ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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三陸復興国立公園 大船渡

82件の記事があります。

2022年02月03日冬の楽しみ

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

寒い寒いとできるだけ外に出ずお家でぬくぬくなんて方いらっしゃいませんか?

寒い季節は海の水がとっても綺麗です。

砂浜から、漁港から、桟橋から、船の上から

深さや海底の素材などによって変わる海の色の変化を楽しめます。

なぜ海は青いのか。

太陽光構成7色のうち青以外が海水に吸収されてしまうから

とざくっと認識していますが

プランクトンが少なく透明度の高い冬の海は

そんな光と水の関係性について頭を働かせるのに格好の現場です。

環境省選定快水浴場百選にも選ばれている

宮城県気仙沼大島の小田の浜(こだのはま)へ行ってきました。

穏やかで安全な遠浅の海水浴場として海水浴シーズンには毎年賑わう砂浜です。

そんな小田の浜ですが、実は冬期は貴重な水鳥を観察できるスポットなのです。

その貴重な鳥とは、首に白いネックレスを巻いたコクガンです。

海に漂う海藻をエサとしています。

1日の多くをこうして海の上で過ごすため、観察するためには双眼鏡が必携です。

国の天然記念物、絶滅危惧種Ⅱ類とされてるコクガンですが

ご興味ある方はコチラ(東北地方におけるガンカモ類の渡り経路および分布状況

をご覧になってみてください。

ある1月の午後3時頃です。いましたいました。

海での食事を一時中断し、陸に上がって羽繕いしている様子に遭遇できました。

みんな一生懸命お腹のあたりをつついています。

そろりそろりと私が近づくと1羽だけ首を長く伸ばしこちらを警戒している様子。

(横向きに見えますが、目が横に付いているので

この状態でこちらを凝視していると思われます)

この1羽は警備担当なのでしょうか。

驚かさぬよう、これ以上近づくのはやめました。

しばらくすると今度はこっちに一斉におしりを向けました。

なんとも可愛らしい。

左にいる4羽はオオバンです。

泳ぎも潜りも得意な彼らはせっかく自分で採った海藻を

いつもコクガンたちに横取りされてイラッとしているのかと思いきや

こうして一緒にいるところを見ると案外そうでもないのかな、

もはや一緒にいたいと思っているのかなと見えてきます。

小さいことは気にしない、おおらかなオオバンが私は大好きです。

しばらくするとエサ場へ移動するため一同は飛び立っていきました。

砂浜には別の団体様もいらっしゃいました。カモ類のようです。

海から上がってどこかへ急いで向かっている様子。

オナガガモですね。

首が長くスラッとしていてオスの尾羽が長いのが特徴です。

淡水を求めて砂浜を流れる沢に向かっていたんですね。

うがいと羽繕いに夢中でした。

越冬などで飛来している水鳥たちは、こうして海域で見ることもありますし

まちなかの川や池など淡水域でも見ることができます。

ついつい出不精になってしまう冬ですが、この時期だからこそ

見られる生き物たちの観察を楽しんでみてはいかがですか?

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2022年01月17日国立公園おいしい楽しみ方

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

今が旬のカキの画からこんにちは、大船渡自然保護官事務所より坂本です。

今しか味わえない美味しい時期の美味しいカキをお届けしたいと、年末からカキ漁師さんたちは大忙しです。

先日のトンガ沖で発生した海底火山噴火の影響で津波警報が発令された岩手県ですが、この時の波で漁具や養殖筏に被害が及んだというお話も聞きました。警報・注意報が解除されてから点検や作業など、自然相手の仕事、海の男たちは本当にたくましいです。

上の写真を見て「わぁ美味しそう!」と思った方いますか?実はこのカキは食べ頃まであと2~3週間といったところで、まだ全体的に透きとおっていて成熟する前なのです。

↓食べ頃のカキはこんな感じです。↓

ぽてっとした部分がしっかりと濁ったクリーム色になります。水分の多い時期の早いカキは火を入れると水分が抜けて小さく縮んでしまいますが、ここまで白くなっているとあまり身縮み起こしません。これを知っているとカキの目利きができますね。

三陸復興国立公園は、自然の恵みと脅威、人と自然との共生により育まれてきた暮らしと文化が感じられる国立公園です。崖や岩礁が織りなす海岸風景はもちろんですが、その地で暮らす人々が自然と共存する姿や産業風景も大切な要素になっています。リアス海岸となっている公園南部の湾内には、カキ、ホタテなどの養殖筏やワカメなどの養殖ブイが多数浮かぶ風景が印象的です。

 

〔夕日に染まるカキ筏 陸前高田市広田湾〕

〔ブイが並ぶ日の出を待つ大船渡湾〕


養殖風景を眺めていると海に浮かぶ施設が様々あることに気がつきます。代表的な2種をご紹介します。

【筏(いかだ)式養殖】

木や竹などで筏を組んで海に浮かべ、筏からロープに貝を付けて海に沈めているものです。主にカキやホタテが育てられています。下の写真の筏はカキの養殖棚ですが、水面から浮き上がっているものと水面にぴったり付いているものとあるのが分かりますか?

この筏の下にはロープで垂れ下がっているカキが付いています。カキは大きく育ってどんどん重くなります。水面にぴったり付いている=重みで沈んでいるということです。沈んでいる筏の下には大きなカキがたわわにぶら下がって収穫されるのを待っている状態です。浮いている筏は収穫後のものか、沈めて間もないか(多くは沈めて2年で出荷)ということです。

                               〔気仙沼大島瀬戸〕

【延縄(はえなわ)式養殖】

水面に浮かぶ丸い玉、これはブイと呼ばれています。海にアンカーを下ろして直線にロープを張る方法です。主にワカメ、コンブ、ホヤが育てられています。

貝や海藻の養殖は特に餌を与えるでもなく、海の栄養だけで育てる、ほぼ天然の状態に限りなく近いのです。

ブイの下にはフサフサゆらゆら海藻の林が広がっていると想像するとおもしろいですね。

                                  〔大船渡湾〕

2種類の方法をどのように使い分けているかですが、筏式は水深の深いところでも設置可能で生産効率性も高い方法として普及してきましたが、高波やうねりなどで壊れやすいという難点があります。一方延縄式はシンプルな構造で耐久性が高く潮流れもいいとのこと。その漁場の環境で最適な養殖施設が置かれているのですね。一概には言えないのですが、筏がある場所は波が穏やか、延縄だと波が荒いのかな、そんな目線で眺めることができます。

筏式で主にカキ・ホタテと前述しましたが、実は延縄式でもカキ・ホタテは育てられています。その場合はブイの大きさ(形)が見分けるポイントだったり、一直線に見えるロープの下は実は複数列・複数段になっていたりと、とてもとても奥が深く、いまだに私も勉強中でございます。

三陸の海を眺めた時にちょっとした豆知識としてご活用いただけたら嬉しいです。美味しい国立公園、三陸復興国立公園へ是非お越しください。

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2021年12月24日お宝マップができるまで2021②~陸前高田市広田小学校~

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

温暖なここ三陸沿岸でも最低気温がマイナスを指す日が多くなってきました。

年末を目前に、本格的な冬がはじまりました。

冬でもツバキ・サザンカで花盛りの碁石海岸周辺です。

今回の日記では、これまでもお伝えしていた岩手県陸前高田市広田小学校のみちのく潮風トレイルマップ作りの進捗をご紹介します。(前回の記事はコチラ

2学期最初の授業は9月21日。1学期にみちのく潮風トレイルの一部の遊歩道をみんなで歩いて、オススメしたい場所や事柄を自分で撮った写真を添えてみんなで発表し合うという授業をしました。そのオススメポイントをシールで地図に貼る作業がありましたが、だいぶ地図の見方も慣れてきました。

次の授業は9月24日。広田の文化財について調べる授業をしました。家でもじっくり学べるよう、市のホームページからの調べ方も教わりました。国指定はもちろん、岩手県指定と陸前高田市指定の文化財は想像しているよりたくさんの数が広田にあって、驚いている様子でした。

そして10月29日の授業。3グループに分かれて広田半島を調査に行くグループワーク、もちろん歩いてです。ハイカーの気持ちになってレッツゴー!

授業で学んだ文化財・石碑の場所の確認やハイカーが喜ぶものを探しながら担当範囲をぐるっと歩きました。時には地元の人に声をかけられ寄り道しながら私が一緒に歩いたグループの歩行距離は約8キロ、約2.5時間でした。

11月16日の授業では、前回のグループワークのまとめです。グループで歩いた中でみつけたオススメや便利情報などを各自選んできたものを出し合い、地図に落として最後にはグループで発表し合いました。

2学期最後の授業は12月20日でした。6年生のみんなが1学期・夏休み・2学期と頑張ってきたことの総まとめです。この回までに一人ひとつずつオススメポイント担当が決定しています。担当になったポイントのオススメ文章を作成し、写真をえらび、地図の場所を示せるようになっています。今年も生徒20名分、20箇所のポイントを紹介することになります。

こうして地図に入れ込む情報がまとまり、みんなはマップが刷り上がってくるのを楽しみに待っているところです。2月のマップ完成が楽しみですね!

今年、「広田半島マップを見て歩きに来たよ」というハイカーや観光客の嬉しい声を聞きました。今年度版も広田のいいところを発信する力を持ったツールになりますように。ご興味ある方は是非お手にとって見てみてくださいね。完成しましたらダウンロードできるPDF版を用意する予定です。

子どもたちが冬休みに入ります。大人はカレンダー通り休める人も年末年始こそ稼ぎ時という人もいらっしゃいますね。何かと忙しい年末年始ですが、みなさま良いお年を。また来年お会いしましょう。

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2021年12月09日三陸復興国立公園パークボランティア合同研修会

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

日ごとに寒さが募ってまいりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。12月に入ってすぐ三陸沿岸の市街地でも初雪を観測しました。いよいよ冬到来、何かと忙しい年末に備え、段取りよく仕事はもちろん、家の事も進めていきたいものです。

この日記をご覧になる方はパークボランティアについてはご存じのことと思いますが、国立公園において、自然観察会等の解説活動や美化清掃、利用施設の簡単な維持修理などの各種活動について、自発的に協力して頂ける方々を環境省はパークボランティアとして登録しています。登録されているパークボランティアは日々の活動の他、知識向上のため勉強会など受講するのですが、先日、三陸復興国立公園陸中南部地区と中部地区の合同研修会を行いました。この研修会は毎年度1回開催していて、同じ三陸復興国立公園内で活動する仲間が、お互いのエリアの見聞を広げつつ同じ学びを受ける場として、南部を管轄する大船渡自然保護官事務所と中部を管轄する宮古自然保護官事務所とが毎年持ち回りで担当し開催しています。今回は大船渡市での開催となりました。

1日目は秋田県自然保護課よりクマ被害対策専門職員の近藤さんをお招きし、クマの生態から山での活動中に事故に遭わないようにするための基礎的なことの他、集落への出没の対策などお話しいただきました。日頃からクマ鈴を付け、山では単独行動はしないなど慎重に活動しているほど私たちの身近にいるクマ。クマ対策については一般的に言われていることをなんとなく実行していましたが、専門家の話を聞き、確信を持って山行に挑める気持ちになれました。恐れ備えることは大切なことですが、好物や遭遇したときの対処法、そして臆病者の可愛らしい一面を持つクマを知ることができ、とても有意義な講義でした。

〈クマの世界でもスリムやマッチョなど体格は様々です〉と近藤さん

手前に写る黒い塊はツキノワグマ成体の毛皮です。

〈迫ってくるクマにクマ撃退スプレーをうまく向けられるか??〉


2日目は、前日の講義を頭に置いて、クマが生息する山中を実際に踏査です。舞台は地名"熊ノ入"からスタートする綾里峠(りょうりとうげ)、みちのく潮風トレイルのルートです。この時期は落葉し、とても見通しのいいトレイルなのでクマに遭遇することは難しいですが、痕跡があるか注意して歩いてみました。

〈獣の糞発見!数回分をためていて、太さからも「タヌキ」を導き出しました。〉

〈引っ掻き跡。交差しているのでクマの爪跡ではなく「シカの角研ぎ」を導き出しました。〉

〈落葉で膝まで埋まるトラバース。フカフカだけど道が消えてるので目印テープを頼りに。〉

〈絶景ポイント、大船渡湾を一目に見下ろせます。サクサク霜が下りていました。〉

こうして2日間の研修会は終了しました。今後の活動にいかしてますます活躍お願いします。

パークボランティアの皆さんはご自身の地域の美しい国立公園を守り、利用してもらうために自然保護官事務所の職員と様々な活動を行い、さらに知識を高めるため学んでいます。各地の国立公園にいらっしゃいますので運良く遭遇できたら是非声をかけて色々聞いてみてくださいね、きっと喜んで説明してくれますよ。

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2021年11月25日秋の首崎(こうべざき)

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

みなさんこんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

先日、大船渡市首崎へ公園巡視に行ってきました。

首崎は植生調査のため夏の巡視地としているのですが、スッキリとした秋空の絶景を拝みたいと秋にも足を踏み入れてみることにしたのです。首崎はメジャーな観光スポットではありませんが、「リアスの半島突端」「最果て感」がどっぷり感じられる、知る人ぞ知る秘境です。どんな秋が待っているでしょうか。

この日の空は雲がちぎれちぎれあるものの、風はなく、時折顔を出す太陽があたたかく歩いていると汗ばむほどでした。海上の空気がとてもきれいだったようで、直線距離で90㎞以上離れている宮城県石巻市の金華山まで目で確認することができました(カメラには写っていませんでした、残念)。

首崎の先端へ向かうために半島をぐるっと周回している林道を進みます。色づく広葉樹林や手入れの行き届いた針葉樹林を交互に楽しみながら平坦でとても歩きやすい道です。昨今の大雨や台風などの影響で崩れが発生している箇所もあり、林道とは言え、車ではなく歩きで向かうことをおすすめします。

大きな朴の落ち葉エリアは雪が降ったのかと見間違えるほど真っ白、自然のレフ板のようです。わざと葉の上を選びガサガサ音を立てながら歩く落ち葉ウォークを楽しみました。

苔むすエリアでは生命の発見もありました。コツボゴケの覆うしっとりとした地面に根を伸ばしたドングリです。軽くつまんでみましたがしっかりと根付いていたようでした。こんな小さな木の実も頑張って生きている、自分も頑張らなくちゃと元気をもらえますね。

先端へ進む道で見つけた不思議な色合いの樹。地衣類のピンクや黄色の斑模様がモザイクアートのようでした。自然に偶然に描かれた純粋なネイチャーアートに惚れ惚れし立ち止まってしまいます。

半島の先端付近には、寒冷地でも耐えられるカシワが群生をなしています。新しい葉がでるまで古い葉は枝で落ちずに待つ「代が途切れない」として縁起物と言われていますが、ここの厳しい環境下ではさすがに吹き飛ばされるのか、落ちているカシワの葉もありました。楽しみにしていたドングリの実も分厚い落ち葉の層や馬の背斜面のお陰か見つけることができませんでした。

カシワと言えば柏餅。東北人の私は大きなカシワの葉に包まれたお餅を食べていましたが、四国出身の現保護官に聞いてみたところ、柏餅は丸い葉っぱに包まれていたと言うのです。植物図鑑に"サルトリイバラの葉は柏餅の葉"と書かれていたのを見たことがありましたが、想像ができず全く信じていませんでした。まさか西日本では柏餅の葉っぱがサルトリイバラなんて。。。本当なんですね。「じゃぁじゃぁ鶏肉の"かしわ"は?」と東西カシワネタで会話が尽きません。

『柏黄葉/かしわもみじ』は晩秋の季語。まさに今かなという色づきでした。ちなみに『柏落葉/かしわおちば』は初夏の季語です。"落ち葉"と聞くとどうしても秋・冬のイメージですがカシワの生態が分かると理解できますね。季節の移り変わりを自然界から感じ取ることは昔から楽しまれてきたことで、今でもできること。山中巡視の辛い登りでは気を紛らわすのに植物や虫たちに助けてもらっています。

いよいよ先端部、首埼灯台が目の前です。尾根沿いの道から少し下りたこの場所で、必ず切り取ってしまうアングルです。

首埼灯台の建つ先端広場は水面からおよそ100mの高さに位置します。視界が良ければ北は山田町船越半島、南は大船渡市綾里崎まで地図通りのリアスの海岸線をはっきりと見ることができます。

灯台下の植生観察、最盛期は終わっていますが砂地で強風、乾燥しているこの厳しい地で頑張る植物たちです。

【左】赤く染まったキリンソウ 

【中】ぎっしりと実を付けたハマハイビャクシン

【右】アオノイワレンゲの残った穂と小さく揺れるハマエノコログサ

目的の首崎巡視を終え、帰り道近くの『鬼間ヶ崎/きまがさき』に立ち寄りました。津波をかぶったはずのこの小島の上には青々としたマツが生い茂っています。とても強い生命力を感じます。

首崎周辺の半島先端は「脚崎/すねさき」「死骨崎/しこつざき」など不気味なものが連なります。大昔、成敗した鬼を切り刻み海へ葬ったところ、それぞれの岬に鬼の体の一部が流れ着き、それを名前に残したという言い伝えがあります。牙(キバ)=鬼間(キマ)が流れ着いたのがここ鬼間ヶ崎とのこと。恐ろしい鬼伝説のある地ですが、景色はえも言われぬ美しさです。景色と併せて伝説や文化などその土地ならではのことに触れられると、記憶への残り方は変わります。人の営みとの関わりが深く、変わった地名の多いここ三陸復興国立公園ではそういった目線で楽しんでいただくのもおもしろそうです。

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2021年11月12日緑の真珠 気仙沼大島

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

三陸海岸へも秋がやってきましたが、早くも冬の気配を感じはじめました。

業務で国立公園エリアやみちのく潮風トレイルルートの巡視を行っているのですが、本日は宮城県気仙沼大島の秋をお届けします。皆さんのイメージする「秋色」とはちょっと違うかも知れません。

気仙沼大島は最近ロケ地となったテレビドラマの放映がありその効果で訪れる観光客が増えています。

この日も一組のご夫妻がロケ地になった田中浜を訪れていました。

気仙沼大島は東北最大の有人島で、豊かな海に囲まれ島特有の風土が感じられる気候も人情もあったかい土地です。そんな気仙沼大島の特産品と言えば冬の食卓を彩る「ゆず」です。鍋料理をはじめ、ジャムにお茶にお風呂、あったかく過ごす冬の必需品です。島中で見かけるゆず畑では間もなく始まる収穫を待つゆずたちが黄色く輝いていました。私も毎年ゆずジャムを大量に作って楽しむので、この時期を首を長くして待っているのです。

秋冬の木々は紅葉後落葉し、さみしいイメージがあるでしょうか。しかし気仙沼大島は海に囲まれていて比較的温暖なため、海岸特有の常緑の照葉樹が多く見られ、冬でもいきいきとした緑に囲まれます。気仙沼大島出身の詩人 水上不二が大島を「緑の真珠」と詠ったのも納得です。

サザンカが咲き始めていました。

遊歩道沿いではミヤマシキミが鮮やかな赤い実をたくさん付けていました。

赤い実だったらシロダモも負けてはいません。

いかがでしたか。燃えるような紅葉風景とは違った秋景色ですよね。

気仙沼大島ぐるっと一周約22㎞はみちのく潮風トレイルのルートになっています。冬の運動不足に備え、1日かけて歩くのにちょうどいい距離ですので秋の気仙沼大島ハイキング、おすすめですよ。

最後に、ちょっと珍しいものをご紹介します。

三陸海岸は大昔から地震津波の被害を受けてきた地域です。先人たちが未来の住民へ向けてその教訓を伝えるためにこれまでたくさんの石碑や記念碑を各地に残してきました。その石碑たちの中でもとりわけ珍しい、英語で訴える石碑がここ気仙沼大島にはあります。

"MEMORIAL OF THE EARTH QUAKE AND TIDAL WAVE"とあります。通常の石碑のこの碑銘部分には"震嘯記念"や"海嘯供養塔"などと刻まれています。なぜこの碑は英語で書かれているのでしょう。色々調べているのですが、まだ明確な答えに行き着けずにいます。

この石碑は気仙沼大島の小田の浜の少し北、長崎という地にあるものです。気仙沼大島を訪れた際には是非探して解読してみてください。

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2021年10月25日『僕たちの気仙町』魅力発信~陸前高田市気仙小学校

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

皆さんこんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

10月の長雨が明け、すっきりとした秋晴で空に吸い込まれそうな三陸です。

岩手県陸前高田市広田小学校でみちのく潮風トレイルを題材にした出前授業をご紹介してきましたが、この秋同市内の別の小学校でも授業に取り入れたいというお話をいただき、2週続けてみちのく潮風トレイル授業に行ってきたのでご紹介します。

陸前高田市気仙(けせん)小学校の6年生が取り組む「地域の魅力を発信する」授業のひとつのツールとしてみちのく潮風トレイルを活用します。

気仙小学校は東日本大震災で全壊、2019年に気仙町の今泉地区に造成した高台に移転整備されました。壊滅的な被害を受けた陸前高田市は街全体の土地造成から長い間かけて行われていたため、気仙小学校の完成は岩手県の公立学校再建の中では一番最後でした。今回の授業の主役6年生は男子7、女子2の9名のクラスです。

私が出向く前から授業の中でみちのく潮風トレイルの勉強をしていたという6年生のために、担任の先生から「実際のハイカーに会えないかしら」というご要望があったので、昨年全線踏破されたみちのく潮風トレイルを管理運営しているみちのくトレイルクラブの加藤正芳理事においでいただき、歩いたときの装備やみちのく潮風トレイルの魅力などお話いただきました。

その中で加藤さんに「陸前高田市の印象」を聞いてみたところ、震災直後に同市を訪れた時の街の姿やその後の復興進度を見ての感想などに加え、"気仙大工"や"けんか七夕"などの歴史・伝統のお話がありました。外の

人からみた陸前高田の印象を聞き、彼らにとっては当たり前の地元ネタが"魅力"として認められているんだと、自信・誇りに繋がったのではないでしょうか。

最後に加藤さんへみんなからの質問タイムが設けられ、賑やかな時間が教室に流れました。用紙いっぱいに真剣にメモを取っていたみんな、何を感じ取ってくれたでしょうか。

その翌週、みちのく潮風トレイルの気仙町ルートを実地体験しました。実は気仙町を通るルートはほんの5キロほどで、気仙小学校もルートから少し外れています。しかしせっかく陸前高田市に来てくれる人や気仙町を歩いて通ってくれるハイカーに、気仙町の魅力を知って帰ってほしいという思いで、まずは公式ルートを実際歩き、どんな魅力が隠れているかみんなで探そうという授業です。

(左)小学校から公式ルートまでは新しくできた避難路を下りました。気仙川河口脇に見える建物は震災遺構になっている旧気仙中学校校舎です。

(右)漁港を通れば地元の漁師さんたち皆さん声をかけてくれました。地域の宝である子どもたちが地元の勉強をしている姿は応援したくなりますよね。

(左)今は生徒一人に一台タブレットが支給されています。いいなと思ったものをじゃんじゃん撮影していきます。

(右)この地出身という担任の先生がルートを逸れておもしろい道を案内してくれました。秘密基地に繋がるようなワクワクする小道、先生が子どもの頃よく遊んだ道だそうです。

(左)途中お食事中のシカに遭遇した場面ではもちろんタブレットで撮影会です。シカも逃げずにモデルをしてくれました。

(右)昔ながらの防波堤からは海がよく見えます。みんな揃って寄りかかり、漁港から出て行こうとする船となにやら大声でやり取りしていました。


(左)公式ルートから少し逸れたところには歴史を物語る史跡が点在しています。後に鉄砲隊となる足軽たちの住居跡について先生が説明しているところです。

(右)最後の浜では、自由に遊ぶ時間を先生が用意していました。震災後海と少し疎遠にならざるを得ない雰囲気の中育ってきた彼ら、先生はこうした時間を過ごさせたいと思ってこられたようです。男子たちはカニ探しに夢中でした。

気仙小学校の生徒たちはこの他にも様々な地域学を行っているそうです。気仙町の今泉地区は江戸時代は仙台藩気仙郡の行政中心地で、河川や街道の交通要所でもありとても重要な土地でした。気仙大工による立派なお屋敷が狭い路地をはさんでひしめき合うように建ち並び、幼い頃に訪れた私にも「どこか他と違うまち」という印象でした。津波で壊滅したこの地区の今はその当時を思い出すのが困難なほどきれいに整地された状態です。物として残せなかった歴史は記録し、そして語り継ぐことが必要です。未来を背負って立つ子どもたちが学ぶ地域学に、まだ始まったばかりのみちのく潮風トレイルが活用されて嬉しく思いながら、50年後100年後にこのトレイルにも語り継ぐ歴史ができているのかな...と遠い目。気が早いですね。子どもたちに負けないよう、私も地域についてもっと深く調べ、微力であっても伝えていきたいと思っています。

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2021年10月11日碁石埼灯台お色直し

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

10月10日は"体育の日"と私の頭には染みついていますが、今は"スポーツの日"と改められさらにハッピーマンデー制度により10日という枠も外れ10月の第2月曜日ということに。人間界ではひとつの変化があちこちに影響を与え、あたふた対応に追われるものですが、自然界はどっしりしていますね。世の中がどうあろうといつもと変わらず、季節は巡る。今はしっとり秋の気配に包まれている大船渡市の碁石海岸です。

碁石岬に鎮座する碁石海岸の白亜のシンボル『碁石埼灯台』が、この度化粧直しをすると言うことで海上保安庁立ち会いの下、環境省パークボランティアはじめ碁石海岸で観光に携わる関係者に作業のお手伝いをさせていただく機会がありました。

碁石埼灯台は地上高10.5メートルと小ぶりながら海面からは約37メートルの位置で点灯し、昭和33年から航海の安全を見守ってきました。また、平成28年には「恋する灯台」(日本ロマンチスト協会・日本財団)に認定され、観光面でも役目が増え存在感を示している灯台です。

平成11年にタイル張りから吹き付け状に改装した時から22年ぶりの化粧直しということでとても貴重な体験ですよね、皆さん張り切って作業してきましたのでその様子をご覧ください。

では全体像のBefore-Afterです。別日に撮影したので空模様の違いはお許しください。

左がお色直し前で右がお色直し後です。

今回の作業は手の届く範囲でと言うことで灯台の1階部分と囲いを塗りました。灯台本体より囲いを見ると違いがよく分かります。白く輝く姿に生まれ変わった碁石埼灯台がなんだか誇らしげに見えるのは気のせいでしょうか。たくさんの来訪者に楽しんでもらいつつ、しっかり役目を果たしてもらいましょう。

先に「恋する灯台」と言いましたが、灯台までは石畳が敷き詰められた坂道が続きます。容易には辿り着かない、秘境感を味わえる、まさに「恋する人生のようだ」とこれが一つの認定要素だそうです。その石畳の中に見る人が見ると浮かび上がる『ハートの石』がありますよ。一つも見つけられない人も多くいます。「こじつけだろう~」なんておっしゃらずに碁石海岸にいらした際にはゆったりとした気持ちでハートの石探しをしてみてくださいね。

下の6つのうち私が見つけたハートは4つ。他の2つは別の日に友人が見つけたもの。

最後に、松林が美しい碁石海岸では燃えるような紅葉風景は拝めませんが、小さな花々が秋を知らせてくれます。少しご紹介しますね。

上段(左)ハマギク 海に向かって咲いているので海を絡めて撮影するのが難しいのです

  (右)リンドウ 背の高いライバル植物たちの足元にひっそりと咲く姿が愛おしい

中段(左)アキノキリンソウ この個体は頭でっかちで重たそうですね

  (右)ハギ 秋といえばのハギですが、西陽に輝く姿を見てつい撮影

下段(左)ナガボノシロワレモコウ イモムシみたいな花姿、長い名前ですね

  (右)ハマボッスの実 春の開花から秋の結実まで楽しませてくれる海浜植物です。

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2021年09月16日被災地に癒やしの青紫の花

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

三陸でも稲刈りが始まり、木の実や果実が食べ頃のなにかと忙しい秋がやってきました。

今日は被災地で晩夏から秋にかけて目を楽しませてくれる素敵な植物をご紹介します。

【2021/9/5撮影】

きれいな青紫色の花を咲かせるこの植物は『ミズアオイ』といいます。淡水に生える植物で、花期は8~10月、肉厚の葉はハート型で特徴的です。このミズアオイ、環境省レッドデータブック2020では準絶滅危惧(NT)に分類されていますし、いわてレッドデータブックでもAランクとされ、とても希少な植物です。古くから日本全国の水田・湖沼などで親しまれていた植物でしたが近代の水路の改良や、除草剤が使用されるようになってから数が激減、簡単に目にすることができなくなってしまったとのことです。

人間たちの都合で姿を消してしまったミズアオイですが震災後、岩手・宮城・福島の被災地各地で復活していると話題になっていました。私が最初に耳にしたのは震災翌年2012年、福島県の楢葉町のミズアオイでした。ミズアオイの種子は底泥や土壌中で休眠し、適した環境が整うまで待つという、「埋土種子(まいどしゅし)」でした。大津波で大規模な土壌の攪拌がおき、復興工事の手の回らない場所で現れた湿地環境でここぞとばかりに大発生したのです。今咲き誇っているミズアオイの種は、震災前の街の状態に開発された時に埋まったものなので、40年以上も間泥の中で眠っていたことになります。

復興工事は防潮堤や宅地、主要道路などが最優先で行われてきましたが、年月が進むにつれ以前の生活環境に戻すため隅々まで区画整理や整地がなされてきました。実は、震災後せっかく復活したミズアオイたちも再開発・復旧のため埋め立てられ再び眠りにつかされた場所もあるそうです。今までの生活を取り戻すための開発がもちろん最優先で大切ですが、生態系もうまく守れる、共存できる方法なども考えていけたらよりよい未来が待っているのではないかと思いました。

「ミズアオイ復活!」と嬉しい話題ではあるのですが、いろいろ考えさせられました。とはいえ、ミズアオイの埋土種子戦略のすごさは被災地に元気と勇気を与えたことには違いありません。未来に残せる何かは今どう行動するかにかかっていますね。考えることを怠らず、日々精進して参りたいと思います。

今回撮影したミズアオイ群生地は、岩手県釜石市片岸町の新しい防潮堤沿いにある遊水池です。片岸町では震災の前からミズアオイを守ろうと活動してきた方々がいるそうです。今はこの遊水池に部分的に生育している状態ですが、ミズアオイで一面が覆われる景色が今からとても楽しみです。

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2021年09月01日無人島で出会った『いきもの』

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

岩手県釜石市の三貫島へ定期調査へ行ってきました。

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釜石市の東北東9km、箱崎半島の南海上に位置し、標高128m、周囲約4kmの無人島であり、島の周囲は断崖をなしており、また、浜は岩礁となっている。島全体が国立公園特別保護地区に指定(昭和30年5月)され、暖地性のタブノキを主体とした自然林が良好な状況で保全されており、オオミズナギドリ、ヒメクロウミツバメ等の海鳥が繁殖している。なお、三貫島は、「三貫島オオミズナギドリ及びヒメクロウミツバメ繁殖地」として国の天然記念物に指定(昭和10年12月)されている。

国設三貫島鳥獣保護区三貫島特別保護地区指定計画書より

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三貫島への上陸は一般的には禁じられています。

無人島とは聞くけれど、どんな島なのだろう?

そう思われる方も多いことでしょう。

今日の日記は三貫島の「いきもの」にフィーチャーしてお届けします。

特定の鳥の繁殖地として保護されている島ですが

その鳥たちの他にどのようないきものが住んでいるのでしょうか。

*地面を歩く・這う系統*

【左】カタツムリの殻を発見。中身は空っぽでした。左巻きですね、ちょっと珍しい。

【右】大きなアリを発見。ムネアカオオアリでしょうか。このほかにも数種類大小のアリを見つけました。

【左】可愛らしいきれいな青虫を発見。シロチョウ科の幼虫でしょうか。

【右】ふさふさの毛をまとった毛虫を発見。蛾の幼虫でしょうか。

*羽ばたき系統*

【左】枯れ葉のようなガを発見。緑の葉っぱの上では目立ちます。

【右】小さな紫色のチョウがたくさん舞っていました。ルリシジミでしょうか。

【左】おもしろい模様の羽を広げてポーズする虫を発見。ハエの仲間でしょうか。
【右】涼しげに鳴くミンミンゼミ発見。抜け殻は見つけられませんでした。

この他、タブノキを好むアオスジアゲハや

秋らしくトンボも数種類確認できました。

滞在時間4時間で、出会えたいきものはこのくらいなので

普段の山中で見かけるいきものの数と比べたら少ないですよね。

生息する獣類がいないためでしょうか。

本土から9㎞も離れた孤島までどのように虫たちが移動してきたのか、

この地で孵化したのか、など想像するのもおもしろいですね。

島へ向かう途中の海上ではこの辺で生まれ育った

若鳥たちをみかけました。

オオセグロカモメの若鳥。

多くの若鳥は巣立っているこの時期、この子はまだ

お母さんカモメの近くを離れられずにいるようでした。

ハヤブサの若鳥が睨みをきかせていました。

遠くからでもその存在感に目を惹かれます。

いかがでしたでしょうか。

簡単に行ってみることはできない島ですが

どのような環境がそこにあるのか、少しでもお伝えできればと思っています。

次の上陸は冬です。

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