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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

「夏が来れば思い出す」

2020年08月06日
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ

東北南部は梅雨が明け、十和田湖畔は、

セミの声や、木々の深い緑、日差しの中に夏の色を感じます。

チトセバイカモが、奥入瀬の清流で涼しげに揺れています。

〈渓流にかかる橋の上から見る事ができます〉

夏という言葉で皆さんが連想するものは、何でしょうか。

私は何と言ってもスイカです。

子供の頃。海に浮かべたスイカをみんなで割ったあとに、海水につけて食べるのが、

とても美味しかった記憶が蘇ります。

十和田湖の夏といえば何でしょうか。

私が思いつくのは花火とヒメボタルです。

湖水祭りの花火は中止になり見る事ができませんが、8/28~8/30にスカイランタンという

新しい試みのイベントが開催されるようです。

予約が必要ですが、どんなイベントになるのか楽しみです。

https://www.towada.travel/ja/news-events/towada-kosui-matsuri-lake-festival-sky-lanterns

〈満開のシナノキの木の下で〉

いま湖畔を歩くとシナノキの花の爽やかな香りが漂い、

見上げるとプロペラのような「総苞葉(そうほうよう)」が

飛び立つ日を待っているように見えます。

〈総苞葉の下に小さな花火のような花がたくさん付いています〉

〈落ちたシナノキの花が、蜘蛛の巣に引っかかってゆらゆら揺れています〉

シナノキは古くから様々な用途に利用されてきました。

マタギの「けら」や縄に利用され、別名の「マンダの木」はマタギの語源という説もあります。

「信濃」の語源であるとか、アイヌ語の「シナ」は縛るという意味があるとか、

さまざまなエピソードのある樹木です。

八幡平の森には幹の周囲が10メートルを超える、環境省の巨木データにも掲載されている

日本で2番目に大きいといわれるシナノキがあります。

雪のある時期であれば、たどり着くことが比較的やさしい深い森の中にあり、

残雪期にツアーも開催されているので、見ることができます。

さて、十和田八甲田地区のパークボランティア活動の一つの、蔦野鳥の森歩道整備が行われました。

〈歩道を塞いでいたサワグルミの枝を手際よく撤去するパークボランティアの皆さん〉

〈蔦沼の歩道脇の株立ちしたホオノキの巨木:たくさんのひこばえが出ている〉

紅葉の時期にはたくさんの観光客や写真愛好家で賑わう蔦野鳥の森の歩道を、

年に2~3回ほど、簡単な草払いなどや倒木の処理などを行っています。

片道2時間以上かけて来られる方もおり、頭が下がる思いです。

作業終了後、蔦七沼のひとつである赤沼へ巡視に行ってきました。

赤沼は蔦沼から少し離れていて、訪れる人が比較的少ない秘境感溢れる場所です。

沼の透明度が高く、季節にはルリイトトンボが舞う姿が見られます。

サンショウウオも近くで見ることができました。

〈赤沼から松森までの間の歩道からのぞむ赤沼〉

赤沼周辺にも、シナノキなど様々な樹木の巨木が多くありました。

赤沼のほとりにあるシナノキがちょうど咲いていて、

沼に花がひらひら舞い落ち、

香しい匂いで包まれていました。

十和田湖で4度目の夏を迎えますが、どんな夏が待っているのでしょうか。

十和田湖はカヌーやボートなどのアクティビティも豊富です。

早く世界全体が落ち着いた世情になり、

心おきなく出掛けられるようになることを祈ります。