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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

飯豊連峰巡視 やさしい飯豊に抱かれる場所・温身平

2024年07月11日
羽黒 守屋明子
突然ですが、「飯豊連峰」と聞いてどのようなイメージが浮かんできますか?
登山に詳しい方なら、おそらく「本格的な登山技術を要するハードな山岳地」というような印象かと思います。
 
そんな飯豊連峰に、イメージとはかけ離れたスポットがあります。
その名も「温身平(ぬくみだいら)」。名前だけでも優しげなその場所は飯豊連峰中腹の樹林帯のブナの森。約2時間ほどで回れる約5.5kmの散策路が巡っています。林野庁「レクリエーションの森」の風致探勝林(山岳・湖沼・渓谷等が一体となった美しい自然景観の探勝を楽しむ森林)であり、地元の山形県小国町ではこの温身平を、森の癒やし効果で心身を元気にするという森林セラピーを体験できる「森林セラピー基地」としています。森林セラピーアテンダントによる案内プログラムも用意されていて、本格的なセラピーやヨガの体験ができるようになっています。
「厳しい山岳地」と「癒やし」。そのギャップが前々から気になっていた温身平を6月12日(水)に訪れました。
 
温身平の玄関口は、山形県小国町からの飯豊連峰登山拠点である天狗平。そこから小砂利が敷かれた平坦な道が温身平へ導いてくれます。この道は梅花皮沢(かいらぎざわ)砂防堰堤工事用道路として誕生しました。今では登山道へのアクセス路として、地域の観光資源「森林セラピーロード」のメインロードとして、砂防施設の管理以外にも多く利用されてきています。道の途中で急峻な尾根として知られる梶川尾根が枝分かれし、温身平の奥には飯豊本山へ続く上級コースの大グラ尾根(令和6年7月11日現在桧山沢吊橋通行不能)が控えています。
 
私たちが訪れたときにも汗だくの登山者の方が下山してきたところに遭遇。そして草の間からひょっこりテンが現われ、「自分の道」ともいいたげに、慣れた足取りで横切っていきました。
温身平
登山者にもおなじみ湯沢ゲートから入ります
温身平
急峻な梶川尾根の入口を覗けます
温身平
温身平へのメインロード
温身平
ブナが迎えてくれます
道の両脇には見どころ、体験スポットがサインで表示されています。
温身平
ブナの巨木
温身平
体験スポット 蝉時雨ならここ!
温身平
森の巨人たち100選に選ばれたヤチダモ
温身平
ヤチダモは私たちを穏やかに見下ろしていました
入口のゲートから約1.3kmを歩くと、温身平に到着。飯豊連峰の展望スポットです。
温身平
開けていて明るい温身平
温身平
飯豊の峰々を拝顔できます
引き続きセラピーロードの散策を楽しむ場合には、「けもの歩道」がおすすめ。池や沢が登場するブナの森の中の小道です。けもの歩道入口近くには利用者用のトイレもあります。
ここからは飯豊連峰を流れる清流・玉川により近くなり、清流展望台からは川面も眺められます。
温身平
けもの歩道の入口(温身平側)
温身平
けもの歩道近くのトイレ
温身平
温身の池 季節によって水位が変化するそう
温身平
明るいブナの森をゆく
温身平
せせらぎの音が大きくなったら玉川はもうすぐ
温身平
清流展望台から玉川の流れが
温身平
向かいの山の谷には冬に溜まった残雪
温身平
若葉の軒下を間借りするギンリョウソウ
登山を目的に来ていたときには気付かなかった、飯豊のやさしい自然がここにはありました。
厳しい登山道の雰囲気と、癒やされる森の世界とのコントラストが想像以上に高く、不思議な体験でした。
 
天狗平には日帰り入浴可能な「飯豊山荘」、宿泊の可能な山小屋「天狗平ロッジ」もありますので、飯豊連峰山麓を堪能するには絶好の場所です。
 
この温身平の森だけを目的にしたり、登山の行き帰りのリラックスゾーンにしたり、飯豊連峰の登山だけではない楽しみ方のひとつとして広く知って頂きたいとあらためて思いました。
さて、この温身平の入口・天狗平へ向かうまでの道沿い、倉手山登山口駐車場に磐梯朝日国立公園の境界を示す看板があります。
温身平巡視の前に、この看板周辺の草刈りを行いました。
国立公園看板
草刈り前 だいぶ草に埋もれていました
国立公園看板
手動によるきめ細かな草刈り
国立公園看板
前の方も丁寧に
国立公園看板
すっきりした姿でお待ちしております
小一時間の作業でしたが、梅雨とは思えない炎天下、すぐに汗が噴き出してきます。
草と格闘する我々の耳には、そばを流れる玉川のせせらぎに混じってキョロロロロロ・・・というアカショウビンの鳴き声がずっと響いていました。
飯豊連峰の豊かな自然を実感できたひとときでした。