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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

あるケリのペアの場合

2011年06月07日
秋田
 今日の秋田市内は最高気温が30度に迫ろうかという暑い日でした。朝方はそれほどでもなかったのですが日中がガンガン気温が上がり長袖のレンジャー服は汗まみれに・・・
 この時期は紫外線も強いですし、まだまだ暑さにも慣れていません。紫外線対策、暑さ対策はぬかりの無いようにしたいものです。



 現在、野鳥達は繁殖期のまっただ中。すっかり姿を見せなくなってしまったものあり、忙しく働くものあり・・様々です。
 そんな中、同じ種にあっても早めに、順調に繁殖が進捗しているペアもあれば、遅くてなかなか順調に進んでいないように見えるペアもいます。

 今日は【ケリ】を取り上げました。【ケリ】はまだ周囲に雪が残り、冬鳥達もたくさん観察できるような時期に早くも渡ってきてそれ以降継続して観察できています。その後、更に移動をしたにしても他の種よりは早めに当地へやって来て繁殖の準備を進めている種であることは確実だと思います。
 農家の方々に聞くと田んぼの雪が消えて、仕事を始めると既に【ケリ】が陣取っていて(時には既に巣があって抱卵している事もあるとか・・・)自分の田んぼなのに威嚇されると苦笑いしながら話します。この話からも【ケリ】は繁殖を開始するのも早いことが推察されます。

 この頃、大潟草原鳥獣保護区やその周辺を巡視すると巣立った雛を連れた【ケリ】の一家を観察することが出来ています。想像するに・・・順調に繁殖活動が進捗できたペアは今もう、巣立った我が子達に教育的な指導をしているのでしょう。

 さて・・・その一方、今日ご紹介するペアは順調に進めることが出来なかったペアのようです。


 保護区の上空をけたたましい鳴き声を上げてチュウヒを追い払う【ケリ】を見ました。こちらはその相方で、執拗に追い払うパートナーを尻目に羽繕いを始めました。

 しかし・・なんだかちょっとこちらに注意を向けて落ち着きが無いように感じました。私が警戒されているのを感じましたので、その場を一旦離れて遠くから様子を伺うことにしました。すると・・・


 休耕田をキョロキョロしながら歩いて行きました。どうやら方向は決まっているようで真っ直ぐ一点へと向かって行きました。


 向かった先には【ケリ】の巣がありました。どうやら未だ卵があったようです。巣に到着すると直ぐに抱卵を開始しました。
 この場所でこの時期にまだ抱卵中という状況から推察して・・・何らかのアクシデントがあってリセットせざるを得なくなって今こうしているのではないか?と思いました。その推察が当たっているとすれば・・・この【ケリ】ペアのこの繁殖にかける思いは強いはず!!どうにかこの後、順調に経過するように祈っていましたが・・・・

 数日後、この農地も耕されていて【ケリ】の姿もなくなっていました。。


 切ない話題で恐縮ですが・・・野鳥達の繁殖は数々の難関をくぐり抜けて行われているという事を伝えたくて・・・。普通種といわれ、観察機会の多いお馴染みの野鳥であっても数々の試練を経て私たちの目の前に居るのだと言うことを頭の片隅にでも入れていただけたら幸いです。