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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

雄勝町 防潮堤壁画アート「海岸線の美術館」のご紹介

2023年03月08日
石巻 岡本安弘
みなさん、こんにちは。石巻自然保護官事務所の岡本です。

今回ご紹介するのは、雄勝町の防潮堤壁画アート「海岸線の美術館」です。
雄勝町は三陸リアス海岸沿いの美しく自然豊かな町です。名産は、ホタテ・カキ・ウニ・アワビ・ホヤ・ワカメや旬の魚などの豊かな海産物と、硯(すずり)や東京駅屋根などにも使われている雄勝石(おがついし)です。これらの名産は、みちのく潮風トレイル沿線の「道の駅 硯上の里おがつ」で求めることが出来ますので、道の駅に立ち寄られた方もいるのではないかと思います。

「道の駅 硯上の里おがつ」からすぐ近く、みちのく潮風トレイル沿線に今回ご紹介する防潮堤壁画アート「海岸線の美術館」が有ります。防潮堤には人々の暮らしを津波から守る大事な役目が有ります。一方で、海の景色が遮られるものにもなっています。その防潮堤に絵を描くことで海沿いに新しい風景を生みだし、海と人を、過去と未来をつなぐ場所に変えていきたいとの思いから「海岸線の美術館」が開館されました。(2022年11月26日開館。事業運営主体:一般社団法人SEAWALL CLUB)​   
   ・東日本大震災後に雄勝町に設置された防潮堤(高さ最大10メートル)に壁画を描いていくアートプロジェクト。
   ・屋外に有るため、いつでもご自由にご覧いただけます。

屋外の防潮堤壁画アートを鑑賞しますと、アートと遠方の山々との境目が無く一体に見え、あたかも連続した一つの風景の様に感じることが出来ます。アートの近くに寄って見て・触れてみますと、色彩ひとつひとつの筆使いがはっきりと判り、絵具の盛り上がりも判ります。ダイナミックな筆使いを間近で見ることは余り無かったのと、触れる機会は初めてだったため、とても感動しました。
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題名「THEORIA テオリア」(ギリシア語。哲学で本質を眺める理性的な認識活動。観想)スペルを分解しTHE/O(Ogatsu) / RIA(rias)[雄勝のリアス海岸]読むこともできるそうです。周囲の山並みや空と一体化していて、季節や時間により、その時でしか出会えない風景となっています。ワイド(約55m幅)な一枚の絵の中には、左からタ→昼→朝→夜と時間軸も混在させているそうです。
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ダイナミックな筆使いに触れて肌で感じることができます。
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題名「A Fisherman 漁師」 船頭にてロープを括る漁師で、太くてゴツゴツとした手から繰り出されるロープワークに一切の無駄がなく、本当に美しい姿を描かれたそうです。
鑑賞する時間や天候、あるいは四季の移ろいによって作品の見え方が変わります。晩秋は山々が黄色に染まった姿を、冬は山々が雪化粧した姿を見ました。これから花咲き誇る姿や、新緑へと続く季節の移り変わりを見るのがとても楽しみです。また、経年による色味の変化も見据えて作品の構想・色彩構成が行われているとのことですので、月日が流れ、今とは違う色彩で鑑賞を楽しむことができそうです。美しい海と山と壁画アートが調和し、新しい風景が生まれ続ける場所になっていました。


制作済みの壁画アートがもう1箇所有ります。みちのく潮風トレイル沿線の雄勝小・中学校の校内に有ります。学校内に有るため、事業運営主体団体に鑑賞日時を相談後に鑑賞が可能となります。

東日本大震災時に旧雄勝中学校に唯一生き残った1本の桜「奇跡の桜」がモチーフで、アーティストと生徒ひとりひとりが制作されました。壁画上の「奇跡の桜」は最初、細く弱いように見えましたが、じっくり見てみますと幹や枝は力強く天まで伸び、色鮮やかな桜色の花を咲かせ、苦境にも立ち向かっていく内に秘めた生命の躍動感を感じました。「奇跡の桜」の周りには子供たち一人ひとりの笑顔が描かれています。力を合わせ、共に未来を笑顔で切り開こうとする強い気持ちが伝わって来ました。学校内のため僅かな時間での鑑賞でしたが、生命の躍動感と子供たちの強い思いが心に鮮明に残りました。
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東日本大震災時に旧雄勝中学校の校舎に唯一生き残った1本の桜「奇跡の桜」の力強さと、その周りの生徒たちの笑顔が観る人の心を掴んで離しません。(2022年5月完成)
アートプロジェクトでは、壁画から壁画を巡りながら雄勝町にしかない魅力を隅々まで堪能できるような地域一体型の美術館を目指されています。今回ご紹介した場所以外にも壁画アートを制作予定とのことです。出来上がるのが今から楽しみです。

雄勝町の壁画アートで新しく生まれ続ける風景を通じ、雄勝町に親しみを持っていただくきっかけになればとても嬉しく思います。

・一般社団法人SEAWALL CLUB(外部サイトへリンクします) 海岸線の美術館 SEAWALL MUSEUM OGATSU - (kaigansennobijutsukan.com)
雄勝小・中学校の壁画アート鑑賞申し込み先はこちらです。(学校内にあるため、急な申し込みや、学校行事あるいは新型コロナ感染防止対策等のため鑑賞をお断りされる場合が有ります。) 鑑賞上の注意事項など詳しくは一般社団法人SEAWALL CLUBへご確認をお願いします。



文末に「道の駅 硯上の里おがつ」を紹介させていただきます。
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道の駅は雄勝地区中心部の海を望める高台に有ります。屋外のテーブルやベンチから海と周囲の山々の自然豊かな景色を、海風を感じながらゆったりと楽しむことが出来ます。とてもすばらしい景色のため時間の過ぎるのを忘れてしまいそうになります。
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雄勝石(おがついし)は玄昌石(げんしょうせき)とも呼ばれ雄勝町産のものを呼びます。黒色硬質の粘板岩(泥質の岩石。スレート)で、純黒色で圧縮・曲げに高い強度を持ち、給水率が低いため永い年月にも変質しない特質を持っています。雄勝硯(すずり)の歴史は古く、室町時代に硯石として産出されたと伝えられ600年以上の歴史と伝統が受け継がれている伝統工芸品です。雄勝硯伝統産業会館に展示されており、歴史や文化を知ることができますし、お買い求めることができます。
・道の駅 硯上の里おがつ(外部サイトへリンクします) 石巻市雄勝の観光・買物・お食事なら|道の駅 硯上の里 おがつ (ogatsu-rs.jp)
雄勝硯伝統産業会館、観光物産交流館へのリンクはこちらから可能です。 


以上