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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

今年も、ブナ林の調査が無事終了しました

2013年12月05日
白神山地
白神山地では1998年から民間と大学などの教育機関が中心となり、環境省が支援するブナ林モニタリング調査が実施されています。
今年も6月29日に、残雪残るブナ林の中で計60基のリタートラップを設置しました。この調査では、毎月木から落ちてくる葉っぱや枝、種などを網で回収しています。回収したものの中から、特にブナやカエデの仲間、トチノキ、ホオノキ、カバの仲間などの種子を毎年調査しています。
今月の調査では、一番多くの種子が落ちてくる時期でもあるので、どれくらいのブナの種子が網に入っているか楽しみに山に入りました。

●原生的自然の中での活動
調査の2週間前に、調査地に向かう歩道上で、ツキノワグマに2人の方が襲われるという事故が発生しました。その後だけに、熊スプレーや熊鈴、集団行動など細心の注意を払い入山することとなりました。途中のヤナダキ沢の水量が多く、川を渡ることが困難な箇所が数カ所ありましたが、幸い途中ツキノワグマと遭遇することなく、怪我や道迷い等の事故もなく進むことができました。


右上:調査参加者 左上:ヤナダキの森  右下:倒木につくキクラゲの仲間 左下:道なき道を移動 photo 2013.11.9

●今年はブナの豊作!?
今年は、多くのブナの結実を確認することが出来ました。
1つの網には、無数のブナの実を見ることができます。私が参加してから8年近くなりますが、こんなに多くの種を回収した記憶がありません。ブナは一般的に、8年周期で豊作の年があると言われていますが、白神山地の調査では2000年の豊作以来ではないかと言われています。


上:回収風景 下:網に回収されたブナの種など  photo 2013.11.9

●ブナの豊作を喜んでいるのは、人間だけじゃない
ブナの実にはたくさんの栄養がぎっしり詰まっています。食べてみるとブナの実は小さいながらも、クルミのように油分が多くまろやかで、わずかな甘味のある大変おいしい実です。この実は、ネズミやサル、虫たちだけでなく、ツキノワグマのごちそうにもなります。この時期、ブナの幹や枝には爪痕やクマ棚と呼ばれる採餌痕が見られますが、今年は歩道沿いに多数確認することができ、いつも以上に獣臭がする山歩きになりました。ツキノワグマが餌を求めて歩き回っていることが伺い知れました。


左上/左下:いたる所で確認されたクマ棚 右:クマが幹を伝い降りる時についた爪痕 photo 2013.11.9

●これからのブナの種
これから白神山地のブナの種たちは、5月までの半年間、雪の下で過ごすことになります。次に太陽の日差しを浴びる地表に現れるのは、残雪が消える6月ごろになります。それまで、ブナの葉っぱの布団の中で、ゆっくり眠りにつき、6月になると芽吹きます。
来年の6月には、眠りから覚めたブナの種たちが一斉に芽吹く光景が、白神山地各地で見ることが出来るのではないでしょうか。10年に1度の光景。今からわくわくしませんか?


ブナの実生(芽生え) photo 2013.6.4