十和田八幡平国立公園 十和田
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2021年03月29日春の音
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ
3月24日早朝、今季初の山鳩の声が聞こえました。
それに負けないように、キツツキの仲間がドラミングをして、
朝の静寂に心地良い響きを与えてくれます。
毎年やってくるアオゲラと思っていたら、アカゲラでした。
桐の大木の枯れ枝をつつき、自己アピールしているようです。
しばらくして場所を変えると、違う音になります。
餌を食べる時と、縄張りを主張する時で、つつき方が違い、音も違うようです。
森の音楽家ですね。
〈お腹がふくらんでいるように見えます〉
先日の地震で、皆様の地域に被害はありませんでしたでしょうか。
あの緊急地震速報の音には、毎回驚かされます。
津波という単語を聞くと、いっきに10年前の記憶が蘇ります。
そして、防災用品や非常食、車のガソリンのチェックなど、
たくさんの忘れていたことを思い出させてくれます。
先日、自宅周辺の日だまりの中にフキノトウを見つけました。
さっそく蕗味噌と天ぷらです。
〈4年間お世話になった十和田八幡平国立公園管理事務所にもフキノトウの目覚め〉
フキノトウは春の山菜ですが、雪の降り始めの12月に、
雪をかき分けて探したものを食べるのもまた良いものです。
まだまだ固い蕾ですが、しっかり春の香りがしています。
春の山菜の苦みは、冬の間に身体に溜まった毒素を排出するとも言われています。
ちょっと気が早いですが、様々な春の山の幸を味わうのが楽しみで、ワクワクしてしまいます。
手始めに、採取する適期が雪解け前と紅葉時期の落葉前後、というクロモジを採取して、
お茶にした残りを事務所の窓辺に飾っていました。(国立公園外の自宅周辺で採取しました)
2週間ほど過ぎ、やっと新芽が開いてきました。
〈一年目の枝の葉芽:ふわふわです〉
〈花芽のついた葉芽は透明できらきら〉
とある薬用酒の会社が、原材料であるクロモジを買い付けに来るのは、
採取適期ももちろんですが、薬効の高い親指の太さ以上の枝ということです。
昨年は枝と新芽と花の三種のお茶を試し、今年は新芽が出る前のお茶を試しました。
このあと花の時期まで作業が続きます。
遠くに出かけなくても、自宅周辺に山の恵みがたくさんあるのは、とても有り難いことです。
また先日は、蔦野鳥の森に巡視に行ってきました。
〈早春の静寂も良きかな〉
〈まばゆいばかりの赤倉岳の稜線〉
紅葉の時期の朝焼けの風景が有名な蔦沼ですが、積雪期もまた趣があります。
遊歩道は閉鎖されていますが、自己責任のもとスノーシューで散策する方が多くいらっしゃるようで、
たくさんの踏み跡がありました。
この日は平日でもあり、誰も居ませんでした。
午後の日差しの中、ゆったりと時が流れていきます。
日が傾いてくると、森の向こうから光りが差し込み、
幻想的な光景になります。
森を一人占め(二人でしたが)できる至福の時でした。
長く厳しい冬が終わりを告げるように、ときおり優しいなごり雪が舞い降りてきます。
まだまだ雪を楽しみたい私は、少し寂しい気持ちになります。
春は別れの季節で切ない時期でもあり、新しい環境で不安な気持ちにもなりますが、
心豊かになれることを探しながら、前を向いて歩いて参りましょう。
2021年03月17日10年目に寄せて
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ
今年も私の3/11が何事も無く過ぎました。
〈芽吹きはじめたヤナギと兜島〉
岩手在住の頃は、必ず仕事を休み、三陸の地に向かい黙祷していました。
青森に着任してからは、遠くなりましたが、平穏な日常に感謝しながら、
その場所で遠く離れた故郷を思い黙祷しました。
〈マンサクの祈り〉
震災後訪れた陸前高田の、真っ暗だった空に、星が綺麗だったこと。
明かりが全く無くて、砂利道を運転していたらすぐ側が海だったこと。
毎週のように通って、倒壊した家の片付けを手伝った時の臭い。
忘れたと思っていましたが、今朝、雪解けが始まった茶色の地面とそこに置かれたものが、
瓦礫の山に見えてしまいました。
実際に被害に遭われた方々の心を思うと、胸が締め付けられました。
復興という言葉を耳にする機会が、秋田在住の今はほとんど無くなりましたが、岩手、宮城、
福島などは、10年が経っても復興はこれからも続いて行くと感じています。
何があろうと、花咲き乱れる春、綠深き夏、実りの秋と季節は流れて行きます。
〈はじらいながら。。〉
〈花 葉芽 いがいがした虫こぶ:マンサクメイガフシ〉
これから訪れる桜の季節は、別れの時期とも重なりセンチメンタルになりますが、門出の春でもあります。
心を癒やしてくれる風景や花々、自分しか見られない瞬間をこれからもお届けします。
〈穏やかな夕暮れ〉
たくさんの方々の命日に、合掌。
〈乙女の像が黙祷しているように見えました〉
2021年03月05日春の使者
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ
弥生とはいえ、氷点下に冷え込んだ朝は、木々の霧氷がキラキラ輝き、穏やかな湖面にはガラスのような氷の膜がはり、言葉にならない美しさです。
車を停めてカメラを構えている方をちらほら見かけました。自分はスマートフォンカメラですが、4日の朝の風景をお届けします。
〈この上を歩いて行けそうだと思いました〉
〈4年前に着任してすぐに、白きたおやかなる峰と勝手に名付けた櫛ヶ峯〉
※手前の御鼻部山は標高1010m。車道と展望台があり、晴れた日は岩手山が遠望できます。
〈十和田三山と休屋;今日も一日見守ってくださいと祈る〉
〈お馴染みの風景:ひょっこりひょうたん島と名付けています〉
〈誰の足跡でしょう?:湖畔に下りて踏み抜いた私の足と手の跡です〉
〈春はまだですか?と顔をのぞかせているマンサク:くるくるの花弁を控えめに広げています〉
思えば、十和田湖に来てから毎年この時期は、マンサクとカツラを追いかけているように思います。けして派手さはありませんが、きびしい冬を乗り越えて真っ先に私達に春の彩りを運んでくる可愛らしい子達が、とても愛おしくてたまりません。過去の日記を振り返ると、マンサクとカツラの写真ばかりです。3月になると毎回のようにマンサク載せていましたね。
(日本海側は主にマルバマンサクで、少し色が薄いと言われていますが、交雑種も多いです)
(昨年の日記に掲載したマンサクの様子です)
http://tohoku.env.go.jp/blog/2020/03/post_516.html
http://tohoku.env.go.jp/blog/2020/03/post_514.html
http://tohoku.env.go.jp/blog/2020/03/post_512.html
冬の間は自然の中で五感を働かせようにも、凍てつく空気が五感を鈍らせるようです。しかし3月に入ると、春の色や香りがあちこちにあふれ出し、身体中の細胞を刺激するような気がします。マンサクのイエローとカツラのピンク、そしてその香りは砂糖菓子と肉桂のように感じられ、食欲をそそります。香りや虫の少ないこの時期に、マンサクが繁栄するための手段でしょうか。また、枯れ葉が香るという通説のカツラは、若葉の頃も香ります。(樹木を害虫から守る香りとも言われます)樹木のそばを歩く時は、少し立ち止まって嗅覚を研ぎ澄ませてみてください。
マスクを外して、思いっきり深呼吸したいですね。
なかなか落ち着かないご時世ではありますが、こんな時だからこそ、物事をじっくり見たり考えたりする機会かもしれません。
自分自身は外に出るといつも、花や空や木々に見とれたり、まじまじと細部まで見てしまったりして、肝心の業務の写真が一枚足りなかったりということが良くあります。高い場所にあるマンサクやカツラの花を、背伸びして首が痛くなるまで凝視して、カメラを向けている姿を想像してみてください。
そんな業務中に撮影した写真を展示した「十和田八幡平国立公園写真展」の、今年度最後の会場となる、鹿角市文化の杜交流館「コモッセ」では3月10日までの間、開催しております。図書館では、普段は書庫にある八幡平の貴重な資料の展示もしています。最終日の10日は、私と鹿角のアクティブレンジャーが10:00~15:00の間、写真の解説等をしながら会場にいますので、お近くにお越しの際にはどうぞお立ち寄りいただき、ご意見をいただけたら幸いです。
10日は、アンケートにお答えいただいた方へ、展示写真で作製したポストカードを用意しています。
〈展示写真の1枚〉
どうぞよろしくお願いいたします。
最後に、4年目にして初の、十和田湖と私の写真を勇気を持ってご披露します。
業務で自分の写真を撮る必要があり、人に撮られるのが苦手な自分は、湖畔で自分で撮影して提出したところ、背景が大きく写った写真が欲しいと言われ、再度撮影することになりました。
村田アクティブレンジャーに撮影をお願いして、何とか業務完了しました。
思えば、いつもファインダーをのぞいているけれども、自分を撮ってもらうことは皆無でしたので、とてもいい記念になりました。ありがとうございました。
〈不採用写真:撮影者 伊藤〉 〈採用写真:撮影者 村田〉
今後とも十和田湖と伊藤をどうぞよろしくお願いいたします。
〈穏やかな一日の終わり:3/4 十和田ビジターセンター前の夕景〉
2021年02月19日如月の情景
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ
言葉もなく
ただただ心奪われる情景あり
〈2/12 生出キャンプ場前の夕景:御鼻部山やはるか櫛ヶ峯もほんのり染まります〉
言葉が頭の中で
ぐるぐる廻り続ける情景あり
〈2/17桟橋のロープに氷りのカーテン:幼き頃、母が干していた三陸の岩海苔を思い出しました〉
〈枝に湖のしぶきが凍り付いてぶら下がり、ナナカマドは肩がこりそうです〉
〈ナナカマドの新芽:氷の衣装をまとい、何を思う?〉
〈湖畔の樹木も氷りのブーツをはいているようです〉
〈常緑のツルマサキもガラスの衣装〉
先日の地震や爆弾低気圧で被害に遭われた皆様、心よりお見舞い申し上げます。
深夜にスマホの聞き覚えのある音を耳にした時、頭の中に一気に10年前の震災の記憶が蘇りました。
しかし我が家はほとんど揺れず、そのまま寝入ってしまいました。
早朝暗いうちに慌ただしく山に出かけ、地震の事も忘れ山を満喫しました。
下山後スマホを開くと、着信やショートメールがたくさん入っています。
余震や、まだやってくると思われる寒波に十分用心しましょう。
ちなみに、文化的な生活とほど遠い暮らしの伊藤は、停電の際にも、
暖房や調理、トイレなど、日常生活に全く困ることはなく、
究極のエコなスローライフを満喫しております。
厳しさの中に隠れている、春の兆しも見つけましたよ。
〈マンサク:吹雪でもみんな一緒なら寒くないよ〉
〈ブナの昨年の殻斗と膨らみ始めた新芽:今年も実りある一年でありますように〉
2021年02月12日ホワイトアウトの睦月から如月へ
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ
全国的に悪天候だった睦月の月末、みなさんの地域に被害はありませんでしたでしょうか?
如月も2週目、月曜は小雪舞う底冷えする朝でした。
〈2021/2/8 出勤時の一度目の朝日:左はカツラの雄株 右はサワグルミ〉
※峠から外輪山の中に入ると太陽は沈んでしまい、湖畔ではまた登る朝日を見る事ができます。
コロナ禍で世界中の車の往来が減り、地球温暖化にブレーキがかかったのか、空気が澄んでネパールのカトマンズの町から以前は見えなかった世界最高峰のエベレストが眺められる日がある、というニュースを見ました。アルピニストの憧れの山エベレストを、コロナ禍が落ち着いたら眺めに行こうと思うこの頃です。(けして登ろうとは言いませんからご安心を)
初詣も遠くに行けない今、パワースポット十和田神社の様子をお伝えしようと思います。
こんなご時世ですから、写真に向かって祈る事で、御利益がありますように。
また、月末から2月始めにかけて、出勤時に何度かホワイトアウトに見舞われました。峠のカーブで突然前が見えなくなり、方向が全くわかりません。ハザードを点灯しながら止まるしかないのですが、後続車がいないのを祈るのみでした。
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〈吹雪の日の湖畔のオオヤマザクラ:咲く日が待ち遠しい〉
降り続く雪の合間にのぞく青空がとても眩しいです。
以前、木々の冬芽を紹介しましたが、空を見上げて、葉の落ちてしまった樹木の枝ぶりを眺めるのも楽しみのひとつです。
〈春待つカツラの雄株〉
〈カツラの雌株には実が残って賑やかです〉
何が違うの?よく見れば違うのです。
〈オニグルミは遠くからでも冬芽がわかります〉
睦月とは正月に人が集まって睦まじくする月という意味があるそうです。
今年はコロナ事情で賑やかに集まってという状況ではなかったかと思います。
岩手出身の私自身も、帰省はおろか家族にももう一年近く会えていません。
実家では、医療従事者は自分の外出規制だけでなく、来訪者に関しても厳しく、秋田在住の自分が行くことで、二週間出勤出来なくなるということです。大変な世の中ではありますが、十和田湖畔に勤務し、八幡平の懐に住まい、日々移り変わる風景に包まれていることが、心のよりどころになっております。
しかし美しさと隣あわせの厳しさも時折牙をむき、様々な試練を与えてくれるものです。
それでも、厳しさがあるからこそ美しさがより際立つのでしょう。
日々の風景はけして同じものはなく、毎日でも飽きることなく、毎朝、毎夕、湖畔に佇みしんみり自問自答するのが日課となっています。
※アイスバブル:湖底からわき上がるガスなどが湖面近くで凍り何層にも閉じ込められて出来る現象。
目には見えなくとも確実に春の兆しが隠れていますね。鳥達のさえずりや木々の芽の様子にそれを感じる瞬間があります。
〈キハダの実をついばむヒヨドリ〉
〈かわいらしい声が春を思わせるカワガラス、シャッター音で逃げてしまいました〉
こんな時だからこそ、少しでも現地の風景をお届けできたらいいと思っています。
時折、「日記を楽しみにしています」とメールに添えてくださる方がいらっしゃり、とても励みになります。そんな方のためだけでなく、今日も伊藤は、吹雪であろうと湖畔に長靴で切り込んでいこうと決意しました。
ど ん と は れ
(故郷の岩手で民話の最後に使われる おしまい めでたしめでたし などという意味です)
それにしても、冬がどんどん加速して日にちが足りない、春は待ち遠しいものの、もっと冬が長かったらとジレンマの最近の伊藤です。
2021年01月28日ホワイトアウトの大寒前日
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ
今週の十和田湖の風景です。
〈2021/01/26 早朝 湖畔より南八甲田櫛ヶ峯をのぞむ〉
〈2021/1/26夕景〉
寒さが続いたり、雪が降り続いたりした後に晴れた朝は、凍り付いた湖面や木々のしぶき氷
がきらきら輝いて、ガラス細工の芸術品が並べられた中を通勤しているようで、幸せな気持ちになります。
〈2021/大寒前後〉 〈髭の生えたイルカ?〉 〈クリスタルのランプシェード〉
1月20日は大寒でしたね。19日の通勤時、大荒れの朝、ホワイトアウトの中、車のハザードを点灯しながら
止まったり走ったりして、やっと事務所に着きました。帰宅後の除雪が手間取ることを想定し、午後から次の日にかけて休暇をいただきました。しかし大寒当日は気温も高めで、穏やかな一日でした。
その日昼過ぎにはたと大寒であることに気が付き、早速以前に話題にした「大寒味噌仕込み」を決行したのは
言うまでもありません。
今年の秋の出来具合が楽しみです。
さて、昨年のクリスマスの日の事になりますが、酸ヶ湯温泉でイグルー(圧雪ブロックを使って作ったシェルター)を作る講習会があり、受講してきました。青森大学観光文化研究センターの佐々木豊志先生直伝イグルー製作体験講座です。世界初の講習会ということで、一日だけ参加した私はブロックを切り取るところまでのカッターの認定証をいただいてきました。世界初の認定証とのことです。たくさんのブロックを切り出し、
更に積み上げるには技術と人手が必要ですが、犬小屋くらいの大きさなら一人で作れるかもしれませんね。
また冬の楽しみが増えました。
〈踏み固めて切り出し積み上げます〉
一月も残すところあと僅か、冬本番はこれからですが、先週末は日差しも春のような陽気でした。湖畔を歩くと気の早いマンサクの花が今にも笑い出しそうな勢いです。
〈2021/1/26 御前ヶ浜の春待つマンサク〉
〈2021/1/26 厳しい環境に負けず枝に残るツリバナの実〉
冬を楽しむ予定満載の、充実したウインターシーズンを過ごしたいと思います。まずは八甲田の樹氷、
国立公園ではありませんが日本三大樹氷の一つと言われる森吉の樹氷、そして日本一の密度と言われる八幡平の樹氷が待っています。ちなみに樹氷は過冷却された霧や水滴が木に付着したもので風上に向かって大きくなります。日本で樹氷が見られる場所は他には蔵王や西吾妻などがありますが、ロープウエーで気軽に行ける
八甲田、登山者の聖地と呼ばれ簡単には人を寄せ付けない八幡平、ぜひ冬しか会えない十和田八幡平国立公園の絶景をご自身の目でみてほしいものです。
今シーズンのまだかわいい年末の八幡平の樹氷をご覧ください。
〈2020/12/29 口から炎を吹き出しているようなスノーモンスター〉
〈2020/12/29 大好きな場所 八幡沼付近より岩手山の夕景〉
ただいまどんどん成長していることと思います。
遠出をせずとも、身近な十和田八幡平国立公園を満喫しましょう。
2021年01月14日十和田ビジターセンター企画展「鉱山から始まった十和田湖のくらし」
十和田八幡平国立公園 村田 野人
こんにちは、十和田八幡平国立公園管理事務所の村田です。
今回は十和田ビジターセンターで開催中の企画展の紹介です。
現在、十和田ビジターセンターでは、令和3年1月12日から2月21日(日)まで、企画展「鉱山から始まった十和田湖のくらし」を開催中です。
江戸時代に十和田湖は、最盛期から衰退しつつも信仰の山であり人跡まれな奥山でした。そのわずか30から40年後大正の初め、湖畔にはホテルが立ち、自動車が走り、郵便局があり、観光地として注目を集め始めていました。この信仰の時代と観光の時代をつなぐ、ミッシング・リンクこそ鉱山の時代でした。
十和田湖に人が住み始め、集落ができていく、その過程には湖畔の鉱山開発と深い関係がありました。企画展では歴史資料を基に明治時代の十輪田銀山・鉛山の発展と生活の様子、後世に鉱山が遺したものについて紹介します。
<企画展「鉱山から始まった十和田湖のくらし」
※企画展の詳細はこちら
タイトル:企画展「鉱山から始まった十和田湖のくらし」
期 間:令和3年1月12日(火)から令和3年2月21日(日)9:00ー16:30
(毎週水曜日は休館)
会 場:十和田ビジターセンター
(〒018-5501青森県十和田市奥瀬十和田湖畔休屋486)
主 催:十和田ビジターセンター運営協議会
資料提供・協力:小坂町総合博物館「郷土館」、小坂町町史編さん室
協 力:環境省東北地方環境事務所十和田八幡平国立公園管理事務所、(一財)自然公園財団十和田支部
2021年01月05日初春の慶び
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ
謹んで初春のお慶びを申し上げます。
周辺の木々に多く見られる宿り木が、青空に映えてとても美しい季節です。
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〈冬も元気なアカミノヤドリギ〉
「あしひきの 山の木末(こぬれ)の 寄木(ほよ)とりて
挿頭(かざし)しつらくは 千年(ちとせ)寿(ほ)くとぞ 大友家持」
「山の木の梢の寄木を取って
挿頭(かざし=髪に挿す草花や枝)にしたのは、
千年(の世)を祝ってのことです。」
昨年の今頃は、こんな世情になるとは思いもせず、冬の間は何処の山に行こうかと
新しい年のわくわくすることばかりを考えていた伊藤です。
出かけたい山は、国内はおろか県外にさえも気軽に出かけられない状況が続いています。
そんな中で、少しでも十和田八甲田奥入瀬の美しい風景をお届けしようと思ってきましたが、
拙い写真ゆえ素晴らしさが伝わったかはわかりません。
昨年も温かく見守っていただき、たいへんありがとうございました。
新しい年も、すぐには平穏無事にとはいかないと思いますが、心穏やかに、楽しんで、
人の役にたてるような人間でいたいと思っています。
本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。
さて、宿り木を良く観察すると、黄色や橙色の実の色の違いだけでなく、枝にも違いがあり
種類の違う宿り木であることを教わりました。
冬枯れの樹木に、花が咲いたように見える宿り木は、古くから神聖なパワーを持つとされる
縁起の良い植物と知ると、わくわくしてきますね。
〈ホザキヤドリギ:枯れ木に花の咲いたよう〉
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〈ホザキヤドリギの実:葉が落ちても頑張っている〉
仕事始めの4日は、年末年始に降り続いた雪を一度に除雪しなければならなく、
事務所全員で作業しました。
〈4日の朝の積雪状況〉
〈除雪機では難しい部分は手作業です:十和田事務所長奮闘中〉
また、12月24日~1月31日まで、イオン下田ショッピングセンタースターバックス前にて、
「十和田八幡平国立公園写真展」を開催しております。
お近くにお越しの際は、どうぞお立ち寄りくださるようお願いいたします。
また今後、管内でも数カ所予定されていますので、下記スケジュールを参照のうえ、
ご来場よろしくお願いいたします。
○青森県
おいらせ町 イオンモール下田 12/24~1/31
○秋田県
鹿角市 文化の杜交流館 コモッセ 2/17~3/10
○岩手県
八幡平市 結いの広場(市役所ホール)1/15~2/4
最後に伊藤個人の恒例年始歌始め
ひさかたの まばゆき空に 寄木(ほよ)映えて
よろづのわざわい 去りゆかん
2020年12月22日寒さを楽しむ
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ
全国的な寒波で大雪の様子が報道されていますが、
雪の被害に遭われた方々には、心からお見舞い申しあげます。
雪に慣れている地域なので、公園内では特段の混乱はありませんでした。
酸ヶ湯温泉の積雪量は2メートル以上になり、友人知人や家族から、大変ねと言われますが、
本人は美しいこの時期を楽しむ気満々ですので、ご安心ください。
そんな寒い季節の楽しみを挙げてみたいと思います。
雪が降るとまず目につくのが、雪原に残された足跡ですよね。
アニマルトラッキング(動物の歩いた足跡、羽跡、爪痕、食痕、糞などから動物の行動や生活、
生態を読み取ること)は、冬の自然観察の楽しみの一つで、探偵気分が味わえます。
〈冬も青々としたツルマサキの枝とリスの足跡でしょうか?〉
春を待ちわびる樹木の冬芽の観察も欠かせません。
〈寒さに耐えるムラサキシキブの実と冬芽〉
〈マンサクの丸い花芽と尖った葉芽と虫こぶ〉
〈芽鱗が剥がれかけ、陣笠を被った顔のように見えるリョウブの冬芽〉
〈不思議な模様のコブシの冬芽〉
〈←葉芽に毛があるのがコブシ、無いのはタムシバ〉
〈王冠を被り微笑んでいる王子様のようなオニグルミ〉
厳冬期の十和田湖周辺では、蓮氷(割れた氷が波でぶつかり合い丸くなって蓮の葉のように見える)や
しぶき氷(風が強く気温の低い日に、波が木などに凍り付いたもの)が出来て、
寒ければ寒いほど素晴らしい芸術作品が出来上がります。
また奥入瀬渓流の多くの滝は凍り付き、車に特別なライトを積んで滝を照らし、
鑑賞するためのツアーも開催されています。
この寒波で一気に成長しました。
https://www.towada.travel/ja/oirase-ice-falls
そして何と言っても冬の醍醐味を味わえるのは、八甲田や八幡平の樹氷ではないでしょうか。
何度見ても圧倒されてしまいます。
日本三大樹氷の一つである八甲田、日本一のオオシラビソの密度と言われる八幡平と、
十和田八幡平国立公園内では、この二つの広大な樹氷原が存在しています。
〈2018/1/中旬 八甲田の樹氷〉
〈2019/2/下旬 陵雲荘付近から岩手山を望む〉
そんな恵まれた環境で仕事をさせていただいて幸せなことです。
遠くに出かけなくても、湖畔にやってくる野鳥をのんびり観察するのも楽しいものです。
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〈車に驚いて飛び立つオオバン〉
さらに、忘れてはいけないのが、「食」ですね。寒さゆえの食文化は地域によって様々ありますが、
私が個人的に心待ちにしているのは、味噌仕込みと干し餅作りです。
母の教えは、「味噌は大寒に仕込むこと」でした。雑菌が少なく失敗が少ないということです。
十和田湖に来た年の冬に仕込んだものが、良い味になっています。
また登山の際の行動食にしている干し餅(独自のレシピで、お粥に塩や砂糖などで味付けし
成形して低温下で乾かすもの)はマイナス10度以下にならないと上手くできないので、
気温が低くなる日を待って、作業をします。
今年は、北陸や信州の郷土料理である、柚子釜という茶菓を作ってみました。
寒風に2~3ヶ月吊して干し、春が来る頃に食べることができるそうです。
とても楽しみです。
「寒酒」「大寒卵」「寒の水」という言葉があるように、冬は豊かな食を提供してくれる有り難い季節です。
スノーランブリング(雪の上をぶらぶら歩く)や、冬景色の中を漕ぐカヌーも楽しそうですし、
めいっぱい楽しんでいるうちに、あっという間に春になっていそうです。
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〈天気が良ければ一年中楽しめるカヌー〉
更なる楽しみは、昨年たった一度しか運転しなかった除雪車を(業務ではありませんでしたが)
今年は運転する機会があるのか、わくわくしています。
伊藤の楽しみばかり挙げてしまいましたが、皆さんもご自身の冬の楽しみ見つけてみませんか?


十和田八幡平国立公園管理事務所の伊藤です。
とご挨拶してから、早いもので4年が過ぎ去り、5年目に入りました。
例年4月1日に開通する八甲田ゴールドライン(酸ヶ湯温泉~谷地温泉間)の雪の回廊と、
4月16日にオープンする、リニューアルした酸ヶ湯インフォメーションセンターに行ってきました。
〈2021/4/1 標高1040m笠松峠〉
〈天気が良くご機嫌の二人です 上:南八甲田 下:北八甲田〉
〈まんじゅうふかし:除雪不要のようです〉
〈可愛らしいイラストに癒やされる空間になりました〉
〈4年間撮りためた写真の一部を使っていただきました〉
酸ヶ湯インフォメーションセンターの様子は、またお知らせいたします。
〈酸ヶ湯インフォメーションセンター駐車場前の雪の壁の前で記念撮影する方も〉
平日とはいえ、道路開通を待ちわびた人々で、酸ヶ湯温泉周辺は賑わっていました。
これからゴールデンウィーク過ぎまで見られる雪の回廊ですが、天候次第で通行止めのこともありますので、十分な情報収集http://www.koutsu-aomori.com/cgi-bin/index.cgiのうえおこしください。
これから、残雪、新緑、春の花々のコラボレーションが楽しみな、十和田八甲田エリアです。