磐梯朝日国立公園 裏磐梯
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2021年10月07日9月終わりの業務中に出会った秋の風景
磐梯朝日国立公園 裏磐梯 村上英夫
秋の気配が濃い9月最終週の業務中に出会った風景を、いくつかお届けいたします。
〈裏磐梯スキー場〉
この日は裏磐梯スキー場上部の登山道沿いに設置した登山者カウンターのメインテナンスを行いました。駐車場からスキー場を登り、登山道をしばらく歩くと、銅沼が、磐梯山を背負って静かにたたずんでいます。左のピークは櫛ヶ峰、右奥が本峰です。
〈銅沼(あかぬま)〉
9月の最終日、台風がやってくる直前に、吾妻連峰東側の基点の浄土平へ向かいました。
〈浄土平より一切経山方面を望む〉
この日の作業は、浄土平湿原に設置した監視カメラの撤収です。以前、浄土平湿原では7~9月頃を中心に、多数掘返し跡が確認され、中には保全対象種の生育場所が集中的に掘り返される事例もあり、盗掘の被害が疑われたため、数年前より、湿原内を周遊する木道等に自動撮影カメラを設置しています。
〈監視カメラ〉 〈撤収後〉
設置後は、盗掘跡は見られなくなり、今年もカメラに写っていたのはカモ、クマ、イノシシでした。浄土平の標高は約1,600mあり、イノシシがここまで上がってきていることに驚かされます。イノシシは湿原を踏み荒らすので、新たな悩みの種になりそうです。
〈浄土平湿原より望む東吾妻山(左)と蓬莱山(右)〉
撤収作業後に、酸ヶ平、鎌沼、姥ヶ原を周回するコースの巡視を行いました。
〈鎌沼〉
今年は夏以降、寒暖の差が大きく冷え込みが弱いせいか、あちこちの山でダケカンバやブナの葉が色づく前に枯れている姿が目立ちますが、浄土平付近のダケカンバ林はきれいな黄色の絨毯へ変わりつつあるようです。本格的な色づきはこれからですが、もう少しで訪れるピーク時が楽しみです。
2021年09月15日磐梯山のコウリンタンポポ防除
磐梯朝日国立公園 裏磐梯 村上英夫
9月7日(金)、地元のNPO法人裏磐梯エコツーリズム協会主催のコウリンタンポポ防除活動に参加しました。
〈天狗岩付近から櫛ヶ峰を望む〉
コウリンタンポポは繁殖力が強いため、「生態系被害防止外来種リスト」の中の「その他の総合対策外来種」に指定されています。高山の生態系を変え、特に磐梯山においては、固有種のバンダイクワガタを脅かしています。この日は、新型コロナウイルス対策のため関係者のみ約20名の方が参加し、天狗岩付近から櫛ヶ峰下部までの範囲に広がって防除作業を行いました。今シーズン5回目の防除なので花はあまり残っていませんでしたが、この日のターゲットは芽を出したばかりの小さな株で、良く見るとびっしり生えていました。
久しぶりの好天に恵まれて、裏磐梯方面は、私たちの事務所が見えそうなほど良い展望が広がっていました。
〈天狗岩付近から望む裏磐梯エリア〉
〈赤埴山から望む猪苗代湖〉作業後、赤埴山まで巡視を行いました。午前中、猪苗代湖側はガスに覆われて何も見えませんでしたが、午後はすっきり展望が広がりました。
今年から、猪苗代スキー場のリフトが登山者のために運行を開始したので、赤埴山や、沼の平から天狗岩を経て磐梯山山頂へ至るルートへのアクセスが容易になりました。ただし運行時間は6時30分から9時30分までなので下山時は徒歩になり、事前に時間と体力を考慮に入れて山行計画を立てる必要があります。
磐梯山はすでに秋の気配が漂い、錦秋の衣を纏い始める美しい季節が、まもなく始まろうとしています。
2021年09月03日登山者カウンター ~ 飯豊
磐梯朝日国立公園 裏磐梯 村上英夫
太陽がすっきりと顔を見せる日が少なくて、雨天曇天が続き、気温も下がってきた9月初旬、雨の合間を見計らい、飯豊連峰の川入口に設置した登山者カウンターの点検作業とデータ回収を行いました。
〈御沢小屋跡付近の登山者カウンタ-〉
80台収容可能な駐車場を備えた広々した野営場を出発し、10分ほど歩いて橋を渡った所に登山口があります。飯豊山は古い山岳信仰の山、修験道の山です。登山口には、ご神木である杉の巨木が並び、その傍らに小さな祠があります。ここが長い急登が続く「長坂」の起点。登り始めるとすぐに、ブナやミズナラなどの巨木の森の中に入っていきます
巨木に出会うといつも心の中で、「君はいつからそこにいるんだい?」と話しかけたくなります。巨木の森の中にいると心が落ち着いて、なぜか温かな気持ちになってきます。
〈トンビマイタケ〉
夏の終わりから秋の初めにかけて姿を現すトンビマイタケに出会いました。「マイタケ」という名はついていますが、大きくなると堅くなって食用には適さないようです。あちらこちらに少しずつ、キノコが姿を見せ始めました。
来週以降、また残暑が戻るようですが、山には確実に秋が近づいているのを感じます。
2021年08月16日登山者カウンターデータ回収
磐梯朝日国立公園 裏磐梯 村上英夫
登山者の数を自動的にカウントする装置「登山者カウンター」を、裏磐梯自然保護官事務所では10カ所に設置しています。約3週間おきに、ソーラーパネルやバッテリーの異常の有無の確認と、装置に蓄積されたデータの回収をします。先週は、吾妻連峰の浄土平と、磐梯山の猪苗代スキー場登山口で作業を行いました。
〈浄土平の登山者カウンター〉
作業後、浄土平から鎌沼へ上がり、登山道と湿原の木道を視察しました。当たり年となったコバイケイソウの花はすっかり終わり、チングルマも実をつけ、湿原にはモウセンゴケとリンドウ、登山道沿いにはアキノキリンソウが姿を見せていました。
〈タテヤマリンドウ〉 〈モウセンゴケ〉
〈チングルマ〉 〈ミヤマアキノキリンソウ〉
鎌沼から1時間弱で東吾妻山頂に立つことができます。以前、山頂へ登り休憩時に地元の郡山市から訪れていた方と言葉を交わした際に、その方が「初めて来たけど、地元にこんな素晴らしい所があるとは知らなかった」とおっしゃっていました。比較的短いアプローチで来られるピークから、天気が良い日は、那須、飯豊、朝日連峰、会津駒ヶ岳や燧ヶ岳、さらに月山や鳥海山を望むことができます。
〈鎌沼〉
次の日は猪苗代スキー場登山口へ向かいました。スキー場トップの登山道入口にカウンターがあり、そこまでスキー場を登ります。
〈猪苗代スキー場上部の登山者カウンター〉
スキー場とはいえ、たくさん花が咲いていてきれいです。この日はコバギボウシやツリガネニンジンが咲き始めているのが目立ちました。斜面の下には猪苗代湖が見渡せます。
〈コバギボウシ〉 〈ツリガネニンジン〉
八方台からの入山者数は、休日の多い時で500名を超えることがあり、駐車場も満車になることが多いのですが、猪苗代スキー場からのルートは多い日でも50~60名程度で、駐車場は広く余裕があるので安心です。山頂までのルート上にはダケカンバの林や沢や沼があり、バリエーションを楽しめます。さらに猪苗代スキー場が今年から登山者のためのリフト運行を始めましたので、コースタイムはかなり短縮されるはず。お勧めです。
2021年08月12日パークボランティア始動式
磐梯朝日国立公園 裏磐梯 村上英夫
国立公園において、自然解説や美化清掃、野生動植物の保護管理や調査などの活動に、自発的に協力していただける方々を「パークボランティア」として登録しています。裏磐梯地区では19人の方々が登録され、探勝路や登山道の巡視と清掃美化、オオハンゴンソウの防除などに活躍されています。さて例年は4月に始動式を行い、11月までの8ヶ月間の活動がスタートするのですが、昨年に続き今年も感染症対策のために、8月のスタートとなりました。
午前中は活動計画内容についての説明と事務連絡の後、意見交換が行われました。ボランティアの皆さんは、多くの知識と見識をお持ちで、経験も豊富な方ばかりなので、特定外来生物の駆除方法やシカ・イノシシ対策、登山道整備のあり方などについて深い議論が交わされました。午後は消防署から救急救命士を招いて救命講習を実施しました。
これから月に4~5回のパークボランティア活動が予定されています。それにより特定外来生物防除が着実に進み、探勝路や登山道の美化と景観維持が担保されるようになります。計画通りに活動が実施できるよう、感染症状況が収まることを祈るばかりです。
2021年07月28日「桧原湖観光船の運航再開」
磐梯朝日国立公園 裏磐梯 田中謙行
こんにちは。裏磐梯自然保護官事務所の田中です。
今回のAR日記は、7月22日から運航再開された「桧原湖観光船」の試乗会の写真報告になります。
2019年11月から運行していなかった桧原湖の観光船が新たな運営をするグランベルホテルにより約2年ぶりに運航再開となりました。
桧原湖が凍る11月上旬まで1日6便の運航予定。約35分の周遊コースとなります。
中学生以上が\1,400- 4歳から小学生まで\700-(いずれも税込み)です。
湖上からはまた一味違った裏磐梯、桧原湖の景観が望め新鮮です。
安達太良山の沼の平も確認できました。 デッキは爽快感でいっぱいです。
この「あづま丸」が裏磐梯、桧原湖のシンボルの一つとして親しまれていくことを期待しています。
景観はもちろんですが、これから夏本番の猛暑がやって来ますので爽やかな「涼風」を、秋には湖上からの「紅葉」を満喫しに来てくらんしょ。
今回はこれで、おしまい。
2021年07月19日「五色沼自然探勝路」巡視
磐梯朝日国立公園 裏磐梯 村上英夫
東北地方の梅雨が明けた7月16日の金曜日、「五色沼自然探勝路」の巡視活動を行いました。この日、福島市と会津若松市は35℃以上の猛暑日の予想でしたが、裏磐梯には夏空に涼しい風が渡っていました。
〈るり沼〉
平日でしたが、多くの方々が散策したり写真撮影や写生を楽しんでいました。いくつかの小学生の団体も大型バスで訪れていました。
〈弁天沼〉
先日開催された『磐梯吾妻・猪苗代地域満喫プロジェクト地域協議会』に参加されていた有識者のご意見の中に、磐梯朝日国立公園の長所は、①アクセスが良いこと、②地形がフラットな場所が多いこと、③四季折々の豊かさがあること、というご指摘がありました。確かに、裏磐梯地区には、深く豊かな自然の懐の中へ誰もがアプローチしやすい場所がたくさんあります。五色沼の他にも、整備された探勝路が多く点在しています。私は福島市出身なのですが、裏磐梯に勤務するようになってから、この地区の良さを再認識しています。この場でまたいつかご紹介したいと思います。
〈毘沙門沼より磐梯山を望む〉
2021年07月15日「磐梯朝日国立公園磐梯吾妻・猪苗代地域 満喫プロジェクト地域協議会」
磐梯朝日国立公園 裏磐梯 田中謙行
「磐梯朝日国立公園磐梯吾妻・猪苗代地域 満喫プロジェクト地域協議会」
こんにちは。裏磐梯自然保護官事務所の田中です。
今回のAR日記は、7月13日に行われた「磐梯朝日国立公園磐梯吾妻・猪苗代地域 満喫プロジェクト地域協議会」設立の報告になります。
「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき、国立公園の「ナショナルパーク」としてのブランド化を目指すため、環境省は「国立公園満喫プロジェクト」を立ち上げております。
これまでの国立公園満喫プロジェクトの取り組みをもとに、「磐梯朝日国立公園」においても国立公園のさらなる魅力向上、新たな展開を図るため協議会を設立しました。環境省や県、それに関係する市町村、観光協会、山岳会などによるおよそ50人ほどが会場とオンラインに分かれての参加となりました。
13:30司会の東北地方環境事務所の苅部氏の発声で開催スタート。
我らが黒江保護管理企画官が設置要綱の説明をし、中山 東北地方環境事務所長が本協議会の会長を
つとめさせていただく事となりました。
「この地域の魅力を磨いて、そして地元が誇りをもっていけるような、そして多くの人に来ていただく。
当面、コロナでちょっと厳しいけれども、ゆくゆくは海外の人にも来ていただく。というような事を考えながら皆さんと一緒に進めていきたいと思います。」と会長の挨拶。
・自然を満喫できる上質なツーリズムの実現とブランド化。
・コロナウイルスによる影響前の国内利用者の復活。
・訪日外国人利用者数1000万人目標を見据えた、コロナウイルス影響前の訪日外国人利用者の復活。
・取り組みを行う公園・地域ごとに個別の目標・指標の設定。
などを上げ、今後の部会において具体的な事項の検討を進めて行くとしました。
協議会のメンバーからは、観光客が年々減少している実情などが報告され、「精神文化、食文化とつなげたツーリズム」「農業体験ツーリズム」「自然アクティビティ体験ツーリズム」「教育旅行」などの充実、また「修景伐採、廃屋問題」「二次交通の確保」「登山道、村道の整備」などなど様々な課題が上がりました。
この協議会を通して、国立公園を軸に利用することで(自然を壊すことなく)地域の活性化に繋げて行けるよう裏磐梯自然保護官事務所も一丸となって進みたいと思いました。
良い意味で稼げる国立公園めざして頑張っぺ。
今回はこれで、おしまい。
2021年07月06日小学校で授業を行いました
磐梯朝日国立公園 裏磐梯 村上英夫
先日、地元の小学校の授業に講師として参加しました。ここ数年、毎年お手伝いさせていただいています。
まず6月28日(月)に外来種と特定外来生物についての授業を行いました。生徒は小学3年生8名。
この授業は、後日、野外で実施される「自然体験教室」の事前学習です。
パワーポイントを使って授業を進めます。これは当事務所の先輩レンジャーさんが作ってくださった
教材です。外来種の説明の後、裏磐梯に生息する特定外来生物のウチダザリガニを紹介します。
村上:沼にはいろんな生き物が住んでいますが、さあ、ウチダザリガニが入ってきたらどうなるんだろう?
生徒:うわあああああ(悲鳴)
村上:というわけで金曜日に、みんなにザリガニを減らすお仕事を手伝ってほしいんです。
手伝ってくれるかな?
生徒:は~~~い!
村上:でも、沼の生きものたちを食べたり追い出したりするウチダザリガニは、悪者なのかなあ、、、
生徒:僕はちがうと思う。だってウチダザリガニは人間に連れてこられたんだから、、、悪いのは人間!
村上:ん~、そうだね~。ウチダザリガニはただ一生懸命に生きているだけなんだよね。
というようなお話を踏まえて、週末の金曜日に曽原湖の近くの小さな沼で、ウチダザリガニ釣りが行われ
ました。
村上:釣ったウチダザリガニは他の場所に持って行くことはできません。ではどうしたらいいだろう?
生徒:(ちょっと考えて)食べる~~~!
村上:そうだね。生きものはみんな他の生きものの命をいただいて生きています。このザリガニはレンジャーがいただくことにします。
生徒:僕たちも食べたーい!
村上:ん~、残念だけどみんなはもう学校へ帰らなくちゃね。
生徒:はーい。でもちゃんと食べてあげてね~。
村上:ありがとうという気持ちでいただきます。
生徒:クロレンジャー、ムラレンジャー、今日はありがとうございました~
一緒に参加していたレンジャーの黒江さんは「クロレンジャー」、アクティブレンジャーの村上は「ムラレンジャー」という愛称を子供たちからいただきました。終始、黄色い元気な声に包まれ、好奇心にあふれた瞳の輝きに触れ、こちらが元気をもらえた心温まる2日間でした。
パークボランティア活動の一環で、ボランティアの方々とご一緒に磐梯山の登山道巡視を行いました。10月22日(金)は前日に降った雪が残る肌寒い一日でしたが、風がほとんど無く、日が差すと暖かく、登山中は少し汗ばむ程でした。裏磐梯スキーを出発し、ゴミを拾いながら登山道の状況を確認し、植生を観察し、火口原、天狗岩、弘法清水を経て山頂へ。帰路は中ノ湯跡から銅沼経由でスキー場へ戻りました。途中で目にした風景の一部をお届けいたします。
〈磐梯山〉
ゴミ袋はいっぱいになりましたが、「ゴミ」と言うよりは「落とし物」という雰囲気の物ばかりでした。マスク、タオル、飲みかけのペットボトル、開封されていないエナジージェルを拾得。キャンディーやキャラメルの袋もありましたが、ポイと捨てたというより、歩行中にポケットからこぼれ落ちた感じです。
〈西吾妻方面〉
〈桧原湖と天狗岩(右)〉 〈銅沼〉
〈櫛ヶ峰〉