アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]
寒さを楽しむ
2020年12月22日全国的な寒波で大雪の様子が報道されていますが、
雪の被害に遭われた方々には、心からお見舞い申しあげます。
雪に慣れている地域なので、公園内では特段の混乱はありませんでした。
酸ヶ湯温泉の積雪量は2メートル以上になり、友人知人や家族から、大変ねと言われますが、
本人は美しいこの時期を楽しむ気満々ですので、ご安心ください。
そんな寒い季節の楽しみを挙げてみたいと思います。
雪が降るとまず目につくのが、雪原に残された足跡ですよね。
アニマルトラッキング(動物の歩いた足跡、羽跡、爪痕、食痕、糞などから動物の行動や生活、
生態を読み取ること)は、冬の自然観察の楽しみの一つで、探偵気分が味わえます。
〈冬も青々としたツルマサキの枝とリスの足跡でしょうか?〉
春を待ちわびる樹木の冬芽の観察も欠かせません。
〈寒さに耐えるムラサキシキブの実と冬芽〉
〈マンサクの丸い花芽と尖った葉芽と虫こぶ〉
〈芽鱗が剥がれかけ、陣笠を被った顔のように見えるリョウブの冬芽〉
〈不思議な模様のコブシの冬芽〉
〈←葉芽に毛があるのがコブシ、無いのはタムシバ〉
〈王冠を被り微笑んでいる王子様のようなオニグルミ〉
厳冬期の十和田湖周辺では、蓮氷(割れた氷が波でぶつかり合い丸くなって蓮の葉のように見える)や
しぶき氷(風が強く気温の低い日に、波が木などに凍り付いたもの)が出来て、
寒ければ寒いほど素晴らしい芸術作品が出来上がります。
また奥入瀬渓流の多くの滝は凍り付き、車に特別なライトを積んで滝を照らし、
鑑賞するためのツアーも開催されています。
この寒波で一気に成長しました。
https://www.towada.travel/ja/oirase-ice-falls
そして何と言っても冬の醍醐味を味わえるのは、八甲田や八幡平の樹氷ではないでしょうか。
何度見ても圧倒されてしまいます。
日本三大樹氷の一つである八甲田、日本一のオオシラビソの密度と言われる八幡平と、
十和田八幡平国立公園内では、この二つの広大な樹氷原が存在しています。
〈2018/1/中旬 八甲田の樹氷〉
〈2019/2/下旬 陵雲荘付近から岩手山を望む〉
そんな恵まれた環境で仕事をさせていただいて幸せなことです。
遠くに出かけなくても、湖畔にやってくる野鳥をのんびり観察するのも楽しいものです。
〈車に驚いて飛び立つオオバン〉
さらに、忘れてはいけないのが、「食」ですね。寒さゆえの食文化は地域によって様々ありますが、
私が個人的に心待ちにしているのは、味噌仕込みと干し餅作りです。
母の教えは、「味噌は大寒に仕込むこと」でした。雑菌が少なく失敗が少ないということです。
十和田湖に来た年の冬に仕込んだものが、良い味になっています。
また登山の際の行動食にしている干し餅(独自のレシピで、お粥に塩や砂糖などで味付けし
成形して低温下で乾かすもの)はマイナス10度以下にならないと上手くできないので、
気温が低くなる日を待って、作業をします。
今年は、北陸や信州の郷土料理である、柚子釜という茶菓を作ってみました。
寒風に2~3ヶ月吊して干し、春が来る頃に食べることができるそうです。
とても楽しみです。
「寒酒」「大寒卵」「寒の水」という言葉があるように、冬は豊かな食を提供してくれる有り難い季節です。
スノーランブリング(雪の上をぶらぶら歩く)や、冬景色の中を漕ぐカヌーも楽しそうですし、
めいっぱい楽しんでいるうちに、あっという間に春になっていそうです。
〈天気が良ければ一年中楽しめるカヌー〉
更なる楽しみは、昨年たった一度しか運転しなかった除雪車を(業務ではありませんでしたが)
今年は運転する機会があるのか、わくわくしています。
伊藤の楽しみばかり挙げてしまいましたが、皆さんもご自身の冬の楽しみ見つけてみませんか?