白神山地
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2017年01月18日白神山地の生き物たち
白神山地 野原七恵
1月もあっという間に中旬ですね。
ここ数日の降雪でやっと雪深い西目屋らしくなってきました。
ほとんどのアクセス道路が冬期閉鎖され、約半年間は山に行けない西目屋自然保護官事務所では「冬は何のお仕事をしてるんですか?」とよく聞かれます。
「白神山地世界遺産センターの雪かきです!」とよく答えます。
半分、冗談ですが...多い時には朝昼晩と雪かきをしなければならない西目屋村ではけっこう重要なお仕事です。
残り半分の私の冬の仕事としては、春から秋にかけて実施していた調査で収集したデータの取りまとめなどを主に行っています。
調査の一つにセンサーカメラによる哺乳類の調査があります。
↑写真の様に、森の中に前を動物が通るとセンサーが反応して自動で撮影するカメラを約30台設置しています。
白神山地にどんな哺乳類が生息しているのかを調べることが目的ですが、ここ数年で増えてきているニホンジカが白神山地まで侵入してきているかどうかも監視しています。
このカメラで撮影した写真データを整理している中で、調査の成果としては発表しませんが、個人的に面白い!と思ったことを皆さんにお知らせしたいと思います。
「6月27日」
ニホンザルの後ろ姿です。
5月まで山には雪がある白神山地では6月でもまだ冬毛なのか、ふわふわした毛で可愛らしいです。
「7月1日」
同じくニホンザル。
同じ場所での撮影です。
「7月3日13時20分」
???
「7月3日13時52分」
!!!
「7月3日13時52分(拡大)」
何と30分前には毛が抜けかけでボサボサだったニホンザルさんが、あっという間に夏毛のスッキリした姿に!
6月27日と7月1日に撮影した個体と同じ個体かは後ろ姿だけでは断定できませんが、平成28年には7月3日に撮影した個体はこの日に夏毛に変わったことが分かりました。
なかなか山に頻繁に行っていても、動物に会えるチャンスは限られています。
直接は見ることができなかったことが分かるのも、カメラ調査の面白いところです。
そんな過ぎ去ったサル年での発見でした。
ちなみに昨年度までの調査成果は、概要をまとめたものを白神山地世界遺産センターのホームページで公開しています。
http://tohoku.env.go.jp/nature/shirakami/monitoring/
興味のある方はぜひご覧ください。
2016年10月21日白神山地の紅葉情報
白神山地 野原七恵
10月も半分以上過ぎ、西目屋村はかなり寒いです。
今日の山の気温は5℃でした...
ここ数日の冷え込みもあってか、紅葉もちょうど見頃になってきています。
暗門の滝へのアクセス路の「暗門渓谷ルート」はブナの「黄葉(こうよう)」がちょうど良い時期でした。
五葉松の緑とのコントラストがとてもキレイです。
ブナ林の黄葉を楽しみに訪れてみてはいかがでしょうか?
暗門渓谷ルートは名前の通りに渓谷沿いを歩きます。
昨年の落石事故から管理を見直し、ほとんど整備をしていない道となっています。
途中で渡渉して川を渡らなければならない場所もあるため、今の寒い時期に暗門の滝へ行くのはなかなか過酷です。
ですが、上の写真のように昔の歩道が残っている場所もあるので、川沿いをのんびり歩きながら渓谷の景色と黄葉を楽しむのも、良いかも!滝に行けなくてもブナ林や渓谷の白神らしい自然の魅力が伝われば良いな~と思いながら入山数カウンターまでの道を巡視していました。
2016年08月10日白神山地 藤里町のオススメ
白神山地 野原七恵
立秋も過ぎ、西目屋村はだいぶ秋らしく朝晩は涼しくなってきましたが...
夏休みに、これから山に行こうかしら...という方はたくさんいると思います。
なので、宮古の古館さんに便乗して私も夏のお出かけスポット紹介します。
白神山地は青森県と秋田県にまたがっている広大なブナ林が続く山地です。
(写真は、5月末に秋田県八峰町二ツ森登山道からみた世界遺産地域)
私は普段は青森県側にいますが、秋田県側にも素敵な場所がたくさんあります。
気軽に白神山地のブナ林を散策したい!という方には藤里町にある「岳岱(だけだい)自然観察教育林」がオススメ。
ここ数年はアクセス道路が土砂崩れや工事などで通行止めになっており、なかなか行くことができない場所になっていましたが、今年は8月12日15時から通行止めが解除され、お盆の13・14・15日は行くことができます。
※まだ工事が続くため、8月16日以降しばらくは土・日・祝日のみ通行が可能となっておりますので、ご注意ください
上の写真にもさり気なく写っていますが、一足先に通行させてもらい、先週のうちに入山者数を計測するためのカウンターを設置してきました。
夏からのオープンですが、いつもより多くの人が来るかどうか...調査結果を見守りたいと思います。
結果は1月頃に白神山地世界遺産センターHPで公表予定です。
→http://tohoku.env.go.jp/nature/shirakami/research/
【岳岱のオススメその1】
"400年ブナ"という、その名の通りに推定樹齢が400歳という巨木ブナをすぐ近くで見ることができます。
数年前に枝が折れてから元気がどうか心配していましたが、苔むしてきて味が出てきて良い感じです。
【岳岱のオススメその2】
大きな岩とブナの風景がキレイです。白神山地の他のブナ林とは違った雰囲気を楽しめます。
私は、ここを歩いていると白神山地をイメージにしているというアニメ映画のオープニングをいつも思い出します。
【岳岱のオススメその3】
私の一番のオススメはブナ林からの湧き水が楽しめることです!
地元のガイドさんがコップを置いてくれているので気軽に飲むことができます。
昨年にはテレビの撮影でわざわざ採水しに来たほどの超軟水です。
そのまま飲んでも良し!沸かしてお茶やコーヒー、カップ麺につかっても良し!とても美味しいです。
ただ...残念ながら、私が撮った写真ではなかなか良さ伝わりません...
ぜひ、足を運んでいただき、味わってもらえれば分かるかと思います。
世界自然遺産の白神山地に行ってみたいと考えている皆さん。岳岱もこれからの旅行のコースに入れてみてはいかがでしょうか?
また、夏には青々とした涼しいブナ林の中にいるだけで気持ちがいいものですが、せっかくなら色々なことを知りたい!と思う方へのお知らせです。
新しく白神山地について学んだガイドの皆さんによる、岳岱自然観察教育林の「お試しガイド」が月1回開催されるそうです。第1回は9月18日(日)開催予定とのことです。
紹介しておきながら詳しくは、私もまだ知りませんが...後日、白神山地世界遺産センター藤里館のFacebookでお知らせがあるので、要チェックです!!
→https://www.facebook.com/shirakami.fujisatokan
2016年07月06日白神山地ビジターセンターふれあいデーに出展します
白神山地 髙澤和大
皆様はじめまして。
挨拶がだいぶ遅くなってしまいましたが、4月より西目屋自然保護官事務所のアクティブ・レンジャーを務めております高澤和大と申します。これからどうぞ宜しくお願いいたします。
さて、来たる7月16日(土)~7月17日(日)に白神山地ビジターセンターで「ふれあいデー」と称した行事が開催されます。開催日には様々な催し物のほか、施設の大型スクリーンにおいてアメリカの国立公園の絶景をめぐる映像作品の特別上映が行われるなど、盛りだくさんの内容が企画されています。行事の詳細については下記URLの白神山地ビジターセンターホームページをご確認ください。
http://www.shirakami-visitor.jp/index.html
西目屋自然保護官事務所も「草木を使ったちびっ子アート教室」と題した子供向けの工作ブースを出展する予定です。色々な自然素材を用いたこの教室は毎年好評をいただいているとのことで、今年も準備を万全にちびっ子たちの来場に備えております。
また、東北各地で開催中の「東北アクティブ・レンジャー写真展」も7月1日から白神山地ビジターセンターにおいて展示させていただいています。「ふれあいデー」の期間中も継続して展示中ですので、是非とも併せてご覧ください。
2016年06月30日白神まるごと体験博覧会
白神山地 野原七恵
6月30日に白神山地ビジターセンターで白神まるごと体験博覧会のオープニングセレモニーが開催されました。
「白神まるごと体験博覧会」の開催期間中には、世界自然遺産白神山地やその周辺での様々な体験プログラムを博覧会に見立てて実施します。
そのことで、より多くの人に白神山地の魅力や価値を体感してもらおう!という目的で7月1日から9月30日の3ヶ月間にわたり体験博覧会が開催されます。
白神山地は11月~5月までアクセス道路が冬期閉鎖となりなかなか近づくことができない場所です。
ブナの緑も深くなり、沢歩きにもちょうどいいハイシーズンに様々な体験ができるという魅力的な企画です。
http://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kankyo/shizen/shirakamimarugotohaku.html
↑詳細は青森県自然保護課HP(上記URL)まで
今回は、西目屋自然保護官事務所も実行委員として参加しているため、セレモニーに出席してきました。
白神山地ビジターセンターの大型映像を見ることができる映像体験ホールで開催されました。
200席近くある会場もガイドさんや午後からのイベント参加者も含めて、多くの人で賑わっていました。
オープニングで津軽笛奏者の佐藤ぶん太、さんの演奏と共に白神山地の景色を映像で紹介。
実行委員会名誉会長である青森県知事の三村知事からの挨拶。
続いて友好交流協定を締結している韓国で初めて世界自然遺産に登録された「済州火山島と溶岩洞窟」を有する済州特別自治道からのゲストの挨拶。
実行委員会の構成団体の紹介。
と、セレモニーらしく進んで行きます。
「白神まるごと体験博覧会」としては「白神山地の清流を水遊びしながら登るシャワークライミング」や「ゴムボートで川を下ってくるラフティング」、「白神岳を海から望むシーカヤック体験」など夏らしい体験プログラムが多く用意されているのがウリです!とのことで...
それぞれ体験を提供する団体から、写真などで簡単にプログラムの紹介がありました。
業務で山と沢ばかりに行っている私には、特に海の体験は休みの日に行こうかしら...と、ついつい誘惑されてしまいました。
最後に博覧会の開幕宣言です。
会場みんなで手をつないでバンザイをして博覧会のキャッチフレーズである「来たか、白神山地」の言葉とともに開催を宣言しました。
白神山地の世界遺産地域はほとんど手つかずの森なだけあって、なかなか簡単に入ることはできません。
でも、周辺地域にも豊かな自然や文化が残っているのが白神山地の魅力だと私は思います。
そんな地域の魅力を気づかせてくれて、体験することのできるイベントが博覧会開催期間には多くあるようです。
興味があるかたは夏休みなどを利用してぜひ白神山地に遊びにきてください。
2016年04月27日新緑のブナ林
白神山地 野原七恵
4月25日に冬季閉鎖していた県道28号(通称:白神ライン)が暗門まで開通しました。
毎年この日に暗門に行くと、やっと山のシーズンが始まったと感じます。
開通に合わせて、雪が降る前に取り外して西目屋の事務所で冬眠していたクマゲラさんを設置してきました。
安生保護官と髙澤アクティブ・レンジャーが頑張っています。
本物のクマゲラより大きくて目立っているこのクマゲラさんは、絶好の記念撮影スポットになっているようで人に囲まれている様子をよく目にします。
今年も暗門を訪れた皆さんの人気者になってくれることを期待しています。
雪どけの状況を確認しにブナ林散策道の様子も見てきましたが...
今年は驚くほど雪がありませんでした。里は少なくても、なんだかんだ山にはあるのかと思っていたので驚きです。
昨年の4月24日の同じ場所です。
毎年、散策道の開通に合わせて歩道の雪かき作業のお手伝いをしに行っていますが、今年はその雪すら全然ありませんでした。
この雪の少なさと雪どけの早さが、山にどう影響していくのか気になるところです。
また、散策道ではオオイワウチワやカタクリが満開でした。
花の開花状況も例年より少し早いように感じます。
ブナの新緑も徐々に始まっているようでした。
白神山地と言えばブナ林ですが、個人的にはこの新緑のときが一番オススメです。
同じブナ林でも季節ごとに魅力が違うので、ぜひ新緑のブナも弘前の桜とセットで多くの人に見ていただきたいと思っています。
2016年03月25日西目屋村の冬
白神山地 伊藤 亮平
西目屋村の冬
冬は白神山地までの道は雪で閉ざされ、夏の間に行っていた場所にはほとんど行くことができません。そこで、西目屋のARは冬の間どんな事をしているのか? 紹介したいと思います。
冬の間の主な業務
①調査の取りまとめ
私は入山者数調査の為のカウンターや気象観測施設を担当しており、春~秋の間は主にこれらの管理のために山に入っています。
冬の間は主にこれらの調査の結果を取りまとめる作業を行っています。取りまとめたデータから記者発表資料や報告書を作成しており、白神山地世界遺産センターのHPにも掲載しています。
http://tohoku.env.go.jp/nature/shirakami/
②除雪
雪国にはつきものですが、実は除雪作業が一番大変です。西目屋村はとにかく雪がたくさん降るので、朝事務所に来たらまず玄関回りや駐車場入口を除雪します。また屋根から落ちた雪がどんどん山になっていき屋根とつながってしまうので、これも定期的に崩さなければいけません。降雪が多い日には一日二回必要なこともあります、日も短いので雪かきしていたら日が暮れていた・・・なんてこともあります。
子どもの頃は雪が降ったら雪遊びができるぞと喜んでいましたが、今はほどほどが一番だなあと思います。
今の時期になるとだいぶ暖かくなってきて、もうすぐ春だなという感じがしてきます。
春と言えば東北はまだ早いですが桜、また年度の変わり目の入学・卒業シーズン。私も今年の3月でアクティブレンジャーを卒業します。
この2年間、あっという間でしたが広い白神山地の色々な場所を歩くことができました。
白神山地を歩くなかで特に印象に残ったのは水が豊かだということです。ブナ林は森のダムと呼ばれるだけあって至る所に沢があります。ルートも沢沿いを使ったものが多く、陽に照らされきらめく清流の中を歩いているとこの水が森や山の麓の命を育んでいるんだなあと感慨深く思うことがありました。そして改めて世界遺産に選ばれた大切な自然であることを実感しました。これからはアクティブレンジャーとして関わることはなくなりますが、この自然を後世に残していく一助になれるよう、活動していきたいと思います。
2016年02月19日冬山トレッキング
白神山地 野原七恵
2月12日に西目屋小学校4年生の子どもたちと冬山の生き物探しに行ってきました。
当日は天気にも恵まれ、暖冬で残っているか心配していた雪も数日前に降ったおかげで十分にあり、スノーシュートレッキング日よりでした。
今回は西目屋村内で、冬期閉鎖していて車が通れない道を歩きながら、雪の上に残った動物の痕跡探しをしました。
身近な場所ですが、普段であれば冬には行けない場所に行ける!ということでわくわくしています。
何か発見があれば観察しながら進んでいきます。
たくさん見つかったのはウサギの足跡。
「ウサギの後ろ足は子どもの手袋と同じくらい大きい!」「大きいからスノーシューを履いている自分たちと同じで、あまり雪にも沈まない!」という発見がありました。
言葉で説明するのは簡単ですが、実際に見てみるととてもよく分かります。
これは何の動物の足跡だろう...と自分たちで推理しています。
「足跡が雪に深く残っているね。ウサギより身体が大きいから重くて、足が細い動物かな?」とヒントをあげると...
自分の手を突っ込んで、本当に深いかを確かめます!素晴らしい発想です!
結果、蹄の足跡だったのでカモシカと判明しました。
観察中は疲れも忘れますが、慣れないスノーシューに子どもたちもだんだんふらふらに...
お弁当を楽しみにしながら頑張って歩いて、なんとか目的地まではたどり着くことができました。
無事に目的地に着いてからは、スコップで雪を掘ってもらいます。
足場を掘ることで、雪を使ってお弁当を食べるイスとテーブルを自分たちで作りました。
さっきまでの疲れはどこに行ったのか、足場を掘る係とテーブル用に雪を積む係に分かれて楽しそうに作業しています。
頑張って作ったテーブルの向こうに広がる景色は...
晴れていたおかげで白神山地の山並みも遠くに見ることができました!
最後に、頑張って歩いたので、西目屋自然保護官事務所で使っているストーブのペレットの空き袋を使って"しり滑り"をして楽しんできました。
実際に動物を見つけることはできませんでしたが、たくさんの動物が住んでいる痕跡を見つけることができ、さらに冬の山での楽しみ方を体験することができました。
白神山地がすぐ近くにある西目屋村の豊かな自然を感じることができたのはないでしょうか。
2015年12月18日白神学習のまとめ
白神山地 野原七恵
12月17日に西目屋小学校の5年生の子どもたちと「白神学習」のまとめを行ってきました。
4年生~5年生の総合的な学習の時間を使って、白神山地で体験してきたこと、白神山地について学んだことの総括です。
今年は先生同士の繋がりを利用して「沖縄の小学生と情報交換をしよう!」ということで発表をビデオに録画しました。
メインキャスターの挨拶から始まり、けっこう本格的に白神山地のことをお知らせするニュースが始まりました。
お天気お姉さんならぬ、お天気お兄さんが今日の西目屋村の様子をレポート。
ちょうど雪も降っていて、沖縄の子どもたちには青森の雪国らしさが伝わったのではないでしょうか。
写真を使いながら、西目屋村の良いところや、ビジターセンターなどの白神山地に関わる施設を紹介していきます。
5年生の教科書に「世界遺産白神山地からの提言」という話が載っていて、それぞれが白神山地を守って行くためにどうしたらいいのか考えようという内容になっています。
考えるための参考に11月には筆者の1人である斎藤宗勝先生にもお話を聞いています。
地元の小学校なだけあって、贅沢な学習です。
その中で学んだことや、考えたことも発表します。
4年生の総合学習で行った大カツラや体験したことの紹介もします。
こんな風に覚えていて楽しかったと発表してもらえると、私も頑張って連れて行ったかいがありました。
10月には白神山地の中でも人気スポットである暗門の滝の近くの施設でアンケート調査を行いました。
その結果も報告しつつ、調査結果から分かったことからしっかり考察もしています。
最後に1人1人、自分の意見をまとめた提言文を発表します。
「これからの白神山地のためには、その価値を多くの人に知ってもらう必要があるので、人を入れながら守るべきだ」という意見が多く、理由までしっかりまとめられていました。
自分たちも白神山地の自然を体験して、多くの人にぜひ来て触れてもらいたいと思っていてくれたみたいで、とても嬉しく思いました。
編集してから沖縄の小学校に送って、見てもらう予定だそうです。
みんなの意見にもあった「白神山地のことを多くの人に知ってもらう」ための第一歩だと思います。
6年生になったら白神山地だけでなく、ちょっと視点を広げて西目屋村のこれからについて考えて行く予定です。
我々が教えるのもここまで。また次の4年~5年と一緒に白神山地の体験学習を続けていきたいと思います。
世界遺産の未来を担っていく子どもたちに、どんな形でもいいので自分なりに白神山地のことを考えて頑張っていってもらえたら嬉しいです。
こんにちは。
西目屋自然保護官事務所の髙澤です。
西目屋自然保護官事務所が位置する西目屋村には、古くから作物の豊凶を占う神事が行われるなど、津軽地方のみならず広くその名を轟かせた乳穂ヶ滝(におがたき)という滝があります。
上は2012年2月17日のAR日記から転載した乳穂ヶ滝の写真です。まるで神殿の巨大な柱のように、美しい柱状の氷瀑を作り出すことが特徴です。滝そのものについては2012年の当該記事において詳しく紹介されていますので、そちらも是非ご覧下さい。
さて、今冬の乳穂ヶ滝はというと...
2017年1月26日の様子。徐々に成長しているところです。
(写真右側が乳穂ヶ滝。左側はただの氷柱です。)
2017年2月7日の様子。残念ながら折れてしまっていました。
(ちなみに地元小学校への出前授業のために何度か足を運んでいます。)
今後の気象条件によっては再び氷柱が成長し、立派な氷瀑となる可能性はあります。そのように氷柱が滝壺に達して一本の柱状になることが見どころというわけですが、必ずしも氷柱が毎年そこまで成長するわけではありません。近年に完全氷結した年は、西目屋村の広報誌によると2014年、2013年、2012年、その前は2008年ということです。
ところで話が変わりますが、西目屋自然保護官事務所では自然保護官事務所としては珍しく、本格的な気象観測を行っています。気象観測は気象庁が行うものでは?と思われるかもしれませんが、必要に応じて他の行政機関などが独自に気象観測施設を備えること自体は珍しいことではありません。
西目屋自然保護官事務所は白神山地の自然環境をモニタリングするため、3箇所の気象観測施設を設置しています。この内、乳穂ヶ滝にほど近い西目屋気象観測施設のデータを見てみます。
上の図は2017年1月9日から2月8日までの1ヶ月間における日平均気温を、3日間で移動平均した値をプロットしたものです。寒暖のサイクルがよく分かると思います。1月26日まで順調に成長してきた氷柱は、その直後の暖気には耐えたものの、2月5日のピークに耐えきれずに崩落してしまったようです。
次に、直近7年間の1月の月平均気温をプロットした図を見てみます。2013年の西目屋気象観測施設が欠測でしたので、参考として気象庁アメダスの弘前地点のデータを併せて載せてみました。完全氷結した2012~2014年は-3℃~-4℃の値ですが、2015年以降はやや高い値になっています。2011年は2014年と比べると低い値ですが、氷柱の成長には寒さだけでなく寒暖のタイミングが重要らしいので、寒い方が良いと一概に言うことはできません。
各年の気温の推移を詳しく分析していけば深い考察が出来そうですが、私は氷柱の研究者ではありませんので、データ弄りはこの辺にしておきます。
西目屋気象観測施設と世界遺産センター西目屋館
先ほども触れましたが、西目屋自然保護官事務所の重要なミッションの一つに白神山地の自然環境のモニタリングが挙げられます。世界自然遺産として登録された価値を将来にわたって保全していくため、自然環境の推移を見守り、変化があれば原因を追及し対策を講じることも我々の役割です。
ひるがえって乳穂ヶ滝では、冒頭で紹介したように古くから作物の豊凶占いが行われ、かつてこの地を治めていた津軽藩も滝の氷結具合を観測に来ていたとされています。その目的は年貢の徴収や飢饉の予測などの治政のためであったと想像できますが、継続的な観測という行為自体は現代のモニタリングに通じるものを感じます。
乳穂ヶ滝を眺めながら、目的や対象は違えども似たようなことをやっていた先人達に想いを馳せてみました。
最後になりますが、乳穂ヶ滝の豊凶占いは現代も続いています。毎年2月第3日曜日の「乳穂ヶ滝氷祭」において、豊凶占いや火渡荒行が行われています。今年は2月19日になりますので、ご興味を持たれた方は是非訪れてみて下さい。