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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

出羽三山・月山 嵐の開山祭

2024年07月25日
羽黒 守屋明子
7月1日(月)に出羽三山の主峰・月山の開山祭に参加しました。
5月下旬から磐梯朝日国立公園の各地では、毎週のように開山祭が開催され、多くの関係者が集います。月山は開山祭リレーのアンカーです。
 
標高1984mの月山山頂に建つ月山神社本宮で執り行われる開山祭には、山岳関係者のみならず、一般の方も毎年大勢訪れます。行事開催中は境内に人が溢れて収まりきらず、長い行列ができるほど。それは月山に夏の訪れを告げる風物詩。山頂や九合目にある山小屋では、開山祭参加者にお汁(汁物)のふるまいが行われ、山中が普段に増して賑わう一日です。
 
羽黒自然保護官事務所も毎年開山祭に参加しています。今年は月山の北側からのルート、羽黒ルート巡視も兼ねて前日に入山し、山中一泊の行程としました。登山口までのアクセス道(県道月山公園線)は前日夕方に冬期通行止めが解除となったばかり。今年初めて足を踏み入れました。
 
羽黒ルートの登山口となる月山八合目には、弥陀ヶ原湿原が広がっています。登山を目的とすると通過点になりがちですが、高山植物や生き物が豊富に生息する貴重な湿原。月山の北部に張り出したような広い溶岩台地に大小さまざまな池塘が散らばり、北方に日本海や鳥海山を望む別天の地です。周回できるよう木道が整備され、出羽三山エリアを代表する景勝地でもあります。
欲張っていろいろご紹介したいところではありますが、午後から天気が崩れる予報だったため駆け足で通り過ぎましたので、写真数枚のみとさせていただきます。
月山
月山八合目登山口の案内図が今シーズンからリニューアル
月山
ニッコウキスゲが咲き出していました
月山
ミツガシワが揺れる地塘越しに出羽の名峰・鳥海山
月山
無量坂から弥陀ヶ原を望む
弥陀ヶ原から頂上までは、最後に厚いガスに覆われましたが、初夏の月山らしい風景を見ることができました。
月山
山人を癒やす優雅なシラネアオイ
月山
岩の隙間から背伸びしていたウサギギク
月山
オモワシ山からの振り返り 佛生池小屋と雪渓
月山
雪解け直後の雪田の主役はヒナザクラ
月山
モックラ坂でチングルマが風に身を任せて
月山
大峰の木道までくれば山頂はあとわずか
月山
山頂直下の雪渓上で突如ガスに巻かれました
月山
月山を代表する花・クロユリ 開山祭の頃が盛り
その後も天候の回復はなく、翌日も朝から最大瞬間風速20mを超えるような強い風雨に見舞われました。
大荒れの中を登ってくる方はいないだろうと予想していましたが、さすがは修験道の山。開山祭の開始時間には嵐に負けずに登り切った方々が集まり、例年よりも静かではあるものの、多くの方が立ち並ぶ中、無事祭事が行われました。境内は撮影禁止のため写真はありませんが、白装束の山伏の方々、行政機関、地元観光関係、山岳関係者といった、普段から山に慣れている方が中心でした。例年は一般登山者も見られますが、今年は平日であったことや、悪天候で無理されなかったようです。

祭事の最中は寒さで震える方も。身体が動いているうちはある程度体温が保たれますが、止まると一気に熱が失われます。特に月山では主要な登山口がすでに森林限界を超えており、大きな樹木など遮るものもなく、悪天候時は風雨にさらされっぱなしになります。月山は緩やかな傾斜で道も木道や石畳等整備されているので、技術・体力ともに登山道グレーディング等においては難易度の低い山とされていることが多いですが、天候によって豹変・急変するのが恐ろしいところです。雨天・強風時の月山は、難易度が一気に上がります。

月山登山の際は、天気予報の念入りなチェックおよび慎重な入山の判断を行い、変わりやすい山の天気を見越して、晴れの予報が出ていたとしても雨具と防寒具をお守りに持参されることを強くおすすめします。
月山
例年は行列の神社前もひっそり静か
月山
緑が広がる山頂台地も真っ白で何も見えません
開山祭終了後、月山頂上小屋で休憩させてもらってから、若干弱まった風雨の中を下山しました。
吹きさらしになる木道の上や、風が強まる地形の場所では慎重を期しました。そこを無事通過して安心していたら、思わぬ方向からの突風に飛ばされそうになる瞬間も。
歩行路は豪雨で一気に水が溜まり、一部はまさに川のように。膝下ほどの水流となって足下も見えにくく、手探りならぬ足探り状態。あらためて風や雨の威力を思い知りました。
月山
眺望がまったくない下山路
月山
石畳の登山道は川のように(まだ水量が少ない場所)
月山
満水寸前の弥陀ヶ原の地塘
月山
幻想的な月山八合目登山口
人間達が必死になっているその頃、薮の中ではウグイスが大きな声で鳴き、アカハライモリが登山道の川にのんびり浮いていました。厳しい自然環境でたくましく生きる生き物の強さも思い知りました。