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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

蒲生干潟の鬼退治

2023年09月01日
仙台 鎌田 和子
こんにちは、仙台自然保護官事務所の鎌田です。
国指定仙台海浜鳥獣保護区蒲生特別保護地区内で8月下旬に、鬼退治をしてきました。
この世の中に、鬼がいるのか、信じがたいかもしれませんが、鬼は確かにいました。その正体は、アメリカオニアザミという外来植物です。鬼退治の様子をお伝えします。
 
今年の7月下旬、蒲生干潟の日和山周辺で一株のアメリカオニアザミを見つけました。すでに、花は終わりに近く、結実しだしていました。
日和山周辺で見つけたアメリカオニアザミ
日和山周辺で見つけたアメリカオニアザミは、周りの緑の中で目立つ存在でした。
果実をたくさんつけているアメリカオニアザミ
アメリカオニアザミに近づいて見ると、たくさんの種子をつけています。灰白色のそう果(種子)と紅紫色の花もまだ見られます。
今にも飛び出しそうな灰白色のそう果(種子)
今にも飛び出しそうな灰白色のそう果(種子)を見た時、早く駆除をした方がベストだと思った半面、この花が満開だったら見事だろうなと思っていました。
次の巡視の時にでも、防除をしようと軽い気持ちで半月が経ち、改めて確認したところ、そう簡単ではありませんでした。たった1株でしたが、結実したそう果はざっと400個、作業用の厚手のグローブも貫く刺を全身にまとっていました。これはもう、鬼退治です。
駆除当日のアメリカオニアザミ
駆除当日のアメリカオニアザミは見た目、全体枯れた感じです。枯れていたら、少しは駆除作業が楽になるかなと、甘い考えがありましたが、そうではありませんでした。
アメリカオニアザミの全身の刺
アメリカオニアザミの全身の刺、枯れてくると同時に鋭い棘は硬くなり、チクチクと襲ってきます。
剪定バサミで結実した種子を切り取る作業
厚手のビニール袋と剪定バサミ、草刈鎌を用意して、結実したそう果を切り取ることにしました。あっという間にビニール袋は切り取った実でいっぱいになりました。
草刈鎌で根の掘り起こし作業
茎と葉を取り除き、草刈り鎌で根を掘り起こしました。赤丸で囲んでいるのは根の部分、太いところで直径5㎝、長さは40㎝ありました。さすがに根の部分には刺はありません。 さらに袋に入れるため細かく切りました。
ギュッと袋に鬼を詰め込みました
ギュッと袋に詰め込む際、やはり手では危ないので、長靴で袋の外側から押しつぶすようにして、何度か詰め込みました。袋の中から、あちこちから刺がつきでていました。生えていたところの周りの種子も拾い集めて袋に入れて、密閉し、今回の鬼退治は終了しました。
アメリカオニアザミは生態系被害防止外来種です。ヨーロッパ原産の1~2年生草本で、日本には1960年代に入ってきた植物です。花期は7月~10月ごろですが、1回繁殖型の植物です。今回駆除した株は、種子から発芽して1~2年で成長しており、最後に種子散布をして枯れる寸前のものでした。発見した時からすでに種子散布が始まっていたと思われるので、この秋から春にかけて、発芽する個体を発見したら、根気よく摘み取ることで、蒲生干潟の日和山周辺で群生したりすることのないように、心がけたいと思います。 
 
皆さんのお住まいの場所でも、アメリカオニアザミが生育している可能性があります。花の頃に発見して種子の広がりを防ぐことができたら一番良いのかもしれません。しかしその時期にはすでに刺が目立つ季節でもあります。どうぞ、防除するときは、ケガをしないように、長袖、厚手の作業用グローブなどで身を守って作業をしましょう。また、腐らせるなどして燃えるゴミなどに出すときも、「刺に注意」等危険なことを分かるようにして出しましょう。