ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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秋田

1036件の記事があります。

2008年02月06日カラスも面白い!

秋田 足利 直哉

 今、大潟村の野鳥の中で(数の上で)一番の勢力を誇っているのはカラスかも知れません。私たちが普段の生活でもっとも多く目にする鳥もカラスかも知れません。皆さんの中には「カラスはゴミをあさったりする迷惑な鳥」と思っていらっしゃる方も多いと思います。
 普段何気なく見ているカラスには2種類あります。普段都市部で目にするカラスはハシブトガラスと言ってその名前の通り嘴が太いのが特徴の大型のカラスです。【ハシブトガラス】は主に市街地・都市部に生息しています。また大潟村のように林があったり木立が点在する農村部には【ハシボソガラス】が生息し、大まかな棲み分けがされているようです。なので大潟村でよく見られるのはハシボソガラスでハシブトガラスは大潟村では殆ど見ることがありません。総合学習で大潟の野鳥を調べてからカラスに興味を持った生徒が修学旅行先でハシブトガラスの群れを見るのを楽しみに出かけて行ったという話があるくらいです。
 しかし現在の大潟村で最も多く目にするのは「留鳥」として年中見られるハシブトガラスでもハシボソガラスでもなく、「渡り鳥」として渡来した【ミヤマガラス】です。
 

【ハシボソガラス】一年を通して見られる。大潟村でカラスと言えばこの種。ハシブトガラスよりやや小型とされる。

【ミヤマガラス】ハシボソガラスより小型。嘴の付け根部分が白っぽく嘴全体も灰色をしている。少なく見ても3000羽以上が大潟村内で越冬中。※一番右はハシボソガラス

↑の上に写っているのが【コクマルガラス(淡色型)】ミヤマガラスよりも更に小さくハトくらいの大きさの渡り鳥です。

 春~秋にかけて大潟村でカラスの大群を見ることは少ないのですが今はもの凄い数のカラスが干拓地内の至る所で見られます。見ると大半が嘴の色が灰色のミヤマガラスです。更によく見るとその中に後頭部から胸、腹にかけて白色で小型のコクマルガラス(淡色型)を見つけることが出来ます。(実際の目視で2羽を確認しましたが事務所で写真を精査したところ更に2羽確認できました。)更に更に目をこらして見るとほぼ全身が黒い(実際は暗褐色と言った方が近い)コクマルガラス(濃色型)が見つかります。この時は1羽確認できました。
 大群で全身真っ黒のカラスが居ると何となく「怖い・気持ち悪い」と思ってしまうかも知れませんが、一歩踏み出して観察してみると「普段は見られないカラス」が見られますよ!!カラスもよく見てみると実は全身真っ黒ではないことが解ったりして「結構面白いかも?」と思うのではないでしょうか?かく言う私も「カラス面白いじゃん!」と思った一人です。

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2008年02月04日餌場の共有

秋田 足利 直哉

 暦の上では「立春」と言うことですが、窓の外は雪が舞っていますし、例年であればこれから冬本番を迎えます。2月上旬は「横手のかまくら」など秋田の冬祭りが目白押しです。今年は何処に行こうかな?

 大潟村も一面の雪世界!山手線がすっぽり収まる広さの干拓地が雪でパックされています。場所によっても違いますが、管理棟周辺の積雪を見るとおよそ20~30cmと言ったところでしょうか?
 そんな中でも時々土や草が見えている所があります。そういった場所は決まって鳥が餌を採った場所です。ヒシクイやマガンが餌を食べた痕は水田や畦道に見ることが出来ますが、範囲が広い上に稲株や草が散らかっていることが多いので容易に「此処でヒシクイ達が餌を食べていたんだな」と想像できます。
 ヒシクイ達がひとしきり餌を食べてそこから飛び去った後には小鳥たちの姿を見る事が出来ます。

【ハクセキレイ】ヒシクイが飛び去った後に餌を採りに来ていました。

【ムクドリ】数羽のスズメも混じっています。色んな嘴の使い方をして餌を採っていました。

【スズメ】頭まで雪につっこんで餌を採っていました。

 そんな場所で良く目にするのがハクセキレイ・ムクドリ・スズメです。この3種の餌の撮り方に注目して観察しているとそれぞれが違った餌の採り方をしていました。私の観察した範囲での話ですので全てがそのようにすると言うわけではないことをお断りした上で・・
ハクセキレイは動き回っては、見つけた餌をつまんで、また次の餌を探して移動を繰り返していました。
ムクドリは嘴で色んな作業をしていました。雪を寄せたり、土を掘ったりと段取りをした上で餌を食べていました。
スズメは嘴だけでなく顔まで雪に突っ込んで餌を食べていました。「シャニムニ」とでも言いましょうか、餌を採るのに夢中になっていました。

 鳥たちにとって餌の調達が難しい冬本番ですが、大潟村内の貴重な採餌場所を上手に共有しているようです。そこで同じような餌を食べているようですが、食事スタイルは鳥によって色々です。

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2008年01月31日野外実験

秋田 足利 直哉

 今となっては小学校だったのか中学校だったのか・・何年生の時に習ったのか・・忘れてしまいましたが、確かに「水は摂氏0度で氷る」と習った記憶があります。ずっとそれが正しいと信じて過ごしてきましたが、実はそれは正しくないと言うことをご存じでしたでしょうか?先日そんな実験を見せてもらいました。

温度計は-8.5度付近を指していますからこの気温では水は氷るはずですよね?

ところが屋外に置いてあるペットボトルは氷っていません。0度を下回っても凝固せずに液体状態です。

屋外に置いてあった2Lサイズのペットボトルです。向こうの衣服が透き通って見えますからまだ水の状態であることが分かりますね?

そのペットボトルを軽く叩いて衝撃を加えます。すると・・・

みるみるうちに白く曇っていきます。水(液体)から氷(固体)に変わっていきます。

時間にして僅か十数秒で2L全体が氷になりました。触れてみるともう固くて体積も増えてペットボトルがパンパンです。

 これが何の実験なのかまだ言っていませんでした。実は『樹氷の出来かた』を見る実験です。以前の日記で樹氷の出来かたを解説した①『雪雲の中にある過冷却水滴が葉や枝に衝突し、その衝撃で凍結・付着して氷層が出来る(いわゆるエビの尻尾が出来る)。』の部分の実験です。
 実際の樹氷は空気中にある0度以下の水蒸気(気体)が衝突による衝撃で氷り(固体)になるのですが、実験では水(液体)に衝撃を加えて氷り(固体)に変わる様子を観ることが出来ます。因みに液体から固体に変わることを凝固と言いますが、気体から固体に変わることを昇華と言います。
 0度以下に冷やされた水蒸気(過冷却水滴)が針葉樹の葉にぶつかった衝撃でエビの尻尾になるというのが想像できますよね?最近テレビなどで水をこぼしていくと氷に変わっていくと言うシーンを見たことはありませんか?あれと同じ状態なんです。
 水蒸気や水は衝撃もなく冷やされていくと0度以下になっても直ぐに氷るということはないようです。このことは私が習った当時の教科書には書いてなかったような気がします。

 自然の中にはまだまだ教科書で習った通りではない事や科学の力では解明できていない現象がたくさんあるそうです。自然の中でそんな現象や事物を探してみるのも楽しいかも知れませんね!この日記でもそんな話題を取り上げていけたらと思っています。

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2008年01月29日承水路の今 (睦月のころ)

秋田 足利 直哉

 先週末の寒波がもたらした雪がまだ道路などに残っていますが、昨日になって寒さがゆるんで路地や歩道はとっても歩きにくい状態です・・。この日記を書いている今、秋田市内は「雨」です。いったいどうなっているのでしょうか?

 さて・・以前、この日記で同タイトルの日記を書いたのは11月21日ですから霜月の頃でした。それから月日は流れ、西部承水路は見た目にも大きな変化を見せています。

【ヒシクイ】結氷した水面ですが、ほんの時折鳥の姿があります。この日はヒシクイが居ました。

 先月から断続的に始まった水面の凍結ですが今月はもうずっと結氷しています。そうなると湖面は賑やかになります。八郎潟残存湖の冬の風物詩「ワカサギ釣り」です。皆さんそれぞれの場所に色んな工夫をして釣り糸を垂らしているようです。『そんな状態だから鳥は居ないよな?』と思っていましたが、意外と鳥の姿は見つかります。

【ダイサギと釣り人】結氷している水面が僅かにゆるんで居る場所には必ずと言っていいほどダイサギが居ました。

 そして目線を水面から湖岸に生えているヨシ・ススキや低木に移すとこれがまた意外なほど鳥の姿が目に入ります。スズメ・ホオジロなどよく見られる鳥たちですが、そんな彼らに一層の親近感を覚えます。
 厳冬期の静かな承水路ですが、だからこそ身近な鳥たちをじっくり観察できる良い季節なのかも知れませんね?

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2008年01月25日秋田杉の樹氷

秋田 足利 直哉

 昨日の秋田県内は強風の影響で公共交通機関のダイヤが大幅に乱れました。私が帰宅時に利用する電車も1時間半以上の遅れ・・。また道路もツルッツルに凍結していて雪に慣れた秋田の人でも足を滑らせている光景を何度も見ました。今もまだ強風や雪による影響が予想され、週末も予報はよくありません。お出かけを予定されている方は時間と心に余裕を持って行動しましょう!
 
さて、下の写真は森吉山の外輪山石森山頂付近から北西方向を写した物です。



 この写真をよーく見ると尾根・沢に自生する針葉樹と広葉樹の割合が一目瞭然です。広葉樹はその形を留めて居ますし、針葉樹には大きく成長した樹氷がびっしりとまとわりついて白い塔のように聳え立っています。以前の日記で樹氷が出来る条件には「常緑針葉樹が自生していること」が挙げられると書きましたが、その証拠写真です。
 地元の樹氷に詳しい方に広葉樹にもエビの尻尾は出来るんだけど直ぐに落ちてしまって樹氷には成長しない。広葉樹の枝に着いた霧氷を樹氷って書いてある物をたまに見るけどあれは正確ではないんだよ」と教えてくれました。

 樹氷が出来る条件下に自生する常緑針葉樹はオオシラビソ(別名アオモリトドマツ、秋田での呼び名モロビ)です。ですから一般に「樹氷=オオシラビソ」と思われていますが、森吉では豊富な天然秋田杉が生息地を標高の高い地域にも広げていてその秋田杉にも樹氷が出来ます。数年前,時々お会いする山の先輩が地元の新聞に情報提供して、その写真が掲載されたことがあって秋田ではちょっと知られた事実なんです。

秋田杉の樹氷。オオシラビソに出来る樹氷は木のてっぺんから地面まで白く覆われますが杉の場合は地上付近に枝・葉が少なくて傘に近いような形をしています。

一部葉が露出していたところで間違いなく杉だと確認しました。

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2008年01月24日雪山の危険因子 『雪庇』

秋田 足利 直哉

 積雪期の登山は無積雪期に比べて地面の凹凸が少なくなり登りやすい。と言う声をよく耳にします。実際に私も積雪期の方が短時間で山頂に立てたこともあります。雪が階段の段差を埋め、溝状に掘られた登山道を埋め、ゴロゴロしたガレを埋める。その雪が固く締まっていれば歩きやすく感じるのも納得です。
 しかし雪は段差や溝やガレを埋めて凹凸を少なくするだけでなく、実際には無いはずの場所に実に歩きやすそうな道を造ってしまいます。それが『雪庇』です。読んで字の如く、「雪で出来たひさし」です。屋根のような形をした峰・尾根上の風下に雪庇が出来ます。雪庇の出来方については詳しく触れませんが「峰の断面が三角形であるはずなのに風と雪があたかも断面が台形であるかのように見せかける」と言えば多少理解していただけるでしょうか?
 峰を歩いている時は(峰の上から見ると)台形のように感じますが実際は雪で出来た庇が張り出しているだけですので、誤ってその上を歩くと・・(そんなことは想像もしたくないですね!)

見えにくいかも知れませんが、およその位置に↓を付けてみました。雪庇↓としたのは雪庇の先端位置です。実際の幅は1.5m位だったでしょうか?

幅の広い、なだらかな稜線でも雪庇は出来ます。旗の立っているところが確実に地面のある所です。 

 実際に雪庇を踏み抜いた事による遭難事故の事例も多くあります。雪庇はその時々によって大きさを変え、時には張り出す方向さえ変えますから正確に雪庇の規模などを把握するのは難しいのですが、雪庇が出来る場所というのはそれほど大きく変わることはありません。事前に雪庇の出来やすい場所を把握しておくのは「はじめの一歩!」。その場で安全・適切な判断が出来るように情報収集やトレーニングなども不可欠ではないでしょうか?また相手は自然ですから我々の想像を超えた事が起こってもそれほど不思議ではないでしょう。「まさかこんな場所に・・」「まさかこんなに大きな・・」なんて後から言ってもしょうがないですよね?

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2008年01月23日雪山の危険因子 『ホワイトアウト』

秋田 足利 直哉

 本当に残念なことですが雪山登山での遭難事故を告げるニュースが続いています。またニュースにならないまでも一つ間違えば遭難への連鎖が引き起こされかねない出来事は膨大な数の事例があるのではないかと思います。

 反面、雪山には大きな魅力があります。その魅力に触れ、安全な登山を行うためには、雪山のリスクを知っておく必要があります。雪山登山にはどんな危険因子があるのか?それはどうやって回避するのか?等々自分(達)の身を守るために知っておかなければならない事柄があります。
 それを勉強する為には多くの書籍や文部科学省登山研修所等の専門機関や専門家のHPなど様々な複数の教材で各自で行わなければなりません。

 今日は雪山の危険因子として『ホワイトアウト』を取り上げました。この所、北東北の山でホワイトアウトとなる日が多いようです。私自身も直近の2回の雪山登山では2度ともホワイトアウトでした。
 ホワイトアウトとは視界が白一色になる気象現象の事を言い、吹雪などで雪が舞い上がって起きるもの、大量の雪が降って視界が遮られるもの、太陽の光・雲などによって全方向の雪が反射して起きるもの等原因も一つではありません。
 ホワイトアウトになると足下の雪面と空間の境目を識別できなくなり、行動を阻害する要因になります。実際にホワイトアウトに直面すると方向感覚・平衡感覚が平常でなくなり、乗り物酔いにも似た気持ち悪さを感じることもあります。

手前の木々や登山者はしっかり見えていますが、奥に見えるはずの山頂がみえません。山頂部はホワイトアウトになっています。

ルート旗が辛うじて見えていると思いますが、地面(雪面)と空間の境目がハッキリとしません。ルート旗までの距離は約5mです。

中央にぼんやりと見えているのは避難小屋です。ほんの一瞬だけ得られた視界です。小屋までの距離は40mほどです。

 ホワイトアウトはいつ起こっても不思議のない気象現象です。つまりホワイトアウトは常に想定しなければならないと言うことです。2枚目3枚目の写真は失敗写真のように見えます。経験した人なら分かると思いますが実際はこれでもまだマシな方なんです。
 折しも大寒波が押し寄せてきています。ホワイトアウトになれば行動不能になってしまうことだってあります。天候が崩れるようなら山には入らない、視界が悪くなってきたら引き返す。この判断が出来るというのも登山者にとって重要なことだと思います。

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2008年01月22日ステップ5と6

秋田 足利 直哉

 これまで業務の中で傷ついた鳥は居ないか?今どんな種類の渡り鳥が居るのか?などと野鳥の観察を続けてきました。野鳥に関しては全くの素人であった私ですが鳥獣保護区管理員さんはじめ多くの方々の指導の賜物で少しずつ鳥の名前も覚え鳥獣保護区内の何所にどんな鳥が居るのかも徐々に分かってきて今、凄く野鳥観察が楽しくなっています。
 総合学習の中で地元の野鳥を調べるために生徒を引率して鳥獣保護区に来ていただいた中学校の先生が、それをきっかけに野鳥に興味を持ち個人的に野鳥観察をしているそうで、時々情報交換をするのが嬉しく、また刺激にもなり私も休日を利用して野鳥観察に出かけるようになりました。
 
 そんな私が野鳥観察をしていく上で教えていただいたことを自分なりに整理して過去2回この日記で4つのステップに分けて述べてきました。一応これまでのステップを整理すると・・
ステップ1「自分なりの探鳥地を持つ」
ステップ2「観察記録を付ける」
ステップ3「大きさの物差しを持つ」
ステップ4「野鳥観察に適した時間を知る」でした。
今日はその続編です。

ステップ5『一羽ずつしっかり観察する』
特にこの時期は渡り鳥が集団で飛来する地域では時に数万羽という単位で観察できるときがあります。大潟草原鳥獣保護区でも100羽単位で観察されることは珍しくなく1000羽単位で観察できるときもあります。
 そんな時、「マガン多」とか「ヒシクイ大群」等と観察記録を付ける事があります。出来るだけ正確な数を把握しようとするのですが羽のある集団の数を正確に把握するのは容易ではありません。なので先ずは出来る範囲で集団を一羽一羽丹念に観察することにしています。そうすると時々大集団の中に紛れた別の種を見つけるときがあります。別の種を見つけたときはなんだか嬉しくなってしまいますが、逆に流して観察してそれを見つけられなかったとすると「そこにいるはずの種を見逃す」事になってしまいます。

【西部承水路のカワアイサの群れ】2007/12/25撮影。この集団にはミコアイサが6羽混じっていました。

【県立大学牧草地のマガン・ヒシクイの群れ】2008/1/18撮影。この群れの中には首環を付けたマガンが居ました。

ステップ6『鳥が居る(居た)場所も観察する』
 最近読んだ本に「野鳥は自然の中で虫に次いでよく見ると事の出来る生き物」という記述があった。確かにそうだという実感があります。では鳥は何処に行っても見られのでしょうか?野鳥たちにしてもただ何となくそこにいると言うことはなく何か目的があってその場所にいるのです。
 例えば、食事のシーンは特に興味深い物があります。シジュウカラなどの留鳥であれば季節によって食べ物が移り変わっていく事を知ることも出来ます。また今、大潟村で一番多く観察できるマガン・ヒシクイは積雪前は干拓地全域の水田の至る所で観察できましたが積雪の増えた現在は村の西部に集中して過ごしています。彼らの餌となる落ち穂、稲の根、雑草などを得るのに西部の風当たりの強い場所の方が雪を掘りやすい事が主な理由だと思います。
 他にもねぐらとしている場所の観察、営巣地の観察も興味深いのですが、総じて広い視点が必要になります。野鳥を観察するには双眼鏡などを使って自然の一部を切り取って観察していますが『野鳥が居る(居た)場所の観察』にはその場所の植生であるとか、立地環境など時は地図を眺めることも必要になってきます。我々人間にも住みやすい環境があるように野鳥にも住みやすい環境があります。

【承水路のオオバン】2007/12/27撮影 ヨシ・ススキなど背丈の高い植物があって身を隠す事が出来る水辺で観察できます。(結氷すると移動しますが・・) 

 野鳥が観察できた場所を注意深く観察して、野鳥の好みや習性を知ることが野鳥保護・自然保護の第一歩になるのではないかと考えます。

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2008年01月18日オオタカの食事

秋田 足利 直哉

 先日巡視に行った際、いつものように鳥獣保護区の管理員さんとその日見た鳥などの情報交換をしました。その中で管理員さんが「確信が持てないから報告書には書けないんだけどオオタカが居たようなんだよな~」とつぶやきました。ふと疑問に思って「この時期でもまだオオタカが見られるんですか?」と聞いてみた。すると「例年は雪が降って積もる頃になると姿が見えなくなるんだよな・・」と言う返答であった。因みに事務所にある平成15年度~18年度の記録を見ると15年度が12月初旬、16年度が12月中旬、17年度が12月中旬、18年度は12月初旬に観察したのを最後に、その後、春が来るまでオオタカの観察記録がなかった。昨年度は稀に見る少雪の年だったのは記憶に新しいところだが『その年の積雪時期や量に影響を受けてオオタカは生息域を変えるのだろう。』という仮説が出来ていたようです。

 そんな話をしてからまた巡視を続けました。すると「南の池」の岸に大きな鳥の姿が見えました。猛禽類だとは直ぐに分かりましたが、双眼鏡で見てみるとオオタカが獲物を捕らえて食べているところでした。この時期にオオタカの観察が出来るだけでも大収穫なのに獲物を食べるシーンを見られるなんて・・と目が釘付けになりました。

直感的に「カモを捕まえたのか?」と思いました。

 オオタカは時折周囲に目を配りながらも獲物を突いていました。どうやら捕らえたばかりだったようで首から上は無くなっていましたが翼などはまだハッキリと見ることが出来ました。獲物になったのは南の池にいたカルガモのようです。



時に獲物の上に乗っかったりしながら突いていました。

 このシーンを同じように見ても人によって感想は違うようです。同行していた保護官は「オオタカに食べられるなんてカルガモが可哀想だ・・」と言いましたし、私は「カモでも大きな部類のカルガモを捕らえて岸に上げて食べるオオタカは凄いな(水辺から引きずったような跡が見えたので・・)」と思ってました。その後オオタカは撮影している私に気付いてこっちを気にする素振りも見せましたが、また直ぐに獲物を突いていました。その後しばらく観察していましたがオオタカの食事シーンは、私には何か崇高な行為のようにも感じられましたが保護官は「他にもカルガモがいっぱい居るのにあのカモだけオオタカの餌食になってしまうなんて残酷な話だな・・」と表情も曇りがちでした。

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2008年01月17日バードトラック(ヒシクイ)

秋田 足利 直哉

 今週は寒波が居座っているらしく寒い日が続いています。事務所の窓からは時折激しく降る雪で、いつもハッキリ見える秋田市役所がよく見えません・・。

 それでも昨日は寒波も一休み。大潟草原では僅かに晴れ間も見えました。風もなく穏やかではありましたが外でフィールドスコープを構えているとたちまち冷え切ってしまいます。ニット帽も手袋も慰め程度に感じられます。
 この寒波は大潟村の田んぼを雪で覆い尽くしました。こうなるとガンカモ達は食糧問題に直面します。これまで田んぼ一面に広がって落ち穂を啄んでいましたが、昨日は風当たりが強くて地面が見えている僅かなスペースにひしめき合いながら採餌する姿を多く見かけました。また農道にもたくさんのヒシクイがいました。普段はこんな事ないのになぁ~と思ってスコープを覗くと口元に緑色の草のような物が見えます。畦に生えていた草を食べているようです。

一面に広がるヒシクイの足跡。

三本の長い指の間にある水かきと後ろ側に付く短い指の痕もハッキリ分かります。扇の要の位置よりも右足は左寄り、左足は逆の右寄り、つまり内側についているようです。

大きさを比較してみました。黒い丸い物はカメラのレンズキャップ(52mm)です。この足跡は標準的な大きさの足跡を選んだつもりですが・・(やや小さかったかな?)

 これまでヒシクイは落ち穂など植物の実を食べていましたが積雪からの食糧難の今、風当たりが強くて積雪の少ない場所の草を食べています。きっと栄養も満腹感も大きく違うのでしょうが見渡してもこれを食べるしかないようです。さらにその様な場所も限られています。それで普段は近づかない農道で採餌をしているのです。この時は地元の農家の方が来て一斉に飛び立ちましたが暫くするとまた舞い戻って同じ場所で餌を採っていました。

この日ヒシクイが食べていた草は【シロツメクサ】でした。三つ葉のクローバーと言った方が分かりやすいですね。ヨーロッパ原産の帰化植物で牧草として栽培した物が野生化して分布域が拡大したそうです。

 大潟村のある秋田県沿岸地方の週間予報では期間中雪マークが並び土曜日までは真冬日予報です。しばらくヒシクイ達の食糧難が続きそうですが逞しく乗り切ってほしいと願っています。

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