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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

警告している!?

2011年07月22日
秋田
 今日も暑い秋田市内、事務所の温度計は30度を示しています。この先の週間予報でも期間中ほとんど「30度」と予想されています。
 こんな時には何か涼しくなる工夫が必要です。そこで今日は思いっ切り寒気を感じた話です。


  
 観察会などで皆さんとお話しする中で『仕事中に熊と会ったりしないんですか?』という質問をされることがあります。その時は正直に『ありますよ。これまで仕事中に○回遭遇しました。』と答えます。すると必ず・・・『怖くないんですか?』『大丈夫なんですか?』といったリアクションが帰ってきます。それにも素直に『怖いですよ!』とか『大丈夫だったのでこうして過ごしています』と答えます。こうしたやりとりからも皆さん登山中やハイキング中に熊に遭遇することを心配されているんだと言うことが解ります。

 
 森吉山鳥獣保護区はツキノワグマが多数生息しています。マタギの本拠地である阿仁地区にも保護区が広がっている事からも想像していただけるかと思います。この地域では山の中に熊がいるのは当たり前で、その地域に入るにはそれ相応の備えが必要だと言うことが常識になっています。私も状況に応じて鈴や笛等を使い分けています。 

 正直な話、真新しい熊の足跡や糞を見た時は、いつも以上に恐怖感を抱きます。また目撃情報が多数寄せられている箇所を通らなければならない時も特に緊張します。
 その一方で、木製の標識や看板などに熊の爪痕を見つけてももう驚かなくなってしまっています。”慣れっこ”というのは少々違う気がしますが、それも最早当たり前の光景になっています。


 こんな風にボロボロになった標識や木道をご覧になったことがあると思います。「自分の縄張りに新しい物が立ったから挨拶に来たんだ!」とか「防腐剤の臭いが気に入らないのか?」とか色々言われていますが、山中に木製の何かを設置する際にはこうした熊の被害は想定の範囲内となっています。これはもう防ぎようがありません!!

 
 その点、鳥獣保護区の「制札」はお馴染みの看板タイプであれ、最近増えている標柱タイプであれいずれも木製品ではないのでこうした被害に遭う心配はないとこれまでずっと思ってきましたが・・・先日巡視した際、かなりびっくりしました。


 隣に立つ歩道の標識は熊の爪痕がいっぱいついていてかなり痛んでいます。それに比べて制札はそんな心配がないはずでした・・・・。

 この標柱タイプの鳥獣保護区制札が倒れかけていたので補修しました(上の写真は補修後の物です)。根元部分に詰め物などをして倒れにくくしていると・・・なんかちょっと妙な傷があることに気付きました(下の写真参照)。写真の真ん中よりちょっと下に注目です。

 もう少し、近づいて見てみましょう。


 2方向から撮影しました。かなりの勢いで付けられた傷であることが想像できます。この標柱はかなり固く、頑丈で重い物なんですがそれが端っことはいえ見事に貫通しています。
 この森の中でこんな事が出来るのは「道具を使った人間」か「ツキノワグマ」だけでしょう。下の写真には1本の黒い毛が写っています。この傷を付けたときに抜けた物でしょうか?


 これを見た後に感じた恐怖感と言ったらもう・・・・しかも運の悪いことに巡視の出発点にある制札がいきなりこの状態でしたからこの後の巡視がどれだけ気が重かったか・・・・・・・・終始音を出し続けたことは言うまでもありません。
 ちなみに、私が持たされている熊対策は『鈴』のみです。以前他の装備の購入をお願いしましたが今のところ実現していません。。まぁ結局のところ自分の身は自分で守るしかないって事ですかね・・・


 最後に言うのも何ですけど・・・この山域に入山される際は特にツキノワグマ対策に万全を期して下さい。本来大人しく警戒心の強い動物ですので自分の存在を相手に知らせていれば向こうが先に逃げるとされていますが、それでも油断は禁物です!!