです。近くに住む地元の皆さんがみちのく潮風トレイルを

大切に思い、整備活動に参加したくなるように働きかけをしていきたいと思います。

ページ先頭へ↑

2021年06月11日初夏の首崎(こうべざき)へ

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

まだ梅雨入り宣言の聞こえない北東北です。皆さんの地域では梅雨入りしましたか?

今年もこの時期、三陸復興国立公園で指定植物になっているマルバダケブキや海浜植物をはじめとする自然環境調査を目的に大船渡市首崎へ行ってきました。この日はあいにく鈍色の空で、気温は高くじめっとする気候でしたが、岬先端では心地よい潮風が湿気を払ってくれました。

鬼の首が流れ着いたことから名付けられたと伝えられている、そんな首崎ですが、大船渡事務所管内では特に自然性が高い地区ということで、この自然環境の保全がミッションとなります。太平洋に突き出た先端部は、雄大な外洋、海食崖、連なる半島などの絶好の展望台となっています。

今年のマルバダケブキの咲き具合はどうでしょうか、楽しみに入口に立ちます。

入口にさっそく咲いているではありませんか。期待が膨らみます。

時期としては今週が見頃でしょうか。一面黄色の絨毯のようでした。

今年のマルバダケブキはニホンジカによる葉の食害が目立ちました。この辺は例年ですとマルバダケブキは食べられる対象ではないのですが、シカ界の食糧難なのか好みの変化なのでしょうか。勢いよく育つと花茎が1メートルほどにもなるこの花ですが、背の高いものが少ないなという印象でした。

さて首埼灯台のある岬先端へと歩みを進めます。先端に向かって馬の背の部分を歩いて行くわけですが、南側斜面はボロボロと激しく崩れています。あと数年で通っている上の歩道も崩れてしまいそうです。

灯台の建つ高台から南側を振り返ってみました。

過去3年の記録写真です。19年に海側の斜面が大きく崩れ落ちているのが見て取れます。この年は15号、19号と大きな被害をもたらした台風がやってきました。その後は大きな変化は見られないようですが、観察・記録を続けていこうと思います。

灯台周辺では海浜植物の観察です。突端という厳しい環境下で必死に生きている植物たちも記録しています。他の海岸でも見られる植物もあるのですが、成長具合は首崎のみんなは他より遅い様子です。半島の基部から約9キロも海に突き出した岬の突端です、風当たりも強く冷涼なのでしょう。それでも頑張る植物たちに元気をもらえた気がします。

半島先端まで到着し、観察・調査も一段落。お昼ご飯を頬ばっているときです。目の前の崖に気になる黒い鳥が見えました。海抜101メートルの場所に私は座っています。感覚が伝わるよう足を写して下に見える島を撮影してみました。

その黒い鳥は、ここからではゴマ粒のようにしか見えません。肉眼では全く歯が立たないのでカメラのズーム最大にして覗いてみることに。

崖になにやらたむろっている黒い鳥がいるようです。さらに寄ってみると・・・それはウミウのコロニーでした。7ペアほどは確認できます。巣に座り込んでいるのは抱卵中でしょうか。そのそばには見守っているパートナーが寄り添っています。ウミウの繁殖の様子は初めて見たのでとても感動しました。三陸の海・岩場ではウミウはよく出会うことができる鳥です。こんな崖っぷちで愛をはぐくんでいたのですね。ひとつ嬉しい発見をしてホクホクで帰路につきました。

ページ先頭へ↑

2021年06月03日さえずりに耳を傾けて

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

みなさんこんにちは。

大船渡自然保護官事務所の坂本です。

早いものでもう6月。多くの生きものたちの春から初夏は繁殖期ですね。

生まれたばかりの命は守られるべく愛くるしい姿と可愛らしい声

種を超えて母性本能をくすぐられます。

一方かわいい我が子を一生懸命世話する親たちの姿もまた微笑ましいですね。

一心不乱に餌を運ぶ親たちを見て「本来親とはこういう生きものか」と

生きものたちに「親」の役割を気づかされ、自身と重ね合わせる。

巡視中出会う生きものの「親」たちに考えさせられるのでした。

そんな人生を考えるような重いテーマではございません。

今日は先週の碁石海岸巡視中に出会ったかわいい野鳥たちをご紹介します。

言わずもがな鳥は飛び、忙しく動き回ります。

そのためカメラに収めるのは私の腕では非常に困難です。

そのため1枚の写真に収められたときの喜びはひとしお、

飛び回る鳥たちを追いかけ続けることになってしまうのです。

【コゲラ】キツツキ目キツツキ科

日本のキツツキ類では最小だそうです。

二本の足の握力と尾羽の3点確保で幹を素早く動き回り、

幹や樹皮の隙間に隠れている虫を探し捕まえます。

木立の中で「カカカカ」とつつく音が聞こえたら探してみてください。

【コサメビタキ】スズメ目ヒタキ科

全長13センチほどのスズメより小さめなすばしっこい鳥。

飛んでいる虫を空中でキャッチすることからFlycatcherとの名もあるそうです。

タイミング良く枝に捉まっている所を撮れましたが、

シャッターを切り終わった時にはもう既に飛び立っていなくなっていました。

【エナガ】スズメ目エナガ科

綿を丸めたような体に小さな嘴と長い尾羽が特徴のとにかく可愛いエナガ。

野鳥界のアイドルと言われるほどの人気です。

身近なところで出会えるので「ジュリジュリ」と聞こえたら

目をこらして尾っぽの長い小鳥を探してみてください。

たくさん撮影できたのですが愛くるしさが伝わる1枚を選びました。

【イソヒヨドリ】スズメ目ツグミ科

「あ、目が合った」の1枚です。

海岸の岩場や崖などでよく見られるイソヒヨドリ。

目を引くブルーと赤いお腹(雄)でわかりやすいですね。

イソとは言いますが、市街地で虫を咥えている姿や

人家の屋根で休んでいる姿がよく目撃されます。

いかがでしたでしょうか。

どの鳥もそれほど出会いにくい鳥ではなく、

まわりによくいる鳥たちです。

特に今時期は子育て中の親鳥がエサを求めて

山中だけでなく市街地にも活動範囲を広げているかも知れません。

いつもの散歩の時間に耳を澄まし、鳥たちの声を聞いてみてくださいね。

聞こえたら近くにいるはずです。

最後に、碁石海岸のウミネコの子育て風景をどうぞ。

5月31日に撮影したウミネコの繁殖地となっている千代島(ちよじま)の1枚です。

この中にヒナが6羽写っていますよ。

ズームして見つけてくださいね。

これがウミネコの卵の殻です。

ヒナの体の模様そっくりです。

生命の神秘ですね!

=============================

初心者にもわかりやすい野鳥についてのサイト

国立公園オフィシャルパートナー【サントリーホールディングス()】様の

日本の鳥百科/サントリーの愛鳥活動 もうご存じですか。

その中に「あなたの鳥タイプ診断」たるものを見つけてしまいました。

さっそく試したところ私は"エナガ"タイプでしたよ。

野鳥界のアイドルと同じタイプで大喜びしてしまいました。

ご興味ある方は、診断してみてはいかがでしょうか。

ページ先頭へ↑

2021年05月24日朱色に染まる田束山(たつがねさん)

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

先日、宮城県気仙沼市と南三陸町にまたがる『田束山(たつがねさん)』へ石巻自然保護官事務所と合同で巡視に行って参りました。気仙沼市は大船渡自然保護官事務所の管轄、南三陸町は石巻自然保護官事務所の管轄です。

(石巻事務所の仲原レンジャーと大船渡事務所の福濱レンジャーと私 女子三人です)

(撮影はこの日の黒一点石巻事務所の晴山アクティブレンジャーです)

古くから山岳信仰の霊山として人々の信仰を集め、奥州藤原氏との深いゆかりを今日に伝える貴重な遺構である田束山は、山頂付近から太平洋が一望できる宮城県屈指のビュースポットです。そして5月中旬頃に咲くヤマツツジで燃えるような朱色に染まるのです。

【5月20日山頂からの眺望】今年のツツジ最盛期はもう1週間前でした、残念。。

田束山山頂へは舗装路が整備され、車でも楽々なのですが、南三陸町樋の口からはじまる"行者の道"を歩いていくのがオススメです。この道はみちのく潮風トレイルのルートにもなっていて、平安時代に栄えていたこの山の雰囲気をしっとりと味わうことができます。

【苔むす階段】沢沿いの登山道へと導く階段、心静かに参りましょう

【修行僧の道】修行僧の行場であったという厳かな雰囲気漂う道

【水垢離(みずごり)の場】修行僧たちが冷水を浴び身を清めたと言われる滝

およそ1.5㎞の登山道をのぼると山頂(標高512m)にたどり着きます。ヤマツツジのトンネルを抜け、視界が開けた山頂では三陸海岸の素晴らしい景色を見下ろせます。

山頂から気仙沼側へは三十三観音を巡りながら"田束山石像公園"へ下るのがオススメです。整備された階段の両脇に三十三体の観音さまがおられます。ありとあらゆる人を救うために様々な姿に変身する観音さま。三十三全ての観音さまをじっくり拝み、自分が救われたい観音さまを探しているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。

(北側を臨む公園の頂点に鎮座する三十三番目の観音さまの説明板を

絶景バックに熟読する晴山アクティブレンジャー)

海岸線のイメージが強い三陸復興国立公園ですが、ここ田束山もその一部に指定されています。山頂からの雄大な眺め、自然探勝の場として残していきたい"行者の道"。ひと味違う三陸復興国立公園を楽しめますよ。是非足を運んでみてください。

ページ先頭へ↑

2021年05月18日待望の砂浜

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

岩手県大槌(おおつち)町の三陸復興国立公園浪板(なみいた)海岸は白砂青松、サーフィンや海水浴が盛んで岩手県の三陸海岸を代表する美しい海水浴場でしたが、東日本大震災による地盤沈下と大津波によって砂浜と多くの松が流されてしてしまいました。

かつての美しい砂浜と賑わいを取り戻したいと地元の方々の署名運動が始まり、2019年にやっと砂浜再生のプロジェクトが動き出しました。そして2020年度内を目指していましたが完成時期は、漁期と工事との兼ね合いや時化などの影響でもう少し延びるそうですが、今の浪板海岸にはたっぷり砂浜ができています。

地域の皆さん念願の海開きはもう目の前です!

ここに至るまで様々な観測や研究、地域の努力があり感動もひとしおです。

浪板海岸の過去と工事途中の現在の姿をご覧ください。

【左】2016年12月の北側       【右】2021年5月の北側

【左】2016年12月の南側       【右】2021年5月の南側

この浪板海岸をはじめとする三陸リアスを存分に目で楽しめる場所があります。山田町と大槌町にまたがる『鯨山』。みちのく潮風トレイルのルートにもなっています。

標高610メートルとそれほど高く聞こえないのですが、海抜ゼロから自分の足で登ると歩きごたえたっぷりで植生の変化や風の強さのちがい、見える水平線の高さの変化など登山気分を気軽に楽しめる山です。山田町側には鎖やロープを使う岩場もあり、夏の登山シーズンに備えてトレーニングとして足を運ぶ登山愛好家たちもいます。

なんと言ってもこの山の魅力は山頂からの眺めです。リアスが一目で分かる太平洋側はもちろん、内陸側の山々が眼下に広がる風景も素敵です。海側の見える範囲ほとんどが三陸復興国立公園指定エリア、贅沢な眺めです。

この時期は芽吹いたまぶしい新緑と咲き出した色とりどりの花々に励まされながら登山ができます。三陸海岸を山から楽しむのはちょっと上級者の気分ですね。

待ちわびた砂浜とそれを見下ろせる登山、セットで大槌町を満喫してみませんか。

ページ先頭へ↑

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。

ページ先頭へ