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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

考えてみよう!私たちの白神山地-西目屋中学校総合学習-

2012年12月11日
白神山地
西目屋中学校は、白神山地の青森県側の玄関口の1つである西目屋村にある全校生徒約30名の中学校です。この西目屋中学校では、1年生の総合学習の時間を利用し、「白神学習」と称した年間複数回の白神山地に関わる授業に取り組んでいます。遺産センターでは3年前からこの授業に協力しており、今回は90分の授業時間をいただき、ワークショップを行いました。生徒がもつ「白神山地のイメージ」を書き出し、「世界自然遺産」や「白神山地のもつ価値」、「白神山地の価値を維持していく方法」について全員で考え、最後に白神山地と自分の将来の姿と、白神山地とどう関わって生活していくかをまとめました。


授業のふりかえり

まずは、この1年間の授業と3年前の小学校4年生の総合学習をMovieで振り返りました。最初は、当時のあどけない姿に歓声が上がっていましたが、次第にどのような活動をしたのか口々に話がこぼれてきました。


「白神山地:青」と「西目屋村:赤」のイメージマップ作成(マインドマップ)

次に、動画やキーワードから「白神山地」と「西目屋村」に関するイメージを全員で出し合いました。それぞれ60個近いイメージやキーワードが出てきました。中には「カモシカ」や「ヤマネ」、「ブナ」など野生動植物の名前や「工藤さん」や「マタギ」など古くから山と関わって生きてきた方々のキーワードも見受けられました。一方で、「クマゲラ」や「アオモリマンテマ」、「世界自然遺産」など予想していたキーワードが出ていませんでした。


「白神山地」と「西目屋村」の共通イメージを探れ!!

 さらに、出てきたキーワードを「利用」と「保全」、「良いイメージ」と「悪いイメージ」のカテゴリーに分け、共通の項目について注目しました。
 中学1年生には難しい作業となりましたが、友達と相談しながら自分の中のイメージを示していきました。結果として、「白神山地」に対して悪いイメージは少なく、「寒い」や「危険」などのイメージが少し出ただけでした。一方で良いイメージについては「ブナ」「イヌワシ」、「生物多様性」など野生動植物に関しては「保全」というイメージが多く、「雪」や「マタギ」、「工藤さん」など現在資源として利用されているものに関しては「利用」というイメージに分類されました。また、「山菜」や「キノコ」、「山の恵み」に関しては「保護」と「利用」に広く分布しており、持続可能な山文化が根ざしている白神らしいイメージになったと思います。


「世界遺産」ってなんだろう?「白神山地」の「価値」を探れ!!

次に、イメージが出てこなかった「世界自然遺産」について学習しました。まず生徒に「世界遺産」について各々のイメージを聞きました。なかなか書きづらい設問だったにも関わらず、「次世代に伝えていくもの」や「守らなければならないもの」、「美しい」、「綺麗」、「広い」という回答がでており、守るべきものだと捉えていることが伺えました。回答後は福地保護官から世界遺産に関するレクチャーを受け、また設問に答えてもらいました。
続いて「白神山地が世界遺産に登録された価値(理由)」について各々のイメージを聞きました。この設問には多くの生徒が「ブナの原生林」や「広い原生林」などブナ林に関して記述しました。福地保護官からは世界遺産になった経緯や、白神の生態系と多様性、同じく世界遺産登録を目指している前々任地の「やんばるの森」ついて解説しました。特に「やんばるの森」については大変興味深かったようです。
 最後に「遺産の価値を守るためにはどうしたら良いのか?」と問いかけてみました。「ゴミを捨てない」や「厳重なルールを作り、守る」、「木を切らない」などの意見がありましたが、「人の手を加えず共存の道を考える」や「木や土などを観察(モニタリング)する」といった驚かされる意見もでてきました。最後に保護官から環境省として白神山地に関わる取り組みを紹介していただき「実際にこんな事をやっているんだ」ということを知ってもらいました。


将来の「ビジョン」を作成!「あなたは○○年後、白神山地とどう関わって生活していますか?」

最後に授業の締めくくりとして、「自分の将来」と「白神山地の将来」について考えてもらいました。答えはありませんが、自分が今後、高校生・大学生・社会人となっていくに当たって、どのように白神山地と関わっていくのか考えてもらいました。中学1年生には難しい内容かも知れませんが、将来の白神山地を背負っていくかも彼らです。しっかり考えてもらいたいものです。今回は宿題となりましたので、機会があればこの場でお伝えしたいと思います。