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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

井戸岳植生復元作業

2012年08月20日
十和田
八甲田大岳・井戸岳植生復元協議会による井戸岳植生復元作業が8月11日に行われ、植生調査や杭の打ちなおし作業に十和田八甲田地区パークボランティア、青森県自然観察指導員連絡会、青森県自然保護課、環境省十和田自然保護官事務所から13名が参加しました。

井戸岳は北八甲田の最高峰である大岳の北隣にあるピークです。
この井戸岳の南斜面では昭和40~50年代にかけて登山者の増加により、多くの高山植物が踏みつけによって失われてしまいました。
その後、昭和60年頃から青森県により大規模な植生復元事業が行われ、現在はその維持管理を中心に土留め板や植生マット等の復元施設の設置と経過の観察を協議会が行っています。


植生調査の様子

調査用の区画に生えている植物の種類を判定しているところです。地面から芽を出したばかりの植物を見極める作業はなかなか困難で、熟練したボランティアの方が中心になって行っています。
調査を開始して今年で5年目になりますが、毎年少しずつ植物が増えていることが確認されています。

植生マットの上に進出しはじめているガンコウランやコメバツガザクラ



昭和60年の井戸岳南斜面の様子
これは今から27年前の井戸岳の写真です。歩道整備が行われた直後で、斜面の中間部分では裸地化が目立っています。


平成24年8月11日の井戸岳南斜面の様子
歩道周辺の植生が回復しているのが分かります。
※写真左側の裸地は、元々の地形や気候条件などの自然的な影響によるものであるため、本復元事業の対象外になります。

これまでの復元作業を通して感じたことは、回復の困難さとメンテナンスの重要性です。
裸地化した急斜面ではせっかく芽を出した植物も土砂と一緒に流れてしまい、なかなか根を張ることができません。したがって土壌を安定させることが回復のための非常に重要な条件になります。土留めの板や植生マットで土壌の安定を図りますが、環境条件が厳しく一冬で損傷してしまうこともよくあります。
ハイマツやミヤマヤナギなどによって土壌がしっかりと抑えられ、土留め板が不要になるまでメンテナンスを継続させていきたいと思います。

高山植物は一度失われてしまうと、回復するまでに非常に長い年月がかかります。山を歩く際は歩道以外には立ち入らないようご協力お願いいたします。
八甲田の素晴らしい自然をこれからも大切にしていきましょう。