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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

野火 伊豆沼・蕪栗沼

2023年03月17日
仙台 鎌田 和子
こんにちは、仙台自然保護官事務所の鎌田です。
春を迎える準備をした伊豆沼、蕪栗沼の野火についてお伝えします。
野火とは、春の初めに野原などの枯草を焼くことを言います。伊豆沼や蕪栗沼で毎年行われています。
伊豆沼・内沼では、毎年行われるクリーンキャンペーンの一環として、堤防の繁茂しすぎた草木等や、空き缶などの撤去を目的に実施しています。この野火の後には、地元の企業や学校など様々な団体や個人の皆さんが参加してゴミ拾いを予定しています。
伊豆沼の黒く焼けた堤防
ここは毎年、オオヨシキリが営巣するエリアの堤防、黒くきれいに焼けた堤防では、これからヨシが芽を出し、5月には緑の堤防に変わり、野鳥の子育ての場になります。
ヨシ原でさえずるオオヨシキリ
ある5月の写真です。あちらこちらのヨシ原から、ギョウギョウシ、ギョウギョウシと聞こえたら、オオヨシキリです。
伊豆沼の堤防沿いを歩く人々
伊豆沼の道を歩くと、沼からはカモ達の声だけでなく、ウグイスも鳴き始めています。ぜひ、耳を澄まして聞いてみてください。 この日は、岩手県からウオーキングにいらした皆さんもウグイスの声に春を感じていたようです。
蕪栗沼の野火は、湿地生態系と遊水池機能の維持のため、蕪栗沼本体の北側、南側、白鳥地区の3箇所のヨシ原で計画的に野火が行われています。今回は蕪栗沼の南側のヨシ原の野火が実施されました。実に4年ぶりの事でした。
蕪栗沼南側のヨシ原が真っ黒
いつもは名残雪を心配する3月ですが、今年は数週間雨も雪も降らず枯草が乾燥していたので、きれいに焼けました。 4月下旬には、ノウルシとトネハナヤスリの大群落が出現します。
2019年に野火実施後の4月下旬の様子
2019年に野火を実施した後のノウルシの群落で、緑鮮やかです。
トネハナヤスリ(ハナヤスリ科)シダ植物
トネハナヤスリ(ハナヤスリ科)シダ植物です。日当たりのよい湿地に生育するのですが、どこでもあるわけではなく、野火をするような環境で発見されています。野火ができなかったここ数年は、枯れヨシが多かったため、地面まで日が当たらず、数が少ない状況でした。今回のようにきれいに焼けた後には、ノウルシの周辺一面に出現するはずです。
 
湿地生態系を維持するために各地で管理されている皆様のおかげで、伊豆沼・内沼、蕪栗沼・周辺水田の環境が守られていると思うと、感謝でいっぱいになります。
 
毎年野火の季節になると、ガン類の越冬期のにぎやかさが去り、寂しいくらいの静けさが数週間続きます。その後には、ウグイスやエナガ、カワラヒワなどの小鳥たちのさえずりと共に、枯草色の湿地が緑に変わってゆく春が楽しめます。