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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

不気味なカップケーキ

2023年11月20日
宮古 池田 理恵
こんにちは。
宮古自然保護官事務所の池田です。
10月上旬、ボランティアの方々と園地の清掃をしていたところ、奇妙なものを見つけました。


これ、何だと思いますか?
1つが6mm程度の大きさのカップ状の中に白っぽいつぶつぶが入っています。
 
・・・・・・カップケーキのぎざぎざした入れ物にちょっと似ていなくもない。中身は白っぽいつぶつぶなので、スポンジケーキではなく、ひょっとしてお菓子のデコレーションに使うアラザンだろうか?・・・・・・初めて見たとき、お菓子が好きな私はこんな風に思いました。それからいつもこの生き物に出会うと無性にカップケーキが食べたくなります。
 
このカップ状の正体、製菓用カップに入ったアラザンなどでは決してありません。
スジチャダイゴケというキノコです。
一つ一つがとても小さく、小枝や枯葉に紛れていることがあるので、地面をよく見ていないと見逃してしまいます。時には群生して圧倒的な存在感を放っていることもあるかもしれません。


カップの中の白いつぶつぶは胞子の塊で、雨粒が中に落ちると、塊がはじけ飛ぶ仕組みになっています。
 
5年前に初めてスジチャダイゴケを見つけた時、アラザンかどうかを確かめようと中の粒をピンセットで取り出そうとしたのですが、白い糸が底とつながっていて取れませんでした。簡単に取れると思い込んでいたので、予想外の屈強な白い糸に怖くなり、無理矢理引っ張らずに戻しました。
雨粒が落ちた衝撃で糸が切れるのでしょうか?仕組みは分かりませんが、いつかカップの外に飛び出る瞬間を見てみたいものです。
 
キノコらしくない形をしたスジチャダイゴケ。秋雨の森の中、散歩するあなたの足に胞子をくっつけようと落ち葉の隙間からひっそりと狙っているかもしれません。