アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]
「磐梯朝日国立公園指定70周年」
2020年10月06日「磐梯朝日国立公園指定70周年」
こんにちは。裏磐梯自然保護官事務所の田中です。
今年、磐梯朝日国立公園は、指定70周年を迎え、環境省、福島県、北塩原村の主催による記念式典・シンポジウムが9月5日(土)に執り行われた。
磐梯朝日国立公園は、出羽三山、朝日連峰、飯豊連峰、吾妻連峰、磐梯山、猪苗代湖を含み、福島、山形、新潟の3県にまたがり、国立公園陸域で大雪山国立公園につぐ2番目の広さがあり、山々と森、川、湖沼など豊かな自然と美しい景観がたくさんあるのが特徴といえる自然公園です。
式典及びシンポジウムの様子を写真で紹介していきたいと思う。
「ふくしまグリーン復興構想に基づく県との協定やワーケーションを推進
し、公園の魅力に触れられる機会を増やせるよう努める」と挨拶。
子供の頃、家族旅行で裏磐梯の五色沼や会津に訪れた話もされた。
裏磐梯小学児童たちと普天間かおりさん(裏磐梯観光大使)の合唱コラボ。
和やかな雰囲気の式典になった。
内堀福島県知事、小泉大臣、普天間かおりさん
午前中の式典は、来賓の方々、関わった皆さん、そして特に次の世代を担っていく裏磐梯小学校の子供たちにとって、地元の国立公園の自然の豊かさ、大事に考えなければいけないんだということ、そこで生活している誇りみたいな気持ちを改めてそれぞれが感じてもらえる機会になってくれたのなら良かったと思う。
午後からのシンポジウムでは、タレントのなすびさんが「私の山との関わりについて」と題した基調講演を行った。その後、7人のパネリストによる「祈りと恵みの山々」と題したパネルディスカッションを行い、最後は普天間かおりさんの歌で締めくくった。
シンポジウムでのなすびさんの基調講演。
後日、相馬市から青森県八戸市を結ぶ自然歩道「みちのく潮風トレイル」を踏破した
こともあるなすびさんが環境省の「福島環境・未来アンバサダー」に任命された。
パネルディスカッション
シンポジウムのパネルディスカッションでは、たくさんの学びがあった。
パネリストの大和川酒造店会長の佐藤氏は日本酒造りの経験から「自然の恵みを頂いて生きてきた」「山は豊かさの象徴。山に降った雨や雪が流れて、町や村の個性的な文化ができる」と述べ、マタギとしても活躍する慶応大学先端生命科学研究所研究員の鵜野氏は鳥獣対策で山に入り、クマを捕獲して遺伝子分析を行っていることに触れながら、自然保護に携わる人材を育てるには子供の頃から自然の中で遊ぶ体験を積ませることが重要だと指摘した。また飯豊連峰保全連絡会・朝日連峰保全協議会アドバイザーの川端氏は山をより多くの人に楽しんでもらうために植生回復の取り組みが必要と語り、少人数で小まめに登山道を手入れすることを提案した。NPO法人日本ジオパークネットワークの斉藤氏は保全活動は「なぜ」がないと続けられない。理由をしっかり学ぶプロセスなどが絶対必要だ。実際活動する地元でも利害関係があるだけに、しっかり理解しあう対話と努力が不可欠と述べた。東北森林管理局の香月氏は戦時中の過剰な森林伐採で山が荒廃したが、現在は手入れが行き届いていない状況にあるのでよりよい姿を残す取り組みが求められていると述べた。エベレストを登頂したなすびさんは登山を楽しむと同時に自然を守らなければならなと強調。次世代につなげるためにも、大量消費や大量生産を見直すべきだと訴えた。
私自身、70周年を迎えた式典・シンポジウムを通して、改めて認識できたこととして、この公園には火山活動によって造り出された地形や、大小の湖沼など変化に富んだ景観が広がること。貴重な植物が自生し、野鳥の種類も多く、登山やスキー、キャンプ、温泉などの多様なレジャーが四季を通じて楽しめること。
この貴重な自然をきちんと五十年、百年後に渡せるのかいま問われていること。よりよい姿を残すための取り組み、継続できる仕組みをみんなで考えてかなければならいこと。を改めて考えさせられた。
まずは村との共同事業や地域のNPO団体との連携、地域の人たちとの横のつながりを活発にする取り組みを、平たく言えばもっと多くの所に顔を出し対話することを積極的に行いたいと思った。
最後に、なすびさんが話された話の中で、感銘をうけた言葉をもって今回の報告日記を終わろうと思う。
「地球は先祖から受け継ぐものでなく子孫から借りているというネイティブ・アメリカンの言葉のように、未来に大切に残し、つなげなければならない。今を生きる一人一人が考え行動する必要がある。」
以上です。