アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]
気象観測データに品質情報を付与しました
2017年12月15日12月14日、久しぶりの晴天に恵まれた白神山地世界遺産センター西目屋館。
午前10時における積雪は29.6cmでした。
この29.6cmという値、気象庁のアメダスなどから取得したものではなく、白神山地における自然環境を把握する調査目的で環境省が独自に設置している気象観測施設が記録したものになります。
今回は少しばかり長くなりますが、この気象観測調査についてご紹介したいと思います。
本調査は1998年に開始されており、3箇所の施設において気温や風速、降水量などの複数の項目が1時間毎に観測され、記録され続けています。
しかしこの気象観測施設の一部が世界遺産地域内などアクセスする機会の限られる場所に設置されており、十分なメンテナンスを実施できないことがあります。そのため、観測されたデータに欠測や異常な値が入り込みやすい、という課題がありました。
(世界遺産核心地域内、櫛石山気象観測施設 2016/10/22)
これまでの20年弱の運用において安定した観測を行うためのノウハウが積み重ねられ、欠測や異常値は確実に減少しています。しかし点検による欠測などもあるので、どうしたってゼロにはなることはありません。次に問題となるのは、そういった値をどのように取り扱うか、ということになります。
異常値をデータから削除しただけでは、あとから別の人間がデータを見た際に、なぜ値が欠けているのかわからなくなってしまいます。異常値だと判断した作業者のミスもあるかもしれません。ですので、観測された値はそのままに、気象庁が発行している気象観測統計指針を参考にした「品質情報」を全てのデータへ個々に付与することにしました。
また、気象に関する調査では観測された値をそのまま用いることよりも、それらを集計した統計値を用いるケースがよくあります。そういった集計を行う際に、欠測や異常値をどう取り扱うか決めておく必要もあります。これも気象庁の資料を参考にさせてもらい、一定の基準を設けました。
さて、とりあえずルールは設定しましたが、ルールに沿って実際にデータを処理していく方法も考えなければなりません。データは気象観測施設からCSVという形式で出力されますが、専用の解析ソフトがあるわけではないため、汎用の表計算ソフトかデータベース管理ソフト、統計解析ソフト、あるいは自作プログラムなどを用いてデータ処理を行う必要があります。また、ある程度の処理の自動化も必須です。最終的にはExcelファイルとして出力したいので、今回はExcelマクロを組むことにしました。
(完成したExcelマクロのメニュー画面)
以上の過程を経て、ひとまず2008年以降に環境省が行った白神山地における気象観測調査のデータについて、品質情報の付与等のルールを適応させました。
データ自体の欠測や異常値は以前と変わるものではありませんが、データを利用する際の利便性や統計値の信頼性は向上したと思います。調査研究目的であればデータを提供することもできますので、これまで欠測や異常値に関する情報が不明瞭でデータの使用をためらわれていた方(ものすごく限定されますね)はぜひ西目屋自然保護官事務所までお問い合わせください。
「気象」の平均的な状態である「気候」に関する統計値を算出するためには30年間の気象観測データが必要とされています。これからも信頼性の高い気象観測調査が実施できるよう、努めていきたいと思います。
※白神山地における気象観測調査に関する詳細は下記のサイトをご覧ください。
http://tohoku.env.go.jp/nature/shirakami/research/check_weather/