アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]
「裏磐梯のウチダザリガニ」
2020年11月24日こんにちは。裏磐梯自然保護官事務所の小野寺です。
先日、実施した裏磐梯地区パークボランティアスキルアップ研修会についてお伝えします。
今回の研修会は、裏磐梯地区で課題となっている特定外来生物のウチダザリガニについて、NPO法人裏磐梯エコツーリズム協会から講師お二人をお招きして、実際にウチダザリガニの防除作業を経験し、意見交換を行うことで、外来生物の防除に関する知識と経験を深め、さらに自然観察会活動やガイド等において、より適切で実感のこもった解説等を行っていただくことを目的に開催しました。
今年度のパークボランティア(以下PV)全体に関わる野外活動はこの日が最後で、締めくくりの活動でしたが、大きな心配事がありました。
研修会の数日前まで日中の最高気温が5℃前後の日が続いたことで、かなりウチダザリガニの活性が下がり、姿を見られるか分からないと講師から伝えられていたのです。
これまで長年調査や防除活動に関わってきた講師のお二人も、この時期の調査等は行ったことがないとのことで、かなり不安を感じながら当日を迎えました。
しかし、その心配をよそに当日は天気にも恵まれ、次々と思いがけない展開が待っていました。
最初の場所で、事前に仕掛けておいたカニカゴを引き上げてみると「おっ!」「入っている!」「いたいた!」そんな声が飛び交いました。ウチダザリガニが入っていたのです。
捕れているかな!? いました!
比較的大きな雄が8匹。参加した皆さんの目も輝いていました。
その後講師の指導の下、体長、頭胸甲長、雌雄の別、欠損箇所の有無などについて一個体ずつ記録を取り、その後は殺処分となりました。特定外来生物のウチダザリガニの防除も目的であったため、皆さん心を鬼にしてウチダザリガニの命と向き合いながら絞めていました。
2か所は3匹でしたが、なんとメスの抱卵個体と出会うことができました。メスは11月から6月頃まで卵(300個前後)を抱えているとのことです。
3か所目は0匹でしたが、最後の4箇所目は・・・。どうぞ写真を御覧ください。
夏に一度同じ場所で防除活動に参加した時とほとんど変わらない数が捕れました。その数300以上!
この場所は繁殖地になっているらしく、メスの抱卵個体も多く見られました。
講師のお二人も、これほどの成果が上がるのであれば11月の活動も今後考えていきたいし、抱卵個体の防除は特に意味があると話されていました。
なお今回の活動は、特定外来生物に関わる法令手続き等を確認し、それぞれの土地所有者の了承を得た上で実施していることをお伝えさせていただきます。
午後の講義では、外来種や外来生物法について基本的な事柄を学ぶと共に、講師からこれまでの活動の歩み等についてお話しをしていただきました。
その中で、この日調査した4か所は、これまでの調査から繁殖地になっていることや、どのように広がっていっているのか(水系による違い等)を知る上で重要な場所であるとのことでした。
調査によって多くのことが分かり、防除活動によって個体の大きさ(平均値)が小さくなってきているなどの成果が挙げられるそうです。
ただ、今後さらに繁殖地を突き止め、防除活動を続けていくには圧倒的にマンパワーが足りないということです。周りにどのように活動を理解してもらい広めていくか、調査データの集約等、課題も多く挙げられました。
研修会を終えたPVの方々は、とても勉強になったし、ぜひこれからできる限り協力していきたいと口々に話していました。
身近な自然に興味を持つこと、目を向けること、知ること、できることから行動してみること、今回の研修で私も学ばせていただきました。