東北地域のアイコン

東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

使者がやってきた

2007年10月25日
秋田
あちこちでハクチョウが飛来した。マガンが飛来したというニュースを聞くようになりました。そういえばいつの間にか最高気温も20度に達しなくなりました。冬の使者は確実に季節が変わっていくことを知らせてくれます。

 先週、大潟草原に大潟中学校の生徒4名と先生2名が校外学習に来てくれました。この生徒達に会うのは2回目です。(生徒達は3回目の訪問ですが・・)
 大潟中学校では総合学習の時間に「社会科学」「人文科学」「自然科学」の3チャンネルからそれぞれが好きな分野を選択し、学習をします。彼らはその自然科学の中から『大潟村の野鳥』を選択し取り組んでいます。そんな彼らの力になれれば私たちも嬉しいので管理員の加賀谷さんと二人、仲間に入れてもらいました。
 
 生徒達は来月にこれまでの成果をまとめた発表会を控えています。そこで彼らがこれまでに観察し撮影した野鳥の画像を加賀谷さんに見てもらい判別してもらいます。それらの画像は手作りの大潟村地図の上に貼り付けられ観察記録としてまとめる予定だそうです。でも今回はその発表会を過ぎても野鳥観察は続けたいという希望もあって管理員の加賀谷さんとっておきの「これから見られる野鳥」の観察場所を聞いて付箋紙を貼り付けていました。本当に熱心なんですよ!

観察した場所に野鳥の写真を貼り付けていく。
 
実際に観察も行いました。まずは管理棟の二階から。今管理棟からは池に居るコガモの群れが観察されます。そのコガモたちを観察していたらチュウヒがやってきました。それを見てコガモたちは一斉に飛び立ちます。チュウヒとコガモの鬼ごっこは暫く続きました。そこへもう一羽の猛禽類が・・よく見るとオオタカです。オオタカは悠然と木の上に止まりその様子を眺めているようでした。加賀谷さん曰く「オオタカはしっかり狙いを定めて獲物を狙う」そうです。また反対側の水路上空にはミサゴが独特の動きから水面めがけて急降下を繰り返していました。更に上空ではトビがくるりと輪を描いています。一口に猛禽と言っても全く習性が違うのですね。


一斉に飛び立つコガモの群れ。迫力が伝わればいいのですが・・

 更に足を伸ばして北の池へ。ここは私も最近お気に入りの観察スポットでカモ類が多く見られます。この日は5種類のカモ類を観察しましたが、思っていたよりも数が少ない。それではと大潟村の北辺へ。そこはマガンやヒシクイが飛来する場所だそうですが、近くにはカモ類も見られます。北の池からこちらに移動していないか?と期待していきました。すると残念ながらまたしても期待はずれ・・意気消沈しかけたその時、ある生徒が『あそこに黒い鳥がいるよ!』と。『えっドコ何処?』と指さす方向を見やるとマガンが9羽、ヒシクイガ4羽いるではありませんか!びっくりです。『凄い。大潟村では今季初観察だよ』と加賀谷さんが興奮気味。スコープで観察していると別の方向からもマガンの声がします。『あれ?他にもいるの?』と見渡しても見つかりません。それでも鳴き声は確かに聞こえます。『あそこ!』と指さした先は上空。そうなんですマガンが飛来した現場を生で見ちゃったんです!!それには一同大興奮です。(特に大人4人でしたが・・)時を忘れて暫く見とれていました。

飛来したマガンの群れ。遙か上空から旋回しながら下降してきました。その数は1000を超えるものでした。

マガンを観察しています。生徒よりも大人達がスコープを使う時間が長かったかも?

それにしてもこの日はアクティブレンジャーになって最高の観察が出来た日でした。何という幸運でしょうか。帰宅してからも興奮していたくらいです。マガンやヒシクイが冬の使者ならばこの生徒達は私にとって『幸運の使者』かもしれません。その彼らが最後に「野鳥たちのために僕たちにも出来ることはありませんか?」と質問をしてきました。我々は「もっともっと鳥に興味関心をもって鳥たちが住みやすい大潟村になるようにゴミのない街にするなど鳥にとって住みやすい自然環境を守ってください」とお願いしました。