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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

井土浦を歩く

2024年08月08日
仙台 鎌田 和子
こんにちは、仙台自然保護官事務所の鎌田です。
国指定仙台海浜鳥獣保護区井土浦特別保護地区の貞山運河より海側を久々に巡視してきました。普段は貞山運河沿いの宮城県道のサイクリング道路と国土交通省の河川堤防を歩いて巡視をしています。今回は井土浦の海側で、東日本大震災の津波被害等の影響のために、仙台市若林区荒浜深沼海岸のところから行くことしかできないちょっと不便なところです。防潮堤を歩き、井土浦にたどり着くにはおよそ5㎞を歩きます。その昔は、自転車を公用車に積んで出かけ、レンジャーと海風を感じながらサイクリング巡視をしたこともありました。
震災後は津波警報が出たら、どうしようと思うところもあり、臆病になっていましたが、それでも、今の環境がどのようになっているのか、「記録を残したい」その思いで、6月と7月、2回目の巡視となりました。その様子をお伝えします。
モトクロスバイク進入禁止の看板
井土浦特別保護地区内に昨年秋に国土交通省が建てた看板です。モトクロスバイク進入禁止と、井土浦の砂洲・潟湖、砂浜海岸だけの貴重なふたつの生態系、大切な場所を保全に努めていることをモトクロスバイクで入る人々に訴えています。
モトクロスバイクの車輪の傷跡
防潮堤からの6月に撮影した写真です。右下から左に防潮堤、管理道路、海浜植物群落の場所、潟湖、ヨシ原と続いています。海浜植物群落の部分には、今もバイクの車輪痕が生々しい状態でした。国交省のパトロールカーも巡視しています。
7月の巡視の際のいきものを紹介します。
干潟の杭で休むミサゴ2羽
遠くからの撮影です。ゆっくり休んでいるミサゴが2羽、その後ろをもう1羽が飛んでいました。ミサゴがいるということは、餌となる魚がいるということで、震災後も貞山運河から井土浦でよく確認ができます。
干潟でよく見かけるアシハラガニ
干潟では多くのアシハラガニが採食行動をしていました。足元に来たアシハラガニと植物はハママツナです。
ケカモノハシ群落
イネ科の植物のケカモノハシは、花穂が二つに分かれているのが特徴です。群落が広がっていました。
ハマナデシコ
緑の海浜植物を見ながら進んだ先に見つけたピンクの可愛い花はハマナデシコでした。
夏の海浜植物 ウンラン
砂浜で這うように生育し、葉は3~4枚の輪生し、葉もバラの花の様にみえます。ウンランも花が咲きだしていました。
ハマニガナ
点在するハマニガナも咲いていました。
震災前と比較できそうな写真を紹介します。
昔の松林と井土浦
平成21年の写真です。井土浦の潟湖の周辺は松林に覆われていて、チラッと水面が見えるだけでした。
井土浦の開けたところから貞山運河の松林
こちらも平成21年の写真です。松林をぬけて開けたところから井土浦、貞山運河の松林を見ています。
井土浦の開けたところから貞山運河の松林だったところ見る
こちらは現在の写真7月に、ここだったかなと思い出して撮影したものです。潟湖の水位に違いを感じたところです。
東日本大震災の津波を受けた蒲生干潟と同様に、ここも大きなダメージを受けましたが、時間をかけて回復してきています。今でも、シギ・チドリ類及びガンカモ類をはじめ、多くの水鳥類の生息地となっているほか、塩生植物群落や湿地性植物群落も見られ、希少な動植物の生息地であり生育地になっています。今後も多様な自然環境の様子を歩いて報告したいと思います。
井土浦の防潮堤の突端の黒い雲
防潮堤の突端と砂浜のところで、雲行きが怪しくなってきました。雷に合わないように安全に戻ります。
<皆さまへお知らせ>
現在、宮城県のホームページで、下記について、パブリックコメントを募集しております。
蒲生干潟自然再生協議会では、蒲生干潟及び周辺の砂浜・河口の保全について普及啓発を進めることを目的に、利用ルール(案)を作成いたしました。
ぜひ、皆さまのご意見をお待ちしております。
締め切りは、令和6年8月19日ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

「蒲生干潟、砂浜及び河口利用ルール(案)」に係る
県民の意見(パブリックコメント)募集について

https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/sizenhogo/gamou/riyouru-ru.html