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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

そこ、登山道かな? 植生への踏み込みにご注意を!

2023年05月17日
羽黒 守屋明子
久しぶりに様々な制限が解除された今年のゴールデンウイーク、
残雪期の登山を楽しまれた方も多いのではないでしょうか。

羽黒自然保護官事務所の管轄である出羽三山の主峰・月山も
登山、山スキーを目的に訪れた方で賑わっていたようです。

この時期は山肌の融雪が進み、日当たりがよい稜線上から、
次第に植生(地表の植物による被覆)が現れてきます。
完全に雪が解けて登山道が露出すれば、歩いて良い場所は登山道が自ずと示してくれます。

しかし残雪期の登山では、雪面が安定さえしていれば、自己判断でどこでも歩けてしまうため、
知らず知らずのうちに植生を踏みつけてしまっている、ということが少なくありません。

高山の自然環境は栄養が乏しく非常に過酷な状況です。
人間が足を踏み入れるだけでも、高山植物の生息環境に思いもよらないような影響を与えることがあります。
足跡のくぼみひとつができただけでも、植物が二度と立ち上がれない程のダメージを受けている場合も…。

高山植物は訪れた人を「よく来たね!」と華やかに迎えてくれますが、
厳しい環境で何年もの時間をかけて懸命に花を咲かせています。

ストイックに生きる山の先輩たちとしてリスペクトし、
大切に守ってまいりましょう。
ヒナザクラ
見るからに可憐で守りたくなるヒナザクラ
コバイケイソウ
大きなコバイケイソウも地中で数年準備してから出てきます
ヒナウスユキソウ
強風吹き荒れる環境に生きるヒナウスユキソウ
ところで、姥ヶ岳から牛首方面に向かう途中にあるピークの1つ「柴灯森(さいとうもり)」では
以前稜線上に登山道が通っていましたが、周辺の植生の荒廃が顕著になってきたため
現在はピークを巻くように下方に登山道が設置しなおされています。
もともと登山道が通っていた稜線上は、登山者の立ち入りがなくなったため、だんだん植生が回復してきました。

その一方、残雪期に踏み跡が残る旧登山道にうっかり立ち入ってしまうケースが見受けられます。
旧登山道は雪解けが早い稜線上に位置し、現登山道よりも早く露出してくるためです。

月山のリフト上駅~牛首間の登山道は基本的に石畳か木道が敷設されています。
それ以外の道のように見える箇所は現在の登山道ではなく、
旧登山道ですのでご注意くださいね。
夏の月山稜線
現在の登山道はピークを外しています
残雪期月山稜線
登山道と反対側の斜面から融雪が進みます