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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

チュウヒが照準を定めたら・・

2010年12月08日
秋田
 このところ「大潟村の野鳥」が各新聞や業界誌などに取り上げられる機会が増えてきたように感じます。それも一面を飾ったり、トップ記事になっていたり・・・確実に注目が高まっているようです。



 はい。今日は昨日の日記で書いたとおり、管理棟から観察した【チュウヒ】を取り上げます。
 この時期、管理棟で観察しているとオオタカ、ハヤブサ、そして【チュウヒ】のハンティングが(運が良ければ・・)見られるのですがそれぞれ特徴的な方法で獲物に狙いを定め、それぞれが特徴的な方法で獲物を狩ろうとします。オオタカやハヤブサの場合、見通しの利く高い木の上で狙いを定めると言う点で共通していますが【チュウヒ】の場合、独特の浅いV字飛行をしながら顔をキョロキョロと動かして『何処かに獲物はいないかな~』という心境が見えるような動きをします。
 そんな様子はかなりの頻繁に見ることが出来ますが、この日は管理棟近くで獲物を見つけたようで・・・とても面白い動きを見せてくれました。


 先ほどまでゆったりとしたスピードでヒラヒラと飛んでいた【チュウヒ】が突如、急停止しました。


 これがその急停止したときの様子です。先ほどまで水平になっていた身体をほぼ垂直にして尾羽をイッパイに広げて急減速しました。その時も視線は獲物を捕らえて離してはいなかったようです。


 減速して獲物に照準を合わせた【チュウヒ】は高度を一気に落としてきます。そうしたときオオタカやハヤブサは直線的に猛スピードで飛んできますが、【チュウヒ】は一直線ではなく、いくつもの複雑な弧を縦に横に斜めに描くようにして降りていきました。


 そしてヨシの穂先に達した時には長い足を伸ばして獲物に照準を合わせていたようです。この後しばらく【チュウヒ】の姿はヨシの中に隠れていました。此処で何があったのか?当の【チュウヒ】にしか分かりませんが・・・


 この【チュウヒ】が降りた場所ですが、密生した背の高いヨシがある場所で身体の大きな猛禽類が出入り出来るような広い空間は無いはずです。このヨシ原の中では観察用に整備している通路以外では自由に身動きできる場所があるとは思えません。でも【チュウヒ】には(ほぼ)真下に降りて、(ほぼ)真上に飛び上がることが出来るという他の鳥達には無い特殊な能力が備わっているそうなのでスポット的にヨシが疎かな場所があればそれで充分なのだそうです。
 私もこの情報は詳しい方に聞いたり、テレビで見たりして得た情報だったのですがこうして生で観察すると強い印象として残ります。【チュウヒ】が『ヨシ原のタカ』と称されるのは繁殖場所がヨシ原であるばかりではなく、ヨシ原で生きていく様々な能力を備えているからなのだと実感できる観察でした。


 近頃大潟村には【チュウヒ】に魅せられた方々が訪れるようになりました。その方々とお話ししていると【チュウヒ】には実にたくさんの魅力があることに気付きます。よく言われるのは独特の浅いV字に広げた飛翔形。他には1羽1羽全て異なると思えるほどの羽の(色の)違い。あるいはまるでフクロウのような顔が好きだ!と言う方もいました。
 どうやら【チュウヒ】にはまだまだたくさんの魅力がありそうです。皆さんも是非ご自身の目で実際に観察して下さい。


 ちなみに・・・【チュウヒ】を観察するなら今がオススメです。これから冬が本格化し、大潟村のヨシ原が雪に覆われるようになると現在のようにたくさんの【チュウヒ】を観察することは出来なくなりますから・・