アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]
八甲田での植生復元の取り組み
2012年03月07日
十和田
先月の2月16日(木)に八甲田大岳・井戸岳植生復元協議会の打合せが青森市内で行われました。
この植生復元協議会は、八甲田大岳や井戸岳の登山道周辺で人間の立ち入りなどが原因で失われた植物を回復させる目的で、環境省や青森県を始め、八甲田地区パークボランティアや自然保護団体などにより組織されています。
この日の打合せでは平成23年度の活動についての報告や、今後の取り組みの方法について活発に意見が交換されました。
北八甲田山系の大岳や井戸岳では昭和40年代から登山者が急増しましたが、当時ははっきりした登山道が無く、登山者は好きなところをどこでも歩ける状態だったと言います。その結果として、広い範囲で植物が踏み荒らされてしまいました。
この植生破壊の問題を解決するため、昭和59年~平成11年まで青森県が環境庁(当時)の補助を受けて歩道の整備、土留め柵の設置、ムシロ張り、ミヤマヤナギの植栽などを行いました。
この大規模事業によって裸地の拡大はくい止められ、植物も少しずつ回復を始めましたが、条件によってはほとんど回復の見られない場所も多くあります。
八甲田大岳・井戸岳植生復元協議会は、この青森県が整備した植生復元施設のうち、主に回復が進んでいない井戸岳エリアでの復元作業の継続や植生調査(※)を行うため平成17年度から植物の回復を助けるための麻製マットや土留めのための柵などを設置しています。
雪の無い時期に北八甲田を訪れた方はこれらの施設に気がついた方も多いのではないでしょうか。
平成23年の活動の様子
植生復元地帯は砂礫地で土壌が貧弱な上、地形的に強風にさらされるため乾燥化も激しく、植物が発芽するには非常に厳しい環境です。さらに、冬場に土壌が凍る「凍上」という地面が盛り上がる現象によって、植物はなかなか根を張れず、土留めの杭なども一冬で浮き上がってしまいます。
施設を定期的にメンテナンスすることが重要なのは言うまでもありませんが、現場は標高約1500mの山頂付近にあるため、このメンテナンス作業自体が非常に困難です。
また、周辺の植生に与える影響も考えなくてはいけないため、安易に肥料を入れたりすることもできません。
このように、井戸岳のような自然条件が厳しい場所では効果的な復元方法を探すことは非常に難しい問題です。
植物の回復具合も1年や2年で急激に変化するものでは無いので、根気よく植生調査を続ける必要があります。
井戸岳で植生復元を軌道に乗せるには非常に時間がかかると思いますが、これまでの活動で得られた経験をもとに課題をクリアし、自然の回復力を活かしながら少しでも早く元の姿に近づけられるよう八甲田大岳・井戸岳協議会の取り組みは続けられています。
※平成23年の植生調査では、調査区(面積約8㎡)において平成21年からの2年間で植物の分布面積が3.1%から7.5%に増加していることが確認されました。
この植生復元協議会は、八甲田大岳や井戸岳の登山道周辺で人間の立ち入りなどが原因で失われた植物を回復させる目的で、環境省や青森県を始め、八甲田地区パークボランティアや自然保護団体などにより組織されています。
この日の打合せでは平成23年度の活動についての報告や、今後の取り組みの方法について活発に意見が交換されました。
北八甲田山系の大岳や井戸岳では昭和40年代から登山者が急増しましたが、当時ははっきりした登山道が無く、登山者は好きなところをどこでも歩ける状態だったと言います。その結果として、広い範囲で植物が踏み荒らされてしまいました。
この植生破壊の問題を解決するため、昭和59年~平成11年まで青森県が環境庁(当時)の補助を受けて歩道の整備、土留め柵の設置、ムシロ張り、ミヤマヤナギの植栽などを行いました。
この大規模事業によって裸地の拡大はくい止められ、植物も少しずつ回復を始めましたが、条件によってはほとんど回復の見られない場所も多くあります。
八甲田大岳・井戸岳植生復元協議会は、この青森県が整備した植生復元施設のうち、主に回復が進んでいない井戸岳エリアでの復元作業の継続や植生調査(※)を行うため平成17年度から植物の回復を助けるための麻製マットや土留めのための柵などを設置しています。
雪の無い時期に北八甲田を訪れた方はこれらの施設に気がついた方も多いのではないでしょうか。
平成23年の活動の様子
植生復元地帯は砂礫地で土壌が貧弱な上、地形的に強風にさらされるため乾燥化も激しく、植物が発芽するには非常に厳しい環境です。さらに、冬場に土壌が凍る「凍上」という地面が盛り上がる現象によって、植物はなかなか根を張れず、土留めの杭なども一冬で浮き上がってしまいます。
施設を定期的にメンテナンスすることが重要なのは言うまでもありませんが、現場は標高約1500mの山頂付近にあるため、このメンテナンス作業自体が非常に困難です。
また、周辺の植生に与える影響も考えなくてはいけないため、安易に肥料を入れたりすることもできません。
このように、井戸岳のような自然条件が厳しい場所では効果的な復元方法を探すことは非常に難しい問題です。
植物の回復具合も1年や2年で急激に変化するものでは無いので、根気よく植生調査を続ける必要があります。
井戸岳で植生復元を軌道に乗せるには非常に時間がかかると思いますが、これまでの活動で得られた経験をもとに課題をクリアし、自然の回復力を活かしながら少しでも早く元の姿に近づけられるよう八甲田大岳・井戸岳協議会の取り組みは続けられています。
※平成23年の植生調査では、調査区(面積約8㎡)において平成21年からの2年間で植物の分布面積が3.1%から7.5%に増加していることが確認されました。