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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

井土浦の干潟に歓声が響いた日

2014年08月11日
仙台
こんにちは、仙台自然保護官事務所の鎌田です。
みなさん、夏休みの思い出づくりしていますか?今日は、思い出と一緒に調査の記録も残した観察会を紹介します。

せんだい生態系再生コンソーシアム主催の「親子自然観察会in井土浦干潟」が8月9日に、国指定仙台海浜鳥獣保護区井土浦特別保護地区に隣接する震災で生まれた干潟で震災後はじめての自然観察会が開催されました。

写真は井土浦特別保護地区、左の川は名取川、赤丸印のところが観察会場所です。



観察会の講師を務めたのは、東北大学の鈴木孝男先生です。参加者は、親子、大学生、大人を合わせて約30名。
観察は小さな子供さんでもはじめての人でも参加できる市民調査方法です。干潟の表面を探すグループと干潟の泥の中を掘りながら探すグループ二手に分かれ、それぞれ見つけたものをビニール袋に入れていきます。

カニを捕まえようと四苦八苦、はじめはすぐに逃げられていたのですが、段々慣れてきて、小さな手でカニを捕まえては歓声が、また大学生や大人はシャベルで20センチ四方をザクッ、ザクッと一人15カ所を掘り、泥の中の生きものを袋に入れていきます。時間にしておよそ40分の作業でした。

今度は、見つけた生きものを自分たちで調べます。昨年、鈴木先生が蒲生干潟の生きもので作成した表を使い、「どれかな?あっ!これかな?」探しています。勿論、鈴木先生にこれは?とたずねるとすぐに答えが返ってきます。

結果は、アンケート用紙にそれぞれが見つけた生きものを用紙に書き込み、回収された用紙を鈴木先生はじめ大学生によってまとめられます。


写真は、アシハラガニ(左上)、ヤマトオサガニ(左下)、泥の中のゴカイの仲間(右上)、コメツキガニ、婚姻色(右下)です。そのほか、蒲生干潟でも見られる生きものたちや、絶滅危惧種の貝も観察できました。

この場所は、震災前はヨシ原が広がり、ヒヌマイトトンボの生息地でした。震災でヨシ原は消失し、ヒヌマイトトンボは震災後観察できていません。失ったものもありますが、干潟という環境の変化により、井土浦の干潟や、蒲生干潟、仙台湾の干潟の生きものたちの新たな拠りどころとなっているようでした。多くのカニやゴカイなどがこの場所で生活している、生きていることの喜びと同時に、この日、干潟には、観察者の歓声が響いたのがとても印象に残った観察会でした。

干潟となったこの場所は、当分そのままの形で残されます。干潟になって3年5か月、これからも干潟として生きものたちのゆりかごとなります。今回も観察された生きものは、その場に返し、いつもの生活をしています。これからも、静かに見守りたい場所となりました。