東北地域のアイコン

東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

シジュウカラガンが警戒したとき

2011年11月28日
秋田
 とあるシンポジウムのような「集い」に参加したときの事。
 主催者された方と談笑した時『こういう会での挨拶って緊張するね』とホッとしたように話しておられました。きっと試行錯誤して何度かリハーサルもして臨まれたのではないでしょうか?私は明確な”ねらい”をシンプルに短くまとめた良い挨拶だと思っていました。確かな成功例です。

 とある会の冒頭。
 担当者の挨拶に致命的な言い間違いがあって・・・周囲からは失笑が。配付された資料も間違いが複数箇所あり、体裁も調わず・・・「資料」としてはなんとも残念な物に。どうみても大失敗の事例です。

 対照的な2つの事例に、それに望む意欲と事前の準備によって大きな差が生まれることを思い知ったところです。




 さて・・・

 今期は多数の【シジュウカラガン】が日本にやって来ているようです。その羽数を聞いて『それが全部揃ったら・・・』なんて想像をするだけでワクワクします。
 昨日の時点で、大潟やその周辺には10羽(もう少し多いとの情報もありますが・・)の【シジュウカラガン】が確認できています。その時々でハクチョウの群れに交じっていたり、ヒシクイの群れに交じっていたり、過ごす場所もその時々でバラバラですが、私的にはあまり探さなくても行く先々に【シジュウカラガン】がいてくれるので観察機会も多く、楽しい観察も出来ています。今日はその中から【シジュウカラガン】の警戒姿勢について取り上げました。



 塒や採餌場所にで過ごす【シジュウカラガン】を観察するしている時、彼らは私たち人間に気づくとその首をイッパイに伸ばして出来るだけ高い視線で遠くにいる私たちの動きを確認しようとしますよね?直立して首をピンと伸ばすその姿勢は『気をつけ!』状態のように見えます。


 『気をつけ!』をしている【シジュウカラガン】です。この姿勢は皆さん見たことがあるでしょう。明らかに私に注意が向けられています。


 
 でもこの姿勢は、私たち人間に対して警戒するときに見せる動きのようで、自然界にいる警戒すべき相手の前では全く違った姿勢を見せます。


 首を地面スレスレに下げて、腹ばいにならんばかりに低い体勢で視線を上空へと向けています。先ほどまでは時々私に視線を向けながら採餌していましたが、今は私は眼中にありません!!【シジュウカラガン】が見ているのは、この後しばらくしてから猛スピードで上空を通過することになるハヤブサ幼鳥です。

 このところ、大潟村内やその周辺ではハクチョウやガンの群れに襲いかかるハヤブサ幼鳥を見かけることがあります。実際に狩りをする場面は見たことがありませんし、万が一狩りをしたとしてもハヤブサの体力ではガンやハクチョウを運ぶことが出来ないでしょうから『獲物』であるかどうかも怪しいですし、ハヤブサ成鳥ではその様な行動は見かけないと聞きますから、幼鳥の戯れの様な行動である可能性が高いようです。

 そのハヤブサ幼鳥がハクチョウと【シジュウカラガン】が採餌している田んぼにやって来た時・・・ハクチョウたちは全く意に介していないようで採餌を続けていましたが、日本にやってくるガンのうち最も身体の小さな【シジュウカラガン】は警戒せずにはいられなかったのでしょう。まだ遠くにいるハヤブサをめざとく見つけてしっかりと警戒して態勢を整えていたのです!!


 ハヤブサ幼鳥が遠くへ去った後、それを確認するように徐々に首をあげる【シジュウカラガン】です。
 この後、私に対する警戒心がどうなったか?と言いますと・・・ビックリするほどノーマーク状態に。。餌を食べながら徐々に近づいてきたほど^^


 【シジュウカラガン】に限ったことでは無いようですが、彼らは警戒すべき相手によってその警戒の仕方も変えて対応しているようです。そして自然界で暮らす彼らにとってはちょっと離れた場所で見ている観察者(私)よりも自分の上空を猛スピードで飛ぶハヤブサ幼鳥の方がずっとずっと警戒すべき相手なんですね。

 厳しい自然界をこれまで生き抜いてきた【シジュウカラガン】の「能力」に触れた気がした観察でした。