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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

ブナの森での小さな変化

2012年05月15日
十和田
八甲田にもようやく春が近づいてきました。
5月11日の酸ヶ湯周辺の積雪は約1.5m。
つい一ヵ月前まで4mを超える積雪があったことがうそのようです。

場所によっては地面が見えている所もあります。
ブナの周りの雪が溶けてぽっかりと穴が空いていました。



これは「根開き」と言って、日光で暖められた樹の幹が周りの雪を溶かす現象です。
まるで木の体温で周りの雪が溶けているようですね。

酸ヶ湯周辺のブナの新緑はまだ見られませんでしたが、一足先にナナカマドが葉を広げていました。



この緑の葉をつけている植物はブナの枝ではなく、ブナのウロ(樹洞)に着生(※)したナナカマドです。
なぜこの樹だけ周りのブナよりも早く芽を出すことができたのでしょうか?
初めは、「樹種が違うから」と単純に考えましたが、ブナの根開きを見て「ブナの幹の周りは暖かいのかもしれない」ということに気がつきました。

ブナのウロにはこの他にもヤシャビシャクというカシスの一種も着生しますが、このヤシャビシャクもブナの枝より早く芽を出します。
ブナが葉を広げる前のわずかな時間を利用して、日の光をいっぱいに浴びようとする着生植物達の工夫なのかもしれません。

※着生:樹の幹や岩など土壌以外の場所にくっついて生育すること。宿主から養分をもらう「寄生」とは異なる。