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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

近自然工法普及技術講習会を開催しました

2012年08月31日
羽黒
 8/18~8/19に、飯豊地域を対象に近自然工法普及技術講習会を開催しました。

 飯豊連峰では、原生的な自然環境の保全を第一に考え、登山道の浸食や植生荒廃防止については現地にある自然石等を活用して、雨水や土砂の動きをコントロールする「近自然工法」と呼ばれる方法で登山道の保全修復や植生復元を試みています。

 本講習会は、保全作業について参加者が増えて来ており保全修復技術について学ぶ場がほしいとの要望を受け、昨年に引き続き開催しました。

 実地で学ぶ前に座学で理論的なことについて学びます。


①NPO法人飯豊朝日を愛する会 井上邦彦氏より、「飯豊朝日連峰における登山道修復の過程と現状」
②山形大学農学部准教授 菊池俊一氏より、「登山道はなぜ荒れたのか」
③株式会社ニュージェック 川端郁子氏より、「梶川尾根と丸森尾根における施工箇所の見どころ」
菊池先生からは山岳域保全は飯豊連峰だけでなく「流域」といった広い生態系についても意義のあることだ、との講義をいただきました。


 その後、これまで整備を行ってきた梶川尾根を登り、施工箇所、施工方法等の確認を行いました。
施工箇所は梶川尾根上部です。飯豊連峰の急登を6時間程度登り続けて、ようやく現地にたどり着くことができます。


 こちらは、施工箇所の一つです。登山道が拡幅して裸地化、水路化しています。


 水路化し、洗堀された箇所には要所要所に現地石材等を用いて、土留め工を設置しています。
施工方法、理屈、効果、影響等について、確認していきます。
場所によっては有効に機能していないところや、設置したことによって新たな洗堀が生じてしまったところもあります。
なぜそのようになったのか、一つ一つ確認していきました。


 こちらは裸地化したところに敷設した緑化ネットです。
場所によって芽吹きに差があります。
種の供給源(シードソース)の近くや水路上には、種がネットに付着しやすく、芽吹きが促進されるようです。
 
 今年度の合同保全作業も梶川尾根を予定しているので、今年の作業の検討も行いました。

 今回は講習会なので荷物は少なくてすみましたが、実際の作業時は緑化ネット等の資材の荷上げもしなくてはなりません。
 資材については、一度で荷上げすることはできず、事前に何度も荷上げ作業をしなくてはなりません。本当に骨が折れる作業であり、改めて山を愛する人たちの熱意と頭が下がる思いを感じました。



 現地確認時にはタカネマツムシソウが満開で見事でした。


 こちらは滝見場からみた石転び沢です。石転び沢の大雪渓は本当に大きな雪渓で、雪が多かった今年は8月だというのにまだまだたくさん雪渓が残っています。
上級者コースとなりますが、ここは夏でも歩くことができます。