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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

一見、コハクチョウの成鳥ですが・・

2011年12月15日
秋田
 今年は秋田県内各地から『カメムシ大発生』の知らせがありました。森吉山野生鳥獣センターでもそれはもう凄い数のカメムシが発生していました。『カメムシが大発生した年は大雪になる』という言い伝え(?)がありますが、これまでのところ雪が少ない状態が続いています。カメムシと積雪の関係性はどうか分かりませんが、雪の量はどうなるか?気になる今日この頃です。




 大潟村やその周辺を調査や巡視で回っていると各所でガンの群れやハクチョウの群れを見かけます。中でもハクチョウ達は色彩の乏しい風景の中にあって白い羽が鮮やかで、体も大きいので遠くからでも目を引きます。

 保護区内にも塒があるため、たくさんのハクチョウ達を見る機会があるのですが、一見・・真っ白いハクチョウ成鳥と灰色のハクチョウ幼鳥が一緒に過ごしている様に見えますが、近くでまじまじと観察すると白いハクチョウ成鳥の中には『真っ白』では無い個体も見えますし、灰色のハクチョウ幼鳥も全身が一様に灰色では無い個体が多いようです。白か灰色かでは単純に割り切れない個体が思ったよりも多いようです。

 今日の日記は【コハクチョウ】の群れの中に見つけた『一見、【コハクチョウ】の成鳥』に見えるけれど灰色の羽が混じっている個体が主役です。


 左手前の個体はほぼ真っ白の【コハクチョウ】成鳥。その向こうが今日の主役である成鳥のようですが一部灰色の羽が残っている【コハクチョウ】。更に向こうに【コハクチョウ】の幼鳥がいます。
 手前の成鳥と今日の主役を見比べてみてください。パッと見はどちらも成鳥ですよね。でも主役の頭部や頸部には斑に灰色(←黒っぽく見えますが・・)の羽がびっしりと混じっているのが分かります。


 この写真は向かって右側が主役で左側に幼鳥がいます。こうしてみると幼鳥も一様に灰色の羽をしている訳ではないようですね?背中(実際には背中が見えているのではありませんが・・・)側の羽が所々白い羽に換わっているのが分かりますよね。
 今度は幼鳥の頭部から頸部にかけて注目して見てください。他の部分に比べて一段と灰色の色合いが濃くなっているように見えます。このあたりにはコインサイズの羽がびっしりと付いているはずですがその色合いや密度が濃いためこうした見え方をしているのかな?と仮定して、その意識のまま主役に目を移すと、主役の「灰色の羽見られる部位」と幼鳥の「灰色が濃い部分」とが重なるように感じませんか?


 この写真はたまたま羽を広げた後(羽を広げた時の写真は失敗してました)に撮影したものですが、翼角部分にも灰色の羽が残っている事が確認できました。普段、羽をたたんでいるときには気がつかなかったことでした。
 この部分も小さな羽がびっしりと付いているはずです。どうやら・・・サイズの小さな羽に灰色の羽が残る傾向があるようです。


 野鳥の全身の羽を調べてみると翼では(概ね・・)一番下に付いている風切が最も大きくその上に大雨覆、中雨覆と上になるにしたがって羽のサイズが小さくなり一番上にある羽が最も小さくなります。体羽では(概ね・・)胴体部分の羽は大きくそこから頭部へかけて徐々にサイズが小さくなっていきます。今日の日記の主役に灰色の羽が認められるのは、そうした羽そのものが小さな部分に集中しているようです。


 今日の主役を通してこのような事が見えてきましたが・・・私にはこの先のことを語る事が出来ません。灰色の羽がなぜこうした部位に見られるのか?【コハクチョウ】の換羽の順番は?今日の主役は何齢なのか?分からないことだらけです。しかし今日の主役のような個体は決して珍しい事例というわけではありません。この日記では昨年もこのような記事を書いていました。
 もう少しこうした観察機会を持つことが出来れば何かヒントが見えてくるかも知れませんので・・・明日も【コハクチョウ】の羽の話をしようと思います。今日のところはこの辺で。