アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]
ミニフォーラム「動物から見た森吉山麓高原と自然再生の10年」
2015年07月22日私にとっての7月の3連休は"森吉で動物とふれあい学ぶ"機会となりました。土曜日より台風11号から変わった低気圧の影響で雨が降り続き、日曜日の朝になっても細かな雨が降っていました。秋田県の担当者は「どちらからと言えば雨男」を自認していましたが「生来晴れ男」を自認する私の方がやや優勢だったようで、日曜日の午後には雨も上がって青空も見えるようになってきました。
"野生動物とふれあい学ぶ"第一弾はミニフォーラム『動物から見た森吉山麓高原と自然再生の10年』です。
平成16年から秋田県が主体となって取り組んできた、奥森吉の牧場跡地を森林に再生するための「森吉山麓高原自然再生事業」の取り組みが10年を越えた事を記念して行われる行事で、秋田県生活環境部自然保護課と森吉山野生鳥獣センター運営協議会が主催して行われました。
この再生事業は森吉山麓に生息するクマゲラを初めとする希少野生動物の生息環境を再生しようとする取り組みですから、フォーラムでも野生動物にフォーカスして、野生動物の研究者の目を通して奥森吉の自然環境について考える事を目的としました。
会場は森吉山野生鳥獣センター近傍の奥森吉青少年野外活動センター。秋田県の担当者と私の二人で会場設営等をしました。当初「申込み者が余り多くない・・」との情報でしたので、再度色々と宣伝して当日を迎えました。
参加申込みの人数分ほどの椅子を用意していましたが・・・蓋を開けてみるとその後の企画イベントのスタッフや当日現地に来ていた方などが参加して下さって会場イッパイの盛況となりました!!
そんな中、2つの講話をいただきました。一つは秋田大学名誉教授の小笠原先生による『森吉山麓のクマゲラについて』
先生の著作に載っている話や、先生から直接伺ったことのある話が随所にあって、色々と話が繋がって、面白く聞くことが出来ました。保護の面に注目が集まりがちな野生生物の生息環境保全ですが、こうした学術研究に裏付けされた科学的データがあってこそのものだと改めて実感したお話しでした。
もう一題は、秋田県立大学の星崎先生による『森の木の実と野生動物の持ちつ持たれつの関係』
トチノキやブナなどの木の実の作況とネズミの個体数の相関関係などとっても興味深い話が聞けました。ネズミの種による食性の違いなどは再生事業に直結する内容であり、かつ森林生態系に大きな影響を及ぼすという内容は個人的にも興味津々で主催者の一人ですが手を上げて質問してしまうほどでした。
ある参加者からは『森の中で一つのことを調べると、次々と疑問が出てきたりして色々と繋がっていくんだね』という感想が聞かれました。講話の内容は、森吉のクマゲラを調べていると森吉以外の本州の生息地は?本州以外の同種の特性は?その生息環境である森の環境は?等々どんどんと調べる事が出てきて、それを調べた研究の成果でしたし、トチノキの実とネズミの関係を探るうちにブナの実の豊凶との関係が見えてきたり、ネズミの種間関係が見えてきたという研究成果をお話しいただきましたので、この感想が聞けたとき、フォーラム成功を感じました。
今回、貴重なお話をしていただきました小笠原先生、星崎先生、本当にありがとうございました。秋田県自然保護課の皆さんもお疲れ様でした。