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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

冬の十和田湖畔を歩く

2013年02月08日
十和田
3月10日に開催予定の冬の観察会に向けて、コースの下見に行ってきました。

この日歩いたのは十和田湖畔の宇樽部キャンプ場(冬期閉鎖中)から御倉半島の付け根周辺にかけての湖畔沿いや旧国道です。
旧国道は冬期閉鎖され雪に覆われていますが、十和田湖の展望所の一つである瞰湖台(かんこだい)を訪れる人が度々歩いている模様で、スノーシューの跡が見られました。

宇樽部キャンプ場付近からは旧国道をそれて湖畔沿いに出ました。積雪は1m程で、雪面に飛び出たブッシュの間を通り抜けながら進みます。登山道の有る無しに関係なく、地形を考えながら自分でルートを選んで歩けることがスノーシューやスキーの魅力の一つです。


湖の奥に見えているのが御倉半島です。半島にそびえる御倉山(689.9m)は約7000年前の火山活動によって出来た溶岩ドームで、周囲を湖と断崖絶壁で囲まれた、まるで自然の要塞の様な姿です。この地形的な特徴が人の立ち入りを制限してきたことから、原生的な自然の姿を現在に至るまで保ち続けており、国立公園の特別保護地区にも指定されています。


雪上のカモシカの足跡を辿りながら歩いていると、湖畔からこちらを見ているカモシカと目が合いました。


なるべく驚かせないように静かにカメラを向けてシャッターを2回切りました。
その後、カモシカはそれまで歩いていた雪の上から突如湖の中に入り、湖畔に横たわる木々を軽々と飛び越えながら走り去って行きました。
この場所で素早く逃げるためには雪の中を行くよりも、湖の浅瀬を走った方が早いという事を知っていたようです。


宇樽部から1時間半ほど歩くと、小島ヶ浦という小さな湾に着きます。

小島ヶ浦から見た十和田山

ここは御倉半島の最もくびれた部分にあたります。旧国道からやや離れた場所にあり、夏場でも獣道程度の踏み跡があるくらいなので訪れる人は少なくひっそりとしています。太古から変わらない風景を間近に見ることができる貴重な場所です。

湖畔で少し休んだ後、御倉山の岩壁を眺めるため小さな尾根の上に登ってみました。


この日、最も御倉山に近づけたポイントです。木々の葉が落ちていることで、このように岩壁の様子をはっきり見ることができました。そもそもヤブの無い今の時期でなければ、ここまで来ることは恐らくできなかったと思います。この山の上には一体どんな世界が広がっているのでしょうか。想像をかき立てられます。


今回歩いて気がついたことは、独特な雰囲気を醸し出す御倉山をはじめ、この周辺の地形と地質はとても変化に富んでいるということでした。
小さな尾根や湾、周囲を取り囲むような不思議な形をした崖など、かつての活発な火山活動を想像させる地形に度々出くわしました。これらの地形的な特徴は地図や文献を眺めているだけでは想像し難いですが、実際に現地を歩いてみると非常によく分かります。
場所によって次々に変わる風景と高い自然度を満喫できる非常に面白い観察会コースでした。


※3月10日の観察会では、今回と同じような行程を歩く予定です。詳細につきましては、東北地方環境事務所ホームページ等でお知らせいたします。