ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

RSS

十和田八幡平国立公園 鹿角

125件の記事があります。

2009年03月17日3月の八幡平の森はおもしろい

十和田八幡平国立公園 鹿角 大堀 拓

 3月の八幡平と聞くとまだ厚い雪に閉ざされた人を寄せ付けない世界を連想する方が多いと思います。しかし前の月に比べると格段に昼の時間が長くなり、たまに訪れる晴れ間に森に入ってみるとこの時期にしか味わえない「自然観察」が楽しめます。

 南八幡平の乳頭で3月1日、八幡平の大沼では3月15日にそれぞれ「スノーシュー雪上自然観察会」を行い多くの方が参加してくれました。夏の間はチシマザサが生い茂り、入っていくことのできない森に自由自在に出入りできるのがこの時期の大きなメリットです。


 鹿角自然保護官事務所で企画する自然観察会では常に参加者自身による発見と気づきを一番大切に考えています。 そのため、乳頭では、各班毎に、「自分達が歩いてきたブナの森から受けた印象を」枯枝や木の皮を使ってアートで表現してもらいました。ミズナラの枝と山ブドウの蔓を使って人間と森との支え合いを表現する班、人間が森の中では楽しい気分になることをブナの枝で表現する班など、短い時間のうちに感動的なアートができあがりました。

 大沼の観察会では手作りのビンゴゲームをつくり、参加者自身に生き物たちの「生の証し」を見つけてもらうことにしました。その結果、驚くほど密集したクマ棚や、モモンガの巣穴や食痕を見つけてくれました。

「楽しく」生物の多様性を感じることが、この地域の国立公園の自然を守っていく原動力になると考えます。参加者一人一人の違った感性と目を通じて知ることのできる発見と出会えることがアクティブレンジャーとしての大きな喜びの一つです。

枯枝と木の皮と雪だけで多様なアート表現ができるなんて(乳頭)


モモンガに囓られたアオモリトドマツの葉芽。ブナからダケカンバ、アオモリトドマツへの移行帯が理想的な生息地帯なのだろう(大沼)


クマ棚は大木では無く、平坦な地形の中小経木に多く見られる。ここ大沼周辺では夥しい数のクマ棚が見られ、今回ウワミズザクラに棚をつくっていたのには驚かされた(大沼)

ページ先頭へ↑

2009年03月02日八幡平の自然を守ってきた人達(その2)

十和田八幡平国立公園 鹿角 大堀 拓

 「勤務場所の八幡平見返峠から望む裏岩手の山並みが平坦な地平線のように思え、その延長線上に秋田駒ヶ岳や岩手山が聳え立つ姿が大好きです」と語るのは、鹿角のアクティブレンジャーが八幡平で1年を通じて最も接する回数が多い人物、自然公園財団八幡平支部の主任、馬越さんです。

 厳冬期、樹氷原を縫ってのスノーモービルパトロールから始まって、八幡平ビジターセンターの管理運営、自然観察会ではインストラクターを務めます。 特に彼がつくるイラストを含めたオール手作の自然観察会用パンフレットは大好評で、私も大変、参考にさせてもらっています。夏期は頂上駐車場やキャンプ場の管理に加え環境省で行う、「外来植物駆除」や「湿原植生回復」の現場の陣頭指揮にあたります。あるパークボランティアは彼をして私達の24時間を倍速48時間にして生きている人間と評しています。休日はというともちろんプライベート?で八幡平の山に入っているといううわさがもっぱらです。

 もともと東京で育った彼は4年生大学を出たあと、環境系の学校に入り直し、卒業後すぐに北海道の阿寒湖畔エコミュージアムセンターで自然解説スタッフとして働きはじめました。その4年後、現在の八幡平で働くようになっても野生動物観察などは北海道の経験が大変役に立っていると言います。八幡平でも零下15度を超えて夕闇迫る2月のブナ林で一人ツェルトで耐え、ニホンモモンガの生態写真を撮ったと意気揚々事務所に来られた時はさすがにびっくりしました。

 八幡平においても地域で自然環境を守るメンバーの高齢化が年々進む中、全国21ある自然公園財団の主任の中でも一番の若手である彼に私達も大きな期待を寄せています。


八幡平頂上での馬越さん。「活動の原点は?」と聞くと「環境・環境と肩に力を入れたら続かない。ただ八幡平の自然が好きなのです。」との答え。

ページ先頭へ↑

2009年01月30日1月末の八幡平アスピーテライン

十和田八幡平国立公園 鹿角 大堀 拓

 鹿角自然保護官事務所のAR大堀です。八幡平山頂の特別保護地区一帯では
植物の損傷や動物の繁殖への影響が懸念されるスノーモービルの乗り入れ規制
が行われています。しかし、昨年の12月には山頂付近でスノーモービルを目撃したとの情報があり、侵入経路として冬期閉鎖中ではあるが比較的緩傾斜であるアスピーテラインの可能性が考えられています。

 今週、スノーモービル巡回パトロールのスタッフに同行して秋田側のアスピーテラインを八幡平山頂まで往復しました。予想に反し、道路上の積雪量は一定では無く吹き溜まりでは4mを超えるところもあり、夏には車で数分の距離が1時間近くかかってしまいます。そこだけ樹木が無いのでかろうじて道路の上を歩いているのがわかるのですが、標高が上がるにつけ周囲の光景は霧氷をつけたダケカンバから樹氷をまとったアオモリトドマツの見事な姿に変化していきます。今回はスキーとスノーシューの利用者のトレイルを確認しただけですが、来月後半からは、いよいよ本格的なパトロールが開始されます。



夏は多くの車が行き交うアスピーテライン上とは思えぬ静けさが支配する。

秋田・岩手県境の頂上駐車場は雪が強風で吹き飛ばされ地面が露出している。遠景は秋田駒ヶ岳。

ページ先頭へ↑

2008年12月24日来年も会えるかな

十和田八幡平国立公園 鹿角 大堀 拓

 少し前のことになります。アスピーテラインが冬期閉鎖になり、入山カウンターを撤去するために岩手側から八幡平へ向かいました。松川渓谷を挟んで岩手山が大きくそびえ立つ源太岩周辺は八幡平でも有数の展望スポットです。

 一面に続くチシマザサの向こうに葉を落としたダケカンバの樹が数本立っていて、その樹上に一匹のツキノワグマが登っていました。以前、岩手大学農学部共生環境課程の青井教授から八幡平のツキノワグマはアスピーテライン閉鎖と前後して冬眠に入り、春は再び開通前後に活動を開始すると伺ったことがあります。おそらく彼(彼女?)は冬眠前の空腹を少しでも満たそうと必死の思いでダケカンバに登り、僅かに残った小さい堅果を貪っていたのでしょう。

秋の主要な食糧であるべきブナについて秋田県は3年連続の不作で、八幡平周辺ではほとんど結実を見ませんでした。厳しい自然環境ですが、何とか生き抜いて来年また元気な姿を見せて欲しいものです。

ダケカンバ上のツキノワグマ。一瞬、黒い大きなビニールが木に引っかかっているのかと思った。

ページ先頭へ↑

2008年11月28日嬉しいお客様

十和田八幡平国立公園 鹿角 大堀 拓

 ふだんは官公庁関係や工事関係者といったどちらかというとお堅い方面のお客様が多い自然保護官事務所ですが、昨日(11月27日)は若々しい声が小さい事務所内にあふれました。地元の鹿角市立八幡平小学校6年生の総合学習、題して「八幡平花まる大作戦」現地調査隊の訪問です。事前に子供達自身が一生懸命になって質問事項を考えてきたとあって、なかなか鋭い質問が出され、対応にあたった自然保護官や自然公園財団八幡平支部の職員は真剣に答えていました。

 この総合学習のねらいは「八幡平のよさについて調査し、自分たちが住んでいる地域への愛着を深めるとともにそのよさをPRすることができる」とあります。引率の先生は「今はインターネットやパンフレットですぐに調べることが可能なのですが、現場にいらっしゃる方の生の声は強く印象に残るものだし、うまくなくても自分自身で質問させることが大切」との考えで現地調査を
企画したそうです。そういう思いに応えていくことも現地自然保護官事務所の大切な役割との思いを強くしました。

 鹿角自然保護官事務所では自然公園財団や八幡平ビジターセンターと一体となって「地元の小中学校の子供達に八幡平のすばらしさを体感してもらい、将来、八幡平の自然を守ってくれる担い手が育つことが大切」と考え、地元の子供達に対する自然ふれあい活動支援を行ってきました。来年はどんな子供達との出会いがあるのか今から楽しみです。

八幡平のテンやニホンカモシカやツキノワグマは普段どこを住み家にしているんですか?  この答えが結構難しい。

あれも聞きたい、これも聞きたい、この際なんでも聞いちゃうべ。

ページ先頭へ↑

2008年10月30日また来年会いましょう

十和田八幡平国立公園 鹿角 大堀 拓

 十和田八幡平国立公園では北から八甲田、八幡平、岩手山、秋田駒ヶ岳と、4地区にパークボランティアが組織されています。先週、八幡平ビジターセンターで4地区合同の交流会が開催され、私も参加してきました。

 冒頭、環境省東北地方環境事務所の鈴木国立公園・保全整備課長から「アメリカの国立公園管理とボランティア」というテーマで研修講話をしていただきました。その後、各地区ごとのユニークな活動実践報告が行なわれ、いまさらながら活動の幅が非常に広範囲に及んでいることに驚かされました。各地区とも、植生回復や外来植物駆除対策に本腰を入れて取り組んでいることを痛感しました。

 中でも印象的だったのは参加者全員一人一人が「活動への思い」を述べたことです。職業も年齢も様々なボランティアさん達、「思いも人それぞれ」なのですが、共通しているのは十和田八幡平を大好きだということ。
その気持ちがあればこそ、様々な障害を乗り越えてボランティア活動を続けておられるのですね。 

 来年の再会を約してそれぞれ帰路につきましたが、、その2日後から八幡平は雪に閉ざされたままです。


アメリカの国立公園で実際にボランティア活動を行ってきた鈴木課長の話に皆興味津々。


場所を移してもパークボランティアさん達同士の会話は尽きない。


10月28日に降り出した雪はあっという間に八幡平を冬の世界に変えてしまった。

ページ先頭へ↑

2008年10月23日大沼のおとうさん逝く

十和田八幡平国立公園 鹿角 大堀 拓

 今年の大沼湖畔は昨年と比較にならない位、鮮やかな黄葉に染まりました。

 多くの観光客で賑わった今月9日「大沼のおとうさん」と呼ばれて歴代環境省のレンジャーを始めとして八幡平に関わった多くの人々に親しまれてきた畠山謙次郎さんが亡くなられました(享年86歳)。

今年の春先に八幡平ビジターセンターを訪れてくれた畠山謙次郎さん。懐かしむように昔の話をしてくれた。

 謙次郎さんは、まだ訪れる人も稀だった昭和28年に大沼湖畔に小さな旅宿を開いて以来、八幡平地区の国立公園編入に奔走し昭和31年の十和田八幡平国立公園誕生以降は、登山道整備やビジターセンター建設などに心血を注いできました。今年の4月、まだ半分雪で埋まったビジターセンターにぶらっと一人訪れ、たまたま開館準備をしていた私に訥々と話をしてくれました。「昔は、たまに訪れる登山目的の学生か農家の湯治客しかいなかったこと」「交通手段は歩くか馬車、電気も電話も何も無く冬は全く孤立状態だったこと」「原生林の中で100mの道をつくるのに1年かかったこと」などなど。静かだった昔の八幡平のことを懐かしそうに振り返ります。
 
 付近に生息するクマも知り合い?が多く、「毎年、澄川から大沼へくる奴で必ず宿の方を向いて立ち上がって合図するのがいたけど最近姿を見せない。撃たれちゃったんじゃないか」と本気で心配したり、「この前出会った親子連れが私にフウフウとちゃんと挨拶して行った」と嬉しそうに話したり。

 しかし最近の利用者については「せわしくてあまり自然に興味をもたなくなったような気がする」「ゆっくり会話を楽しんだり挨拶をかわしたりということも減った」と寂しいそうに話していたことが忘れられません。各地の国立公園誕生後、半世紀を超える地区が多くなるなか、その生きた歴史を知る方の話は貴重な財産です。いつでも聞けると思って、しっかりと謙次郎さんの話を記録していなかった事がかえすがえす残念でなりません。

ページ先頭へ↑

2008年09月30日ちょっと早すぎる

十和田八幡平国立公園 鹿角 大堀 拓

 八幡平ビジターセンターでは今週、初秋の湿原逍遙というテーマで湿原の秋をテーマにした自然観察会を計画していました。ところが前日の朝から山頂付近は突然の吹雪に見舞われ2日間にわたって道路は全面通行止め。観察会も中止となり湿原の「草紅葉」を楽しみにしていた参加者をがっかりさせてしまいました。地元の温泉のご主人も「八幡平で9月にまとまった雪が降るなんてちょっと記憶に無い」と驚いていました。

 道路通行止め解除の後で、八幡平頂上を訪れましたが木道上にはまだところどころ雪が残り、ズックの観光客が恐る恐る歩いています。10月には山頂付近での外来植物駆除や植生回復作業がまだ残っています。このまま根雪にはならないだろうとは思っていますが、今更ながら予想できない自然のダイナミックな動きに驚かされます。

湿原上に残る雪にちょっとビックリの利用者

まだ青々したミツガシワそのままに凍った池塘

八幡平から望む岩手山も鬼ヶ城尾根から上は白い帽子をかぶっている

ページ先頭へ↑

2008年08月25日自然解説をもっと生き生きと豊かにするには

十和田八幡平国立公園 鹿角 大堀 拓

 自然解説を担当していて「本当にこういう内容で良いのだろうか?」と悩んだことの無い人は少ないと思います。そんな中で日頃、公園内で自然観察会のリーダー役を担っている八幡平地区と南八幡平地区のパークボランティアの合同研修会を行いました。テーマはずばり「国立公園の中での自然解説活動」です。

 講師役は環境省で以前レンジャーを務めた経験のある青森大学の藤田教授にお願いしました。室内講義の中でアメリカの国立公園の実例をあげながら「インタープリテーション」の方法論について学びます。一方的に自然情報を伝えるのでは無く、公園利用者自身が体験や現場の素材を通じて、自然の中にある法則性や生物多様性・健全な自然生態系を次世代に残していく重要性に気づく
お手伝いをするというものです。

 午後から大沼周辺の散策路に出て一人一人がテーマを見つけインタープリーターの実演をしました。5分間という限られた時間で大変だったのですが、「ブナの肌から推測できるもの」、「ヤドリギ発芽の不思議」、「沢の流れからわかる森林生態系」、「自然観察者の表情を観察する」等々ユニークな実践例で大変に盛り上がりました。参加したパークボランティアの一人は自然解説活動について「知識の伝達ではないということを聞いて大変嬉しかった」とその晩にメールを送ってくれました。
 これからも私自身、試行錯誤の自然解説が続くと思いますが、パークボランティアの皆さんと一緒に利用者の目線に立った活動を心がけようと思います。


狭いレクチャールームに入りきれないほどのパークボランティアさんが集まってくれました。


屋外でのインタープリテーション実習は全員が一度はリーダー役を務めました。


講師役の藤田教授を囲んで八幡平と南八幡平のパークボランティアさん

ページ先頭へ↑

2008年08月20日八幡平マタギの話を聞くことのできた夕べ

十和田八幡平国立公園 鹿角 大堀 拓

 八幡平ビジターセンターの夏休み企画「先人の自然観を感じよう―人間と動物たちの物語」に参加しました。実際の八幡平マタギの方のお話を聞いたあとに
夜の大沼周辺をハイクするという魅力的なプログラムでした。

折からの雨で人数は少なかったものの関東方面からのビジターやパークボランティアなど十数名が夜のビジターセンターに集合しました。春澤権次郎さん。
昭和9年に岩手県の田山村袰部(現八幡平市)に生まれ13歳の時から本格的なマタギ猟に加わってきたという方で、もの静かな口調を通じて当時のマタギの生き生きとした世界に参加者全員が引き込まれてしまいました。

その後は真っ暗な屋外に出ても懐中電灯は使いません。マタギの村で使われてきた「カシブ」という山ブドウの皮を太く編んだ縄に火をつけます。線香花火みたいな火で道を照らして歩きます。もう少し明るさが欲しい時は縄を振るとさっと一瞬燃え上ります。雨の中でも消えないその灯の美しさ。昼間なにげなく通った自然観察路も別の世界に変わります。あちこちに「ケモノ道」が現れ動物の生々しいにおいまで感じられるような感覚におちいりました。
眼がすっかり暗さに慣れてしまうと、夜の照明って本当に必要かと思ってしまいます。

ビジターセンターに戻った参加者に権次郎さんは「昔は森の奥にクマがいて、
自分らの住んでいるそばには絶対近づかなかった。ところが人間が森の奥を荒らし食べ物を奪っておいて、ゴミを捨てたり人間の食べ物の味をクマに覚えさせたので里近くに降りてくるようになってしまった。みんな人間がそうさせた」と語りかけます。「だから何十年かかるかわからないが昔の森にかえして
いきたい」とも。

ビジターセンターが企画した「生活自体が山の自然と結びついていた人の言葉で現在の環境問題を語らせる」というねらいが見事に表現された一夜でした。


マタギの正装を身につけた権次郎さん。


実際のクマ狩りの様子:一人のボランティアをクマに見立てて熱演。


屋外では参加者がウサギ狩り体験も試みました。

ページ先頭へ↑

ページ先頭へ