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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

山林火災その後 自然環境モニタリング*5月・6月・7月

2018年07月23日
三陸復興国立公園 坂本麻由子

皆さん、こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

 

しばらく報告できずにおりました、すみません。

楽しみにしているよとお声を頂いていた、「山林火災その後」。

月1回の調査は実施しておりましたので、5月~7月まで比較形式で報告したいと思います。

 

この調査では、条件別に5カ所の定点を設定しています。

 

【P1】火災の被害が少なかったエリア。クマに壊された看板のある丘の背後の林に火の手は回った。

  植物種は確実に増えて地上に現れているが、7月になっても大きく成長するものは見当た

  らない。小高い丘になっているので、日照条件は悪くはない場所なのだが。

【P2】火災の影響が激しかったとみられる杉林の中。日陰の地面。

  植物種が著しく増えた様子はなし。5月に出ていたヤマジノホトトギスに7月には花芽が

  ついていた。その他多く見られたのはフタリシズカ。他の火災被害を受けていない杉林の

  地面と比較してみるとよいかも。

【P3】火災の影響が激しかったとみられる杉林の中。日当たりのよい、開けた斜面。

  4月の時点で群生地になるであろうと見られていたマルバダケブキが、6月の時点で地上か

  ら消滅。おそらくシカの食害かと思われる。葉はおろか、茎もすべてなくなっていた。

  他の山林では、シカはマルバダケブキには見向きもせず、ほとんど食べないため、繁茂群生

  している状態。このエリアを訪れたシカたちは他の植物がないために食したのでは。

【P4】火の手が回った雑木林の開けた場所。

  植物は確実に増えている様子。目立って大きく育つ種は見られない。

【P5】延焼範囲の先端部。尾根をまたぐ箇所。

  半島先端側から半島根元を向いて撮影。

  5月にはナツトウダイとキツネノカミソリの葉が群生。6月にはナツトウダイの花期が終わ

  り枯れ、キツネノカミソリの葉も花の準備のため地上から消えていた。7月に残っていたの

  はフタリシズカの群生。

どこの定点に於いてもいえることですが、火災が起きていない、日照条件等が似ている

同時期の杉林、雑木林の地面を比較の意味で観察してみることも必要かなと感じました。

今は、季節や条件に応じて植物が芽吹いているようで、長い時間をかけて火災前の植生に近づいていくのかと思います。

 

 

最後に、植物から少し目線を外して、7月には生き物の姿が見られたのでご紹介します。

 

まずはヤマカガシ。

猛毒ヘビですが、見ている分にはとてもかわいい顔をしています。

夏に産卵をするはずなので、この子は生まれてそんなに時期が経っていないのだと思います。

首の黄色がしっかりと残っています。

 

そして種類はわかりませんが、セミの抜け殻が沢山ありました。

セミの幼虫は土の中で数年以上生活しているはずなので、去年の火災の時にも土の中にいたはずです。

火の影響は地中までは及ばなかったのですね。無事羽化できて良かったです。

調査の復路、羽化場所を探してウロウロしている幼虫に会いました。

午後だったので這い上がってくる時間にはちょっと遅い気がしますが、

火災にも負けず生き抜いてきた幼虫です。

無事羽化して羽ばたいて欲しいですね。

7月までの報告はここまで。

また次回をお楽しみに。