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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

1年越しの願いがかなったゴミ拾い

2019年02月01日
仙台 鎌田 和子

こんにちは、仙台自然保護官事務所の鎌田です。

1月に登米市立西郷小学校5年生の総合学習で、蕪栗沼で「ワイズユース体験」を行いました。その時の5年生の様子をお伝えします。

 

西郷小学校では、蕪栗沼・周辺水田ラムサール条約登録湿地に最も近いことから総合学習で3年生「生きもの調査」・4年生「渡り鳥観察」・5年生「ワイズユース体験」を蕪栗沼や伊豆沼で学んでいます。冬の渡り鳥の季節には、マガンが蕪栗沼や伊豆沼からエサ場である田んぼに出かける時間に通学し、遊んでお家に帰るころ、ねぐらである沼に帰るマガンの群れを毎日見て、それがどこにでもある光景、当たり前に思っている子どもたちです。

総合学習では、当たり前と思って見ているマガンなどは、日本に渡ってくるガン類の9割が、登米市、栗原市、大崎市に位置するラムサール条約登録湿地で越冬していること、ねぐらになる沼や湿地、エサ場となる田んぼが大切なことを伝えています。ラムサール条約湿地の理念である、「保全・再生」「ワイズユース(賢明な利用)」「交流・学習」3本の柱の大切さも伝えています。

 

この冬の5年生17名の総合学習は、特別なものでした。それは昨年の1月、4年生の時の「渡り鳥観察」からはじまりました。学校の近くには「蕪栗沼・周辺水田」と「伊豆沼・内沼」二ヶ所のラムサール条約湿地があり、伊豆沼を観て、次に蕪栗沼の観察です。

 

  

 蕪栗沼のオオヒシクイを観察しようと、休耕田を湿地に戻した白鳥地区と蕪栗沼の間にある越流提をみんなで歩いていると、4年生の目には、鳥ではなく、写真(昨年1月のゴミの様子)のようなゴミが点在していることがとても気になりました。蕪栗沼は、水鳥たちにとって重要なねぐらでありエサを食べるところ、どうして、人気のない場所なのに、ゴミがあるのか、不思議に思ったようです。

 蕪栗沼は遊水地であり、大雨で洪水になりそうなときには、蕪栗沼が洪水から住宅を守ってくれる役割があることを話しました。私たちの生活で出たゴミが蕪栗沼まで流れ着いたかもしれない。そんなことを思ったようで、ゴミを拾わなくてはならないと考えましたが、昨年はゴミ拾いは実現しませんでした。

 そしてこの冬、5年生になっての総合学習、蕪栗沼にゴミ袋を持参し、1年越しの願いであるゴミ拾いを行いました。

 

  20分ほどでしたが、越流提の両側で17名で拾い集めたゴミです。空き缶、発泡スチロール、ペットボトル、ガラス瓶、中にはハトの給水容器まで様々なゴミでした。昨年の記憶を思い出しながら、去年より少ないとか、自分たちの住んでいるところでのゴミの出し方などを考えていたようです。学校に持ち帰ったゴミはみんなで分別し、処理されました。

 

※この日は、安全のため、藪には入らない、学校のゴミとして処理できるものだけを拾うことにしました。

 

 

 今年は沼のゴミを拾いをしたことで、安心して、蕪栗沼で休んでいるオオヒシクイの群れをじっくり観察することができました。

「ワイズユース体験」では、蕪栗沼周辺に生育しているオギの穂を刈り取り、机のまわりで使えるミニほうきづくり」を体験しました。沼や湿地を賢く使いながら、湿地の保全し、学ぶ、そして、私たちにできることを一つ実践しました。西郷小学校の子どもたちのやさしい気持ちがこれからも育ち続きますように。