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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

守るつもりが脅かしていたなんて

2022年08月12日
大船渡
こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本麻由子です。
 
碁石海岸では近年、イタドリやセイタカアワダチソウなど迷惑植物が侵入してきています。両者とも日本生態学会によって日本の侵略的外来種ワースト100にも選ばれている植物です。皆さんの周りにもきっとわんさか生えているのではないでしょうか。
イタドリは山菜として、セイタカアワダチソウはハーブとして利用される面があるなど、一概に悪者扱いはできないなと思いつつ、園地内で生育面積を広げていく様を見ていると、ここにはお呼びでない植物だと言わざるを得ません。
今時期のイタドリ
今時期のイタドリ(濃い緑の葉)
今時期のセイタカアワダチソウ
在来種を脅かす強靱な生命力と桁外れの繁殖力で毎年々々種と根で増えていく彼ら。種から増えるのだけでも防ごうと、花を付ける前の夏の終わりに上草を刈って微々たる抵抗をしています。
 
先日、パークボランティア活動で園地内の侵略具合を調査しながらセイタカアワダチソウなどの迷惑植物の引き抜き作業を行いました。
碁石海岸は駐車場から遊歩道を数分歩いて海沿いに出ることができます。迷惑植物は海沿いの遊歩道沿いにはほとんど見られず、駐車場から園地に入ってしばらくのところまでで終わっているのです。靴の裏にくっついた種が運ばれる範囲を示しているのかなと考えました。何か講じられる対策がありそうです。
生育状況を確認しながら刈ったり抜いたり
普段は立ち入らない草地の中にも目に余る迷惑植物たちが見えたので慎重に分け入って処理をしていると何やら目線が気になりました。
ホオジロのペアがコチラの様子をうかがっている
ホオジロのペアがコチラの様子をうかがっているようです
何か餌を咥えて人間が動いても飛び立つ様子は見られません。何だろうと観察しているとオスがもっと近くに飛んできました。
何か言いたげなオスのホオジロ
何を咥えてる?
ズーム×1
ズーム×2
羽と脚のないバッタを咥えていました。これは雛に与えるために丁寧に親鳥が下ごしらえした餌だと想像できました。ということは我々の近くに巣があって、その中に雛がいる。慌てて私たちはその場をあとにしたのでした。
 
園地の生態系を守ろうと活動していた自分たちが、ここに住む鳥たちの生活を脅かしていたことに気づかされました。自然の中では人間は脅威でしかない、と動物たちは思っているかもしれません。目的とはちょっと違う方向ではありましたが、自然の中で生きることについてまたしても考えさせられた活動となりました。
自分以外の命が自然の中で営まれていることを想像しながら世界を見ると、見え方が少し違ってくるかもしれません。身近な自然の中でできる想像、してみませんか?